第27話
「先生。私たち、サボっているわけじゃありません。班員が二人しかいなくて、参加できないんです」
サボっていると言ってきた先生に対し、赤田さんが事情を説明する。
俺たちに声をかけてきた三人組はサボっているのかもしれないが、俺たちは違う。
俺は能力をコントロールできておらず、赤田さんと白蓮さんは班員が足りていない。それぞれ事情があるのだ。
「何を言ってるんだ。そこの男子も含めて三人だろ」
「俺はまだ能力をコントロールできていないんです。だから、今日は見学するようにと黒川先生から言われています」
「そんな話、俺は聞いてないな。早く準備をしなさい」
そう言うと、先生はみんなが戦闘訓練を行っているグラウンドへ向かって歩き出した。
「ど、どうする?」
面倒な先生の背中が遠ざかっていくのを眺めながら、赤田さんが俺たちに尋ねる。
黒川先生に事情を説明して、先生から断ってもらうのが正解だと思う。だが、なぜかグラウンドには黒川先生の姿が見当たらない。
あの先生にいくら説明しても、「俺は聞いてない」と返されるのは火を見るより明らかだ。
だからといって、まともに能力を使えない俺が訓練に参加するわけにもいかない。
「あら、先生に参加しろと言われて、断るわけないわよね?」
「断るに決まってるでしょ。参加できる状態じゃないんだから」
「そうやって逃げてばっかりで楽しい?」
白蓮さんは挑発に乗ることなく、冷静に言い返す。
彼女も怒りを感じているのだろうが、そこはぐっと堪えているようだった。
「早くしろ! 俺の注意を受けても、まだサボる気か!」
訓練を行う場所に着いた先生がこちらを振り返り、俺たちがついてきていないことに気づいたのか、大声で呼んだ。
声からは、先生が明らかに怒っていることが伝わってくる。
だが、正直なところ、怒りたいのはこっちの方だ。
「あなたたちのせいで怒られているんだけど、どうしてくれるの?」
三人組は、先生に怒られているのは訓練に参加しようとしない俺たちのせいだと主張する。
言いたいことは分かる。だが、こっちにはこっちの事情というものがあるのだ。
「もういい、やろう」
そう言うと、赤田さんは勢いよく立ち上がった。
「緑、何言って……」
「私、もう我慢できない。佳奈にあんなこと言って……」
「そんなことどうでもいい。分かってるの? 神崎まで巻き込むことになるんだよ」
赤田さんと白蓮さんが俺を見つめる。
確かに、俺は二人とは違って能力をまともに使えない。スタートラインにすら立てていないのだ。
「大丈夫だよ。だって颯斗は――」
赤田さんは笑顔で答えた。
「最強なんだから!」
俺と白蓮さんは、赤田さんの発言の意味がまったく分からなかった。
まともに能力を扱えない俺を「最強だ」なんて言うやつはいない。
「何でもいいから、早くグラウンドまで来てくれる?」
三人組は俺たちを笑いながら、グラウンドへ向かい始めた。
こうなった以上、俺も腹をくくるしかない。
俺たちも立ち上がり、グラウンドへ向かった。
「ごめん、神崎」
そう言った白蓮さんの方を振り向くと、彼女は少し申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
赤田さんを止められなかったからなのか。それとも、三人組に絡まれるきっかけを作ってしまったと思っているからなのか。
理由は分からない。
だが、どちらにしても、白蓮さんは何も悪くない。
「気にしなくて大丈夫だよ。俺もあの三人、ムカつくから」
白蓮さんはそれ以上何も言わなかった。
けれど、その表情からは、さっきよりも怒りが強くなっていることが伝わってきた。




