第28話 守るための剣
「まずい……。」
門の外で様子を見ていた隣人ナルルは、村中に鳴り響く警鐘を聞いて顔色を変えた。
カーン! カーン!
警備隊だけではない。
松明を持った村人たちまで集まり始めている。
「捕まったら終わりだ……。」
ナルルは周囲を見回す。
荒くれ者たちはまだ戦っている。
(あとは勝手に頑張って。)
誰にも気づかれないように、こっそりと闇の中へ逃げ出した。
一方、屋敷の玄関。
ブルーは木剣を握りしめていた。
「はぁっ!」
ガキィン!
一人目の剣を受け流す。
しかし、その横から二人目。
さらに後ろから三人目。
三人同時に襲いかかってくる。
「くっ……!」
ブルーは一人なら十分に戦える。
だが、多勢に無勢だった。
ザシュッ。
肩を浅く切られる。
「ぐっ!」
さらに――
ザッ。
腕に一本。
足にも一本。
服が裂け、赤い血がにじむ。
ルナリーナが悲鳴を上げた。
「ブルー!」
ルビーは歯を食いしばる。
「兄さん!」
それでもブルーは退かなかった。
後ろには家族がいる。
リリィがいる。
(ここだけは……。)
(絶対に通さない。)
ブルーは歯を食いしばり、再び剣を構えた。
庭ではリッチが黒豹の姿で荒くれ者たちを追い詰めていた。
「ひぃぃ!」
「近寄るな!」
誰もまともに戦えない。
その時。
「警備隊だ!」
門が勢いよく開いた。
十数名の警備兵が一斉に飛び込んでくる。
しかし先頭の隊長は、巨大な黒豹を見て思わず剣を抜いた。
「魔物!」
「待ってください!」
レッドが叫ぶ。
「あの子は味方です!」
「僕たちを守ってくれてるんです!」
トムも駆け寄る。
「本当です!」
「この黒豹が僕の命を助けてくれました!」
警備隊長は一瞬だけ考えた。
そして剣先を荒くれ者たちへ向ける。
「敵はあいつらだ!」
「魔物ではない!」
「突撃!」
「おおっ!」
警備隊とリッチが同時に動いた。
リッチが一人を突き飛ばす。
警備兵が縄で縛る。
逃げた男は村人たちが取り押さえる。
あっという間に庭の荒くれ者は全員制圧された。
「玄関だ!」
隊長が叫ぶ。
全員が家へ駆け込む。
玄関では、まだブルーが踏みとどまっていた。
息は荒い。
腕から血が流れている。
「もう限界だ!」
荒くれ者が笑う。
「ガキ一人、よく頑張ったな!」
剣を振り上げた、その瞬間。
「そこまでだ!」
警備隊が玄関へ雪崩れ込んだ。
「なっ!?」
さらに反対側には黒豹となったリッチ。
荒くれ者たちは完全に挟まれた。
「逃げ場がない!」
「降参だ!」
「うわぁぁ!」
抵抗する者はすぐに取り押さえられた。
最後の一人も警備隊長の一撃で剣を落とし、地面へ押さえつけられる。
「全員確保!」
ようやく屋敷に静けさが戻った。
その時だった。
「……あぅ……。」
リリィが泣きながらブルーへ歩いてくる。
「うぇぇぇぇん!」
ルナリーナが止める間もなく、ブルーへ抱きついた。
「リリィ……。」
ぽうっ……
リリィの指輪が柔らかく輝く。
温かな光がブルーを包み込んだ。
「これは……。」
腕から流れていた血が、ゆっくりと止まっていく。
肩の傷も、痛みが和らいでいく。
警備隊長は思わず目を見開いた。
「血が……止まった?」
一人の隊員が呟く。
「奇跡だ……。」
ブルーはリリィを優しく抱きしめた。
「ありがとう。」
リリィは涙を流しながらも、小さく笑った。
「あぅ……。」
その光景を見た警備隊長は静かに剣を納める。
「ブラウン将軍は、立派な家族を育てておられる。」
「この家は、我々警備隊が責任をもって守る。」
村人たちも深く頷いた。
誰もが、ツェッペリン家を支えようと思った夜だった。




