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黒雷の復讐者  作者: Lilith
第2章 開花

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第28話

「お願いします」


 グラウンドで向かい合った俺たちは、相手に一礼する。


 この訓練の勝利条件は、相手の身体に直接触れること。触れられた者は、その時点で退場となる。


 能力による攻撃も可能だが、近距離攻撃によって直接触れなければ、勝利条件を満たしたことにはならないらしい。


「始め!」


 面倒な先生の合図で訓練が始まる。


 先に仕掛けてきたのは、相手だった。


「風の刃(ウィンド・ブレード)!」


 刃の形をした風が、地面を抉りながら俺に向かって飛んでくる。


 俺はなんとかそれを避けたが、避けた先にはすでに次の攻撃が放たれていた。


「水の射撃(アクア・ショット)!」


 威力の高い水鉄砲が襲いかかる。


 水なら雷で防げるはずだ。そう考えた俺は、とっさに全身に雷を纏う。


 水鉄砲が身体に命中する。


 しかし、纏っていた雷が水の攻撃を防いでくれた。


「か、雷の能力!? 嘘でしょ……」


 気がつけば、グラウンドの周囲には大勢の見物人が集まっていた。


 俺が全身に雷を纏っている姿を見て、なぜかひどく驚いている様子だった。


「余所見してる場合?」


 氷の能力者がそう言うと、空中に無数の氷の槍が出現した。


「氷の槍(アイス・スピアー)!」


 氷の槍が一斉にこちらへ降り注ぐ。


 今の俺の雷では、水以外の攻撃まで防ぐことはできないだろう。


「紅炎剣(こうえんけん)!」


 赤田さんが腰に下げていた剣を抜き、炎を纏わせて氷の槍に向かって振るう。


 剣から放たれた炎の斬撃が、次々と氷の槍を溶かしていった。


「冷気の息吹(コールド・ブレス)!」


 白蓮さんが口から氷の息を吐き、こちらに近づこうとしていた相手を押し返す。


 こちらは炎と雷、氷の能力者なのに対し、相手は水と風、そして氷の能力者だ。


 能力の相性で言えば、こちらの方が有利だろう。


 もちろん、それは俺が能力をコントロールできていればの話だが。


 その後も何度か同じような能力の応酬が繰り返され、戦況は膠着状態となっていた。


 しかし、事態は予想外の展開を見せる。


「緑、炎の能力であいつの攻撃を防ぎつつ……って、え?」


 白蓮さんが赤田さんに何かを伝えている最中、突然、雨が降り出した。


「天は私たちの味方みたいね! 氷の槍(アイス・スピアー)!」


「風の刃(ウィンド・ブレード)!」


「紅炎剣(こうえんけん)……くっ!」


 赤田さんが先ほどのように剣に炎を纏わせようとする。


 だが、雨のせいなのか、炎を纏わせることができない。


 仕方なく剣で氷の槍を防ぐが、最後の一本に剣を弾き飛ばされてしまった。


「緑! 冷気の息吹(コールド・ブレス)!」


 白蓮さんは風の刃を防ぎながら、赤田さんのもとへ駆け寄る。


 しかし、それが致命的なミスとなった。


「かかったわね。水の束縛(アクア・バインド)!」


 地面から突然、水が噴き出した。


 水は赤田さんと白蓮さんを包み込み、二人の動きを封じる。


「しまっ……!」


「瞬間凍結(ショックゲフリーレン)!」


 二人を包み込んだ水が、一瞬にして凍りつく。


 水は大きな氷の塊へと姿を変え、その中に閉じ込められた二人は身動きが取れなくなってしまった。


「まったく、残念ね」


 氷の能力を使っていた子が、俺に近づきながら話しかけてくる。


「何がだ?」


「せっかく実力があっても、足手まといがいたんじゃねー」


 最初に会ったときから思っていたが、この子の物言いにはイライラする。


 相手が腹を立てると分かっていて、わざと挑発するような言葉を選んでいるのだ。


「そこも含めて実力なんじゃない?」


「確かにねー」


 俺は先ほど弾き飛ばされた赤田さんの剣を拾い、二人が閉じ込められた氷塊の前に立つ。


「あらあら、どうしたの? 降参するのかしら?」


「降参なんかするわけないだろ」


「だったらどうするの? その剣でどうにかできると思ってるの?」


「ああ」


「笑わせないで」


 氷の能力を使っていた子が、俺を睨みつける。


 俺は目を閉じ、集中した。


 赤田さんも白蓮さんも、俺を守りながら戦ってくれた。


 今度は俺が、二人の分まで戦う番だ。


「風の刃(ウィンド・ブレード)!」


 俺は目を開き、襲い来る風の刃を見据える。


 右手のひらを風の刃に向け、そこから雷を発生させた。


 放たれた雷が風の刃とぶつかり、互いの力を打ち消し合う。


 やっと成功した。


 自分の能力を、コントロールすることに。


「今のは……」


 俺が右手のひらから雷を発生させたことに、三人は驚きを隠せない様子だった。


 俺は三人を見据え、口を開く。


「さあ、反撃開始だ」

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