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とにかくめんこい魔王の隠し子ですが、貧乏将軍家の福の神になりました。  作者: 忍絵 奉公


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第14話 六日ぶりの帰宅


 六日後。

 クレーム老婆は鼻歌交じりで村へ帰ってきた。

 腰には、王都でもらった金貨一枚が入った革袋。

「思ったより儲かったねぇ。」

「また何か流れてこないもんかね。」

 上機嫌で小屋の扉を開ける。

 ギィ……

「さて。」

 老婆は部屋を見回した。

「どうせ赤ん坊は死んでるだろ。」

 六日も飲まず食わずなら、生きているはずがない。

 老婆はまったく悲しむ様子もない。

 むしろ考えていたのは別のことだった。

「指輪だ。」

「あの外れない指輪を切り取ればいい。」

「指ごと切れば外れるだろう。」

「魔王の刻印も削れば売れるかもしれない。」

 ぶつぶつ言いながら毛布へ近づく。

 しかし――

「……あれ?」

 毛布しかない。

 赤子がいない。

「ない!」

 部屋中を見回す。

「ない! ない!」

 棚の下。

 樽の中。

 布団の裏。

 どこにもいない。

「どこだ!」

 その時。

 机の上に紙切れが置いてあることに気付く。

 老婆は乱暴に広げた。

 赤ちゃんを六日も放置するなんて信じられません。

 このままでは命が危ないので、私が預かっています。

 落ち着いたら話し合いましょう。

 ——隣の家より

 老婆の顔が真っ赤になった。

「攫われたぁぁぁ!」

 鍬を肩に担ぐ。

 そのまま隣の家へ全力疾走した。

「返せぇぇぇ!」

 玄関を蹴飛ばす勢いで怒鳴る。

「ワシの赤ん坊を返せ!」

「泥棒!」

「人さらい!」

「勝手に家へ入るとは何事だ!」

 手足をばたばた振り回しながら大暴れ。

 鍬まで振り上げる。

 その騒ぎは村中へ響いた。

「あの婆さん、また始まった。」

「今度は何だ?」

 野次馬が次々と集まってくる。

 隣人の奥様も赤子を抱いて外へ出た。

「あなた!」

「六日も帰ってこなかったじゃない!」

「赤ちゃんがお腹を空かせて泣いてたのよ!」

「だから預かったの!」

 老婆は聞く耳を持たない。

「泥棒!」

「人さらい!」

「ワシの赤ん坊だ!」

 村人たちが口々に言う。

「いや、お前が置き去りにしたんだろ。」

「六日もだぞ?」

「死んでもおかしくなかった。」

「奥さんが助けなきゃ、この子は生きてなかった。」

「そうだ、そうだ!」

 野次馬のほとんどが隣人夫婦の味方だった。

 老婆は顔を真っ赤にして怒鳴る。

「うるさい!」

「余計なお世話だ!」

 隣人の夫が前へ出る。

「衛兵を呼びますか?」

 その一言で老婆の動きが止まる。

 衛兵が来れば事情を聞かれる。

 王都でもらった褒美のこと。

 赤子を放置したこと。

 すべて知られるかもしれない。

 一方、隣人夫婦も困っていた。

 このままでは逆に「人さらい」と言いふらされる可能性がある。

 何も知らない人が聞けば、誤解されかねない。

 夫婦は顔を見合わせた。

「……返しましょう。」

「ああ。」

 奥様は名残惜しそうに赤子を抱きしめる。

「ごめんね。」

「本当は、もっと一緒にいたかった。」

 赤子は不思議そうな顔で奥様を見つめる。

 黒猫が塀の上から、その様子を静かに見守っていた。

 老婆は赤子をひったくるように抱き上げる。

「最初から返せばいいんだ!」

 そう言い放つと、鍬を担ぎ、小屋へ戻っていった。

 野次馬たちは誰一人、老婆を擁護しなかった。

「かわいそうなのは赤ちゃんだ。」

 誰かがぽつりと呟いた。

 その言葉に、多くの村人が静かにうなずいていた。


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