第29話
「反撃開始? 笑わせないでよ。少しコントロールできるようになったからって――」
俺は雷を纏った右手を、風の能力を使っていた子の足元に向けた。
そして、右手に纏わせていた雷を勢いよく発射する。
「なっ!」
俺が雷を飛ばしてくるとは想定していなかったのか、その子は慌てて俺の攻撃を避けた。
放たれた雷は、そのまま地面に着弾する。
着弾した地面には、能力を使っている俺の目にだけ、水色のモヤがかかっていた。
人にかかっている紫色のモヤとは異なる、水色のモヤ。
今まで目にしてきた紫色のモヤとは違うが、これが何を意味するのかは、もう理解できている。
「もう終わりだ」
俺は右目に力を込めて能力を発動させ、攻撃を避けた風の能力者のもとへ瞬間移動する。
そして、その足に触れた。
何が起きたのか理解できないのか、誰もその場から動けず、言葉を発することもできなかった。
「おい、早く退場しろよ」
「え、あ、そうだね。君、退場!」
審判の先生が風の能力者に退場を命じる。
何が起きたのか理解できないまま、その子はグラウンドの外へ歩いていった。
その姿を確認してから、俺は残っている二人に向き直る。
「さあ、次はお前らだ」
「こいつ! 氷の魔像!」
氷の能力を使っていた子の足元から、大きな氷の巨人が出現した。
その子は氷の巨人の左肩に乗り、俺を見下ろす。
「踏み潰せ!」
彼女の命令を受け、氷の巨人が俺に向かって歩き始めた。
だが、その動きは見た目どおり遅く、俺は脅威を感じなかった。
俺は赤田さんの剣に雷を纏わせ、氷の巨人の左肩を狙って剣を振る。
赤田さんが使っていた紅炎剣を真似して振ると、そのイメージどおりに雷の斬撃が氷の巨人へと飛んでいった。
「なっ!」
雷の斬撃は氷の巨人の左腕の付け根付近に命中し、その腕を綺麗に切断した。
「嘘でしょ! 私の氷がこんな簡単に切られるなんて!」
俺はすぐに右目に力を込め、氷の巨人の左肩へ瞬間移動する。
そして、水の能力を使っていた子に赤田さんの剣を投げつけてから、氷の能力を使っていた子の背中に触れた。
「この! 水の射撃!」
水の能力を使っていた子は剣を避けると、俺に向かって水の弾丸を放った。
俺はすぐさま剣へ瞬間移動し、それを手に取る。
視界の端で、審判が氷の能力者に退場を告げるのが見えた。
俺はそのまま水の能力者に向き直り、雷を纏わせた剣を振る。
雷の斬撃が彼女に向かって飛んでいった。
彼女はそれを避けたが、俺は風の能力者のときと同じように、雷の斬撃が着弾した地点へ瞬間移動し、その足に触れた。
「そこまで!」
審判の先生が訓練の終了を告げる。
「嘘……」
「おい」
敗北を信じられずにいる氷の能力者に、俺は剣を持ったまま近づく。
「……何よ」
「早くあの二人の氷を解け」
「それが人にものを頼む態度なの? 仲間を助けてほしいなら頭下げなさいよ」
最初から分かっていたことだが、どこまでも性格の悪い、ムカつく女だ。
「負けたやつが何言ってんだよ。黙ってさっさとやれ」
「まぐれで勝ったくせに調子に乗るんじゃないわよ。次やったらあんたなんかに絶対負けないから」
「負け犬の遠吠えなんてどうでもいいから、さっさと氷を解け」
「だから、仲間を助けてほしいと頼むのなら、頭下げなさいって言ってるのが分からないの? バカなの?」
その一言で、俺の怒りは頂点に達した。
俺は持っていた赤田さんの剣先を彼女の顔に向け、怒りをぶつける。
「俺は頼んでるんじゃない。命令してるんだ。敗者のくせに、勝者に逆らうな」
よほど俺の雰囲気が怖かったのか、彼女は身体を震わせながら、凍らせた二人のもとへ向かい、その能力を解除した。




