1章 第9話 『魂の具現化』
「武器を作りに行く」
ヘル達の前に立つ先生がそう言って、黒板にグループ分けを簡単に書いた。
「まずは2班に分かれる。今日は1班、明日で1班だ。グループはこんな感じで行く」
黒板にはヘル達が座っている席で4人ずつで分けられている。
「同じグループだね、ヘル。後ジンも」
「あはぁー、ついで感覚すぎる。泣いちゃうよ?」
アールはヘルに笑いかけ、ジンは独特な笑い声を上げながら真顔で言葉を返している。
「うん。でも、もう1人いる」
ヘル、アール、ジン、そして黄土色の髪に黄土色の瞳、土気色の顔をした男が一緒のグループに数えられている。
「よしそれじゃぁ、まずはそっちから行くか。しっかり着いてこいよ」
先生はヘル達を指差し、歩き出す。それに合わせて、4人も歩き出す。
廊下を歩いている時にヘルは思っていたことを口にする。
「なぁ、こう言うのって普通は自己紹介、これからよろしく。みたいな流れでやるもんじゃないの?」
日本では自己紹介をしてから授業に入ったぞ。趣味や好きな食べ物等でクラスメイトとの会話のきっかけも見つけられるし、した方がいいと思うんだけど……
そもそもまだ先生の名前すら聞いてないってどうなんだよ。
「えっへぇー、その時間すら惜しいんじゃない?」
ジンの言葉に続き土気色の顔をした男が話し出す。
「世界は魔王にモンスターに六大魔獣と、警戒するものが多すぎる。一刻も早く戦力を手に入れたいのだろう」
「そう言うもんなのか」
土気色の顔をした男。その瞳は力強く、禍々しい何かを感じてしまった。
「私はアール、貴方の名前はなんて言うの?」
アールが土気色の顔をした男に問いかける。我に帰った様に顔を上に向けて男が名乗る。
「俺はトゥルバ」
「俺はヘルで、こっちが——」
「——あはぁー、好きな食べ物はパンの耳のジンです。よろしく、友好の証に一ついる?」
土気色の顔の男——トゥルバにヘルとジンが自己紹介をする。
ジンがポケットからパンの耳を取り出し、トゥルバに差し出すが、「遠慮しとく」と断っていた。
「何でパンの耳持ってんの?」
「朝ごはんの残り」
その場にはしばらく沈黙が続き、一つの部屋に先生が入り、それに続く。
ギルドで冒険者登録をした時と同じ銀色の壁に銀色の床の銀色の部屋。一つ違う場所があるとすれば、電話ボックスではなく、何かの機会が真ん中に置かれている。
「よし、冒険者カードは持ってきているな? それと私の名はオルドだ」
先生——オルドが冒険者カードを出してくれた言ってきた。ヘル達はそれぞれ冒険者カードを出し、
「それでは、まずは君からだ。この機会に冒険者カードを差し込んでくれ」
アールがオルドに言われて機会の前に立ち冒険者カードを差し込む。すると、銀色の部屋が淡い青色に包まれる。
機会の上に置いてあった金属がどんどん形を変えて行く。
「何だこの光は……」
「あはぁー、金属がうにょうにょしてる」
トゥルバは目を腕で覆い、ジンは指を刺しながら金属を見ている。ヘルも同じか目を覆うが、金属の変形した姿を見て言葉を失う。
「うん。これは刀だな」
金属は形を変えて刀に姿を変えていた。それを見てオルドは感嘆している。
「持ってみなさい」
そう言われ、アールが刀を持つと銀色だった剣躯は白色に変わって行く。
「色が変わった?」
アールがそんなことをこぼす。その様子を見ていたジン、トゥルバも同じく固まっていた。
「武器は魂を表す物。言うなれば魂の具現化だな。その刀は君の色を表してるんだよ」
「私の色……」
アールの刀は鍔の部分に翼があり、刃が片方だけの白い刀。
ヘルはアールの刀を見てオルドの言っていた『武器を作りに行く』がこう言うことだったのかと理解する。
武器が魂の具現化って凄いな……。魔法も魂が関係してるみたいだし、武器も魂関係……、この世界は魂がどれだけ重要何だ?
「よし次はそっちの君だ」
そう言われて、トゥルバが前に出て行く。アールと同じく冒険者カードを差し込むと、辺りが黄土色に光る。
すると先ほど同様に金属が形を変えて行く。
「迷いの無い形だな」
オルドが顎に手を当てて興味深そうに覗き込んでいる。それを無視して、トゥルバは黄土色の細く螺旋状になっている剣。細いドリルの様な形をした剣を握っていた。
「俺の魔法に似てるな……」
「次はそっちの君」
トゥルバが何か言っていたがオルドの声で聞き取れなかった。
続いてジンが行き、冒険者カードを差し込んで金属が変形する。すると、禍々しい黒い緑色が銀色の部屋を覆って行く。
「何だこの色!?」
「なんかヤバそうじゃない?」
ヘルとアールが警戒する中、黒い緑色が剣に収束されて行く。
ジンが剣を持つ。しかし——
「——銀色のまま?」
ジンの剣は他の2人と違って色が金属から変わっていない。
「これまた珍しい。これから変わって行くはずだから努力次第だよ」
オルドはジンにそう言ってヘルを呼ぶ。
「最後は君ね」
「はい」
ヘルは冒険者カードを差し込む。すると、ジンの時と同じく銀色の部屋が紅黒い色で覆われる。
何だ!?
色が明らかにヤバそうだぞ?
紅黒い色は金属に収束されて行く。金属は形を変えて——、
「——え?」
そこにあった形はアールの様な白い刀じゃない。トゥルバの様な黄土色の螺旋状の剣じゃない。ジンの様な普通の銀色の剣じゃない。
「……斧?」
そこには片手サイズで片刃の斧があった。剣躯は銀色でできているが、刃の部分だけ少し紅く染まっている部分がある。
(何で俺だけ剣じゃない……?)
「これでどう戦うのか……?」
「これ剣なの?」
オルドとアールが首を傾げる中ジンが近づいてくる。
「あはぁー、これでそこのでかい木を切ってみたよ」
「いや、斧は木を切るための道具だよ」
「……えぇ!?」
ボケたつもりが正しい使い方だと知ってジンは目と口を大きく開けて驚いていた。
「変わった剣だな」
「剣って言っていいのか分からないけど、これが俺の武器らしい」
トゥルバに答える。この世界では斧が存在しないらしい。アダムとイヴは薪を剣で切っていた。この形を見るのも初めてだし、皆からしたら驚くに決まってる。
だけど——、
「——俺の魂は斧を必要としてるのか……?」
深く心に残っているのは間違いない。転生前のクマ事件では斧を握っていた。どうして——、
「色々気になることはあるけど、ひとまず全員武器は作れたから今日はこれで終わりだ。明日はもう一つのグループをやるから休みだ」
オルドはそう言って本格的に学校が始まるのは2日後だと言って、「遅刻せず登校する様に」と言って教室の方に戻ってしまった。
「ええっと、じゃぁ俺達も帰るか」
「そうね、帰りましょうか」
「ならまた2日後に」
「じゃあね」
そう言ってヘル達は寮に戻ることにした。
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