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とにかくめんこい魔王の隠し子ですが、貧乏将軍家の福の神になりました。  作者: 忍絵 奉公


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第30話 ルビーの罠


 荒くれ者たちが毒殺されてから翌日。

 ツェッペリン家には重苦しい空気が流れていた。

「証人を消すなんて……。」

 ルナリーナはため息をつく。

 ブルーは腕を組んだまま考え込んでいた。

「偶然とは思えない。」

「誰かが、あいつらに口を割られたくなかった。」

 その時、ルビーが立ち上がった。

「警備隊へ行ってきます。」

「何か分かったの?」

 レッドが尋ねる。

「少しだけ。」

 ルビーの瞳は真剣だった。


 村の警備詰所。

 警備隊長はルビーを迎え入れた。

「何か気になることでも?」

 ルビーは静かに切り出した。

「質問があります。」

「どうぞ。」

「荒くれ者が捕まったことを、事件当日に知っていた人は誰ですか?」

 隊長は少し考える。

「警備隊。」

「深夜だから現場にいた村人や野次馬はいなかったな。」

 ルビーは頷く。

「毒殺は翌日でした。」

「つまり、捕まったことをすぐ知っていた人の犯行である可能性が高いですよね。」

 隊長は目を見開いた。

「なるほど……。」

「王都から来た者には時間が足りない。」

「外部の人間より、村人を疑うべきか。」

 ルビーはさらに続ける。

「私たちに恨みを持ち。」

「強盗事件にも関わっていそうな人。」

「一人だけ思い当たります。」

 隊長も同じ名前を思い浮かべた。

「……ナルルか。」

「はい。」

「いつも将軍家へ嫌がらせをしています。」

「ですが。」

 隊長は苦い顔をする。

「証拠がない。」

「それだけでは逮捕はできん。」

 ルビーは少し考えてから尋ねた。

「もし、ナルルの家から毒薬が見つかったら?」

 隊長は即答した。

「それなら十分だ。」

「家宅捜索の令状も申請できる。」

「だが現時点では、強制捜査は不可能だ。」

 ルビーは静かに微笑んだ。

「なら……。」

「罠を張ります。」

「罠?」


 夕方。

 ツェッペリン家。

 ルビーは家族へ作戦を説明していた。

「将軍家肉祭りを開きます。」

「肉祭り?」

 レッドの目が輝く。

「村のみんなを招待するの。」

「もちろんナルルも。」

 ブルーは首を傾げる。

「それで?」

 ルビーは机の上へ一本の酒瓶を置いた。

「宴会の途中で、ナルルさんのお酒へ、別の酒を目の前で注ぎます。」

 ルナリーナが不思議そうに聞く。

「それだけ?」

 ルビーは小さく笑った。

「その時、こう言うんです。」

『ああ、それはナルルさんの家に置いてあったお酒ですよ。』

 部屋が静まり返る。

 ルビーは続ける。

「毒なんて入れません。」

「ただの酒です。」

「でも――」

「毒を入れた本人なら。」

「自分のお酒を見た瞬間、毒を連想する。」

 ブルーの目が大きく開く。

「……なるほど。」

「飲めなくなる。」

 レッドは立ち上がった。

「それだ!」

「犯人なら絶対に飲めない!」

 ルナリーナも感心する。

「心理戦ね。」

 ルビーは頷く。

「もし慌てたり、止めようとしたり、不自然な反応を見せれば。」

「警備隊も疑いを深めます。」

 ブルーは腕を組んだ。

「でも……。」

「そんなにうまくいくかな。」

 ルビーは少しだけ笑う。

「分かりません。」

「でも、人は秘密を抱えていると、思っている以上に動揺するものです。」

 その言葉に、一同は静かに頷いた。

 その時、足元でリッチが「ニャ」と一声鳴いた。

 まるで、

『面白い作戦だ。』

 そう言っているようだった。

 数日後。

 村中を巻き込んだ「将軍家肉祭り」が開かれる。

 そしてその宴こそが、ナルルを追い詰める最初の一手となるのだった。



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