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黒雷の復讐者  作者: Lilith
第2章 開花

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第18話

「号令をお願いします」


「起立、礼」


 教室に入ってきた黒川先生が、学級委員に号令をかけるよう促す。


 俺のクラスの学級委員は赤田さんで、彼女がいつもの号令をかけた。


「今日の授業は、能力者の基礎についてですね。教科書の七ページを開いてください」


 俺は、表紙に「能力基礎」と書かれた教科書の指定されたページを開く。


 「能力基礎」は星光学園でのみ学習する科目で、これ以外にも、能力に関する科目がいくつか存在する。


 もちろん、国語や数学といった一般的な科目もあるため、学習する科目は非常に多い。


 そのため、授業は毎日六限まで行われており、部活動などのクラブ活動は行われていないようだ。


「今日最初の内容は、能力者が生まれる過程についてです」


 能力者が生まれる過程は、比較的シンプルだ。


 大前提として、その人に能力者としての素養がなければならない。


 そして、能力者としての素養を持つ人が、何らかのきっかけで能力に目覚めるのだ。


 そのきっかけとして最も多いのが、感情の高ぶりだという。


 大切なものを失った喪失感や絶望感、そこから生じる怒りなどの負の感情。


 大切なものを守りたいという強い意志や、愛情、友情といった正の感情。


 人によってきっかけとなる感情はさまざまだが、感情が高ぶったときに、その人の能力が発現する。


 そして、能力が発現した後は、その能力をコントロールできるように訓練を積む。


 能力を制御できるようになれば、晴れて一人前の能力者になれるわけだ。


「みなさんは能力者ですから、なんとなくイメージできていると思いますが、感情の高ぶりがトリガーとなって能力が発現します。ですから、能力者としての素養があったとしても、能力が発現しないまま一生を終えることもあります」


 理事長は、俺が能力者だと言っていた。


 それはつまり、俺には能力者としての素養があるということなのだろう。


 だが、俺はあの事件で、とてつもない喪失感に襲われた。


 それでも能力が発現しないということは、喪失感は能力発現のトリガーではないということか。


 今までの人生で、感情が高ぶったことなどほとんどない。基本的に冷静でいるのが俺という人間だ。


 今後、能力が発現するほど感情が高ぶることがあるのか、甚だ疑問だった。


 そもそも、能力の発現は小学生までに起こることがほとんどらしい。


 幼い子供ほど感情が高ぶりやすく、年齢が上がるにつれて能力が発現しにくくなるからだという。


 俺が今いる高等部の生徒は、全員がすでに能力を発現させており、そのコントロールまで身につけている。


 今更ながら、俺が本当に能力者になれるのか、不安になってきた。


 キーン、コーン、カーン、コーン――。


「時間ですね。今日の授業はこれで終わります。号令をお願いします」


「起立、礼」


 授業が終わり、これから昼休みだ。


 俺は席を立ち、昼食を取る前にトイレへ向かおうと教室を出た。


 周りが全員能力者であることを除けば、今まで通っていた学校と何ら変わらない。


 そのため、以前とほとんど変わらない学校生活のルーティンができあがりつつあった。


「おい、早く金出せよ!」


 トイレの前から、何やら物騒な声が聞こえてきた。


 どうやら、上級生の男子生徒が下級生の男子生徒からカツアゲをしているようだ。


「そ、そんな無理です! もうお金はありません」


「昨日、準備しとけって言ったよな? なんでできてないんだ?」


「なんでって、ないものはないですから……」


「おいおい、ないならないで盗むとか、いろいろやりようはあるだろ? 頭使えよ」


「そ、そんなこと……」


 よく見ると、カツアゲされている下級生は俺のクラスメイトだった。


 こういうガラの悪い上級生というのは、どこの学校にもいるものだな。


「ったく、使えねえやつだな!」


 上級生がクラスメイトの胸ぐらを掴み、右腕を振り上げた。


 このクラスメイトとは一度も話したことがない。


 だが、目の前でカツアゲされているのに、見なかったふりをするなんて俺にはできなかった。


「おい! 何やってんだ!」


 俺は大声を上げながら、上級生たちに近づいた。

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