↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒雷の復讐者  作者: Lilith
第1章 決意

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/30

第13話

 赤田さんが口にした言葉と、その行動に俺は困惑していた。


 やっと会えた。


 赤田さんは確かにそう言った。だが、俺には彼女と会った記憶がない。


 腰まで伸びた赤い髪と、綺麗な緑色の瞳が印象的な彼女と、どこかで会っていたのなら、忘れようとしても忘れられないと思う。


「ちょっと待ってくれ。やっと会えたって、どういうことだ? 俺と君は初対面だよな?」


 俺は赤田さんから少し離れ、ずっと気になっていた疑問をぶつけた。


「私のこと、覚えてない? 小さい頃、研究所で一緒にいたんだけど」


「研究所? 小さい頃って、何歳ぐらいのことか覚えてる?」


「五歳のときだよ」


「なるほどな。悪いんだけど、俺、六歳より前の記憶がまったくないんだ。だから、君の言うとおり一緒にいたとしても――」


「そ、そうだったんだ」


 赤田さんは、少し残念そうに俺の言葉を受け止めた。


 俺には、六歳になる前の記憶がない。


 気づいたときには施設で生活していて、両親や親戚には一度も会ったことがなかった。


 だから、両親の顔も覚えていないし、施設に入る前にどんな生活を送っていたのかも、まったく覚えていない。


 何とか思い出せないかと考えていた時期もあった。だが、過去のアルバムなども残っていなかったため、いつしか思い出すことを諦めていた。


 研究所にいたと赤田さんは言っていたが、俺も彼女も、そこで一体何をしていたのだろう。


 新しい情報ではあるものの、何かを思い出せそうな気配はなかった。


「忘れててごめん」


「私の方こそ、いきなり抱きついたりしてごめん」


 赤田さんは少し落ち着きを取り戻したようだった。


 そんな彼女を見て、俺も少しホッとした。


「これからは一緒にいられるんだよね?」


「星光学園に通うことになってるから、たぶん一緒にいられるんじゃないかな。この寮でお世話になるかもしれないし」


「あ、そうだった」


 赤田さんは俺の返事を聞いて安心したようで、先程まで流れていた涙も止まっていた。


 そんな彼女の様子を見て、俺もなんだか安心した。


「荷物も置いたし、食堂に戻ろうか」


「うん」


 俺は赤田さんと一緒に部屋を出て、食堂へと戻った。


 その途中、二階の様子を確認する。


 どうやら、この寮は一階が共用スペースで、二階に個室が並んでいる構造らしい。


 二階には九つの部屋があり、それなりに大きな寮だった。


「お、戻ってきたな」


 俺と赤田さんが食堂の扉を開けると、理事長がすぐさまこちらに歩いてきた。


 どうやら、俺がこの寮に住むかどうかという話は、すでに決着がついているらしい。


「神崎、君がこの寮に住むということで話は決着した。私は黒川と夕飯を買ってくるから、自己紹介などを済ませておいてくれ」


「は、はあ。ありがとうございます。あの、ここって食堂ですよね? 夕飯は作らないんですか?」


 先程までとはずいぶん違う理事長の態度に戸惑いながら、俺は理事長に尋ねた。


 理事長は俺たちと入れ替わるように食堂を出ようとしていたが、その瞬間、食堂にいた女性五人全員がピクリと反応した。


 その様子を見て、俺は聞いてはいけないことを聞いてしまったのだと悟った。


「実は、誰も料理ができないんですよ」


 俺がどうフォローしようかと考えていると、黒川さんがあっさりと明かした。


 理事長以外の全員が、気まずそうに俯く。


 料理ができないこと自体は、別に悪いことではないのだが……。


「そうなんですね。材料はないんですか?」


「確か、何かのお肉が入っていたような気が……」


 俺は黒川さんと一緒に台所へ入り、冷蔵庫の中を確認した。


 中に入っていたのは、冷凍された豚のこま切れ肉、ニラ、玉ねぎ、それに賞味期限がギリギリの卵だった。


 調味料は味噌、醤油、砂糖がある。


 ……なぜ砂糖が入っているのだろう。


「それじゃあ、何も作れないだろう? だから買いに――」


「ニラ玉と豚汁ぐらいなら作れそうですね。俺でよければ作りますよ」


 俺がそう言うと、女性五人全員が驚いた表情を見せた。


「なら、お願いしようかな」


 理事長は食堂を出るのをやめ、先程まで座っていた椅子に座り直した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。