1章 第8話 『新たな始まり』
予約投稿……こんな神機能があったなんて!!
「準備はよろしいですかな? アール様、ヘル様」
「問題ないわよ。早く行きましょう!」
「俺も準備万端です。いつでも行けますよ」
時刻は朝の8時頃、チャウロンの声掛けにアールとヘルが返している。
アールは昨日の夜からずっと早く朝にならないかなと、言っていてものすごく楽しみにしているのが伝わってくる。
そんなアールの様子を見ながらヘルは1人これからの生き方を考えていた。
魔法剣学校で魔法の使い方を習い制御できるようにする事を今の目標にする。
そして、困っている人、助けを求めている人がいたら必ず助ける。
そのために俺は……
「……アールそろそろ行こうか」
ヘルは身支度を終えたアールに声を掛けると、アールが顔を覗き込んでくる。
「明るい顔で行かなきゃダメだよ? 新しい人達にも会うんだから」
「分かってるよ。それじゃぁ、チャウロンさん短い間でしたけど、本当にお世話になりました」
暗い顔と言われたヘルは表情を無理やり笑顔に変えて、チャウロンにお礼を告げた。
「こちらこそお世話になりましたよ。これからもアール様をお願いします」
そう言ってチャウロンは手を差し出してくる。
「全力を尽くします」
チャウロンと反対の手を伸ばし握手を交わす。その手は硬く、豆がたくさんあるように感じた。
「2人共何辛気臭い雰囲気出してるのよ? 卒業したらまた会えるし、休日にだって会えるんだから悲しむことはないでしょ」
アールにため息をつかれ、ヘルとチャウロンは顔を見合い苦笑を浮かべた。
「それじゃぁ今度こそ——」
アールとヘルは扉の前に立ち、振り返る。
「「行ってきます!」」
宿から少し歩いた所に位置している日本の学校に、似ているようで異なる建物は太陽の光は受けて眩しすぎるくらい光り輝いている。
「眩し過ぎない? 目がチカチカするよぉ」
「建物が白すぎるから反射して眩しさが増してるよ、これ……」
「——ん?」
校門のような場所に1人立っているのが見える。徐々に近づき、
「止まりなさい。冒険者カードの提示を」
「はい!」
黒スーツの女性に言われ、アールが提示する。それに続きヘルも見せる。
「問題なし、教室は4階。遅刻したらペナルティだ」
ペナルティ? 気になる事を言っていたが、アールに引っ張られて4階を目指す。
学校なんていつぶりだろうか。日本では高校2年生で不登校になったからなぁ。今度はうまくいくと良いんだが……、アールもいるし心配はいらないか。
ヘルは日本の事を思い出していると、あることに気がつく。
「そう言えば、入学式はないの?」
「入学式?」
「ほら、新しく学校に入る人達を祝って迎え入れる神聖な儀式。みたいな感じの行事」
「祝い事はないよ? 唯一挙げるとしたらギルドでの祝いの言葉くらい?」
この世界に入学式は存在しないらしい。
ヘルはどうやってクラスメイトと話すきっかけを作れば良いんだと苦悶していると、
「ねえ、いつから眩しくなくなった?」
「——っ!」
アールの一言にヘルの体を鳥肌が覆う。今の今まで気づかなかった。ここの敷地には"太陽が見えない"。
「どうなってるんだ?」
「分からないけど、眩しくないならそれで良いんじゃない? 早く行こ?」
アールの態度を見ていると身構える必要はないんじゃないかと思ってしまう。
「そうだな、これも魔法剣学校の仕組みなんだろう」
「そーゆこと、そーゆこと!」
今考えても分からないだろう。深く考えないようにして、歩き出す。元気に前を歩くアールの背中を追って。
「いいか? こう言うのは始まりが大事なんだ。教室の入り方で印象が最高か最悪かの2択に決定される」
しばらく歩き、教室にたどり着いたヘルとアールは教室のドアの前でこそこそしていた。
「つまり、さっき言っていた『頼もう!!』ってやつを扉を思いっきり開けて叫べば良いのね?」
「そう言うことだ」
アールには舐められないための、開口一番の決め台詞を教えていた。
「いいか? まず俺が先陣を切る。そしたらそれに続いてアールも入ってくるんだ」
「ヘルの後に続く……覚えたわ」
「よし、それじゃ行くぞ!」
「あっ! ちょっとまっ——」
アールが何かを言おうとして手を伸ばしてくるがヘルは止まらない。
「頼もう!!」
「…………」
ドンっと勢いよくドアを開けると、目の前の教室には人が居なかった。
「だから待ってって言ったのに……、人の気配無かったでしょ?」
「気配とかまだ分からないって……」
ヘルは恥ずかしくなり、蹲ってしまう。
「あはぁー、1人で何やってんの? 恥ずかしくない?」
背後から息を吐くように始まり、最後だけ甲高く伸びる独特な笑い声が聞こえてくる。振り向くと、緑髪緑瞳の少年がいた。
「舐められないように一発決めてやろうとしたら、誰も居なかったんだよ」
「それは恥ずかしくて蹲るわけだ。……はい」
「——花?」
緑髪の少年はポケットから一輪の花を取り出した。それは黄色の花で少しビリビリしているように見える。
「廊下の壺に刺してあった花をムシったつ。これで怒られる時は君だね」
「おい、なんてもん渡してんだよ。初日から怒られるとか勘弁だぞ……」
ビリビリしている花をヘルはポケットにしまい、手を差し伸べてくる緑髪の少年の手を掴む。
「よっと、俺はジン、君は?」
「俺はヘル、想像とは違ったけどまぁ? 話すきっかけは作れたから良しとするか」
「あはぁー、あれは話しかけない人いないでしょ」
緑髪の少年——ジンは甲高い笑い声を上げながら、言ってくる。
とりあえず話す人はできそうだと安心するヘルは、アールを見ると親指を立ててこっちに向けていた。
それにヘルも親指を立て返す。
「それで、席って自由なの?」
「俺も分からないな。先生とかもまだきてないみたいだし」
「とりあえず適当に座っちゃった良いんじゃない?」
そんな事を話していると、タイミング良く入ってくる黒スーツを着た男。
「席は自由でいい。まだ来てない人がいるからそれまでは話でもして待っていると良い」
先生と思しき人が教室の真ん中の教卓に立ち、言ってくる。
ヘル達は近くに座り、話をしていると次から次に教室に人が入ってくる。
教室の席はヘルを合わせて全部で9席。これが全て埋まると先生が話し出す。
「よし、全員集まったな。えーこれから武器を作りに行く」
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