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とにかくめんこい魔王の隠し子ですが、貧乏将軍家の福の神になりました。  作者: 忍絵 奉公


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第13話 金貨一枚の褒美


 三日後――。

 王都。

 巨大な城門をくぐった馬車は、そのまま王城へ向かった。

 クレーム老婆は窓から外を見回し、口をあんぐりと開ける。

「でっかい城だねぇ……。」

「静かにしてください。」

 鑑定師はため息をついた。

「これから国王陛下への謁見です。」

「失礼のないように。」

「分かってるよ。」

 そう言いながら、老婆は鼻をほじった。

 鑑定師は頭を抱えた。

 (本当に大丈夫だろうか……。)


 やがて二人は、謁見の間へ案内された。

 赤い絨毯。

 左右には近衛騎士。

 奥の玉座には国王が座っている。

 その隣には、鋭い目つきの宰相。

 鑑定師は深く頭を下げた。

「陛下。」

「ご報告申し上げます。」

「うむ。」

「こちらの品々は、間違いなく魔王城から流出した秘宝でございます。」

 侍従たちが布を外す。

 黄金の指輪。

 豪華なネックレス。

 宝石。

 王の表情が少し変わる。

「間違いないのだな。」

「はい。」

 鑑定師は一本の指輪を持ち上げる。

「裏側をご覧ください。」

 侍従が王へ差し出す。

 黒い翼を広げた紋章。

 魔王家の証。

「すべてに、この紋章が刻まれております。」

 宰相もうなずいた。

「勇者一行が持ち帰っていた財宝の一部でしょう。」

「間違いありません。」

 宰相は老婆へ鋭い視線を向ける。

「では聞こう。」

「どうやって手に入れた?」

 老婆は胸を張った。

「先祖代々から受け継がれる物です。」

「だから、それはやめろ!」

 鑑定師が思わず怒鳴った。

 謁見の間が一瞬静まり返る。

「陛下の御前ですよ!」

「嘘をついてはいけません!」

 老婆は肩をすくめる。

「ちぇっ。」

「じゃあ本当のこと言うよ。」

「樽が川から流れてきたんだ。」

「その中に入ってた。」

「最初からそう言いなさい!」

 鑑定師は額を押さえた。

 宰相は腕を組む。

「ふむ。」

「流された財宝か。」

 勇者一行が運搬中に紛失した物と考えれば、辻褄は合う。

「しかし。」

 宰相は厳しい声で続けた。

「これは勇者たちが命懸けで魔王を討伐し、手に入れた戦利品だ。」

「何人たりとも、その手柄を奪うことはできん。」

 老婆は負けじと前へ出る。

「でも私は正直に話しました!」

「だから褒美をください!」

 宰相は呆れた。

「正直か?」

「先ほどまで嘘をついていたではないか。」

 謁見の間に笑いが起こる。

「確かに。」

「先祖代々と言っておったな。」

「はっはっは。」

 老婆は咳払いを一つ。

「……途中から正直です。」

「開き直るな。」

 宰相は即座に突っ込んだ。

 再び笑いが起きる。

 それでも老婆は引かない。

「でも!」

「これを持ってきたのは私の手柄でしょう!」

「川で拾ったのも私!」

「ここまで運んだのも私!」

「少しくらい褒美があってもいいじゃないか!」

 その言葉に、国王は小さく笑った。

「……確かに。」

 宰相へ目配せする。

 ――適当に払って帰らせよ。

 その意図を宰相はすぐ理解した。

「仕方あるまい。」

 近衛兵へ命じる。

「金貨一枚を。」

 兵士が革袋を持ってきた。

 中には金貨が一枚。

 老婆は目を丸くする。

「金貨!」

 この国では、

 金貨一枚は銀貨百枚。

 銀貨一枚は銅貨十枚。

 つまり金貨一枚で、銅貨千枚分にもなる大金だった。

 宰相は袋を差し出す。

「今回に限り、拾って届けた功績として褒美を与える。」

「これを受け取り、去るがよい。」

 老婆は袋を開け、金貨を何度も裏返した。

「おぉ……。」

「本物だ。」

 思わず顔がほころぶ。

(宝石を売ればもっと高くなったかもしれないけど……。)

(まぁ、金貨一枚なら悪くないか。)

 老婆は満足そうに袋を抱えた。

「ありがとうよ!」

 深々と頭を下げることもなく、鼻歌交じりで謁見の間を出ていく。

 その後ろ姿を見送りながら、宰相はぽつりと呟いた。

「……嵐のような老婆だったな。」

 しかし、その場にいた誰も知らなかった。

 魔王城から流れ着いた「最も価値のある宝」は――

 まだ、あの老婆の村に残されたままだということを。



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