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とにかくめんこい魔王の隠し子ですが、貧乏将軍家の福の神になりました。  作者: 忍絵 奉公


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第22話 黒猫の正体


 翌朝。

「やっぱり怪しい……。」

 性格の悪い隣人は、ツェッペリン家の塀の陰に身を潜めていた。

 毎日のように肉を食べている。

 貧乏将軍家のはずなのに、なぜ暮らしが良くなったのか。

 その理由を突き止めようとしていた。

 すると、玄関の扉が静かに開く。

「ニャ。」

 黒猫のリッチだった。

「出てきた!」

 隣人は物音を立てないように後を追う。

 リッチは村を抜け、森へ入っていく。

「どこへ行くのかしら……。」

 十分ほど歩いた頃だった。

 リッチは人目のない広場で立ち止まる。

 周囲を見回し、小さく鳴いた。

「ニャ……。」

 その瞬間。

 黒い魔力が身体を包み込む。

「な、何!?」

 隣人は目を見開く。

 リッチの身体がみるみる大きくなる。

 骨格が変わる。

 筋肉が盛り上がる。

 鋭い牙。

 長い尾。

 漆黒の毛並み。

 数秒後。

 そこに立っていたのは、一頭の巨大な黒豹だった。

「ひっ……!」

 隣人は口を押さえる。

 声を出せば気づかれる。

 黒豹となったリッチは、そのまま森の奥へ駆けていった。

 しばらくして、大きなイノシシをくわえて戻ってくる。

 軽々と持ち上げるその姿は、普通の獣ではない。

 隣人は足を震わせながら、村へ全力で逃げ帰った。


「大変よ!」

「大変よぉぉ!」

 広場へ飛び込んできた隣人は、息を切らしながら叫んだ。

 村人たちが集まる。

「どうした?」

「何があった?」

 隣人は震える指で森を指差した。

「ツェッペリン家の黒猫!」

「あれ、猫じゃない!」

「魔物よ!」

 村人たちは顔を見合わせる。

「魔物?」

「何を言ってるんだ?」

「本当なの!」

 隣人は必死だった。

「森で見たの!」

「黒猫が巨大な黒豹になったの!」

「イノシシをくわえて歩いてた!」

 村人たちがざわつく。

「本当か?」

「そんな馬鹿な。」

「でも、最近毎日肉を食べてるって話は聞く。」

「あの家だけ妙に景気がいい。」

「やっぱり何かあるんじゃないか?」

 噂はあっという間に村中へ広がった。

「黒猫は魔物らしい。」

「人を襲うかもしれん。」

「子どもが危ないぞ。」

「討伐しないと!」

 不安は恐怖へ変わっていく。

 やがて十数人の村人が農具や棒を持ち始めた。

「ツェッペリン家へ行こう!」

「本当か確かめる!」

「危険なら追い出すべきだ!」

 怒号を上げながら、村人たちは屋敷へ向かう。


 その頃。

 ツェッペリン家では何も知らず、昼食の準備をしていた。

 ルビーはリリィを抱いて微笑んでいる。

 ブルーはリリィを膝に乗せ、少しずつ光を感じる練習を続けていた。

 レッドはリッチを探して庭を歩く。

「リッチー?」

「どこー?」

 その時。

 ドンドンドンッ!

 激しく門が叩かれた。

「ブラウン将軍!」

「出てこい!」

「話がある!」

 怒鳴り声が屋敷中に響く。

 ブラウンは玄関へ向かう。

 門を開けると、そこには怒った村人たちと、先頭で腕を組む隣人の姿があった。

 隣人はブラウンを指差し、大声で叫ぶ。

「あなたの家は魔物を飼っている!」

「村のみんなを危険にさらすつもり!?」

 村人たちの視線が、一斉にブラウンへ向けられた。

 家族に、新たな試練が訪れようとしていた。


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