↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
首切りは堕ちる  作者: 越想
第1章 『魂を紡ぐ』
5/13

1章 第4話 『始まりの罪』

またもや時間を忘れてました。

申し訳ありません。

「お、どうだった?」


 アダムが手を上げて聞いてくる。表情が少し暗いのは、心配でもしてくれたのか?


「大丈夫だったよ。そして、バッチリ魔法も使えるみたい」


「な! 本当か!?」


 アダムに肩を掴まれ、顔をぐいっと近づけてくる。どこか信じられないと、興奮しているように見える。


「ほ、本当だよ。だから落ち着いて?」


「わ、悪かったな。でも、興奮するのも仕方ないだろ? 魔法使えるやつなんて世界中を探しても数人とかだぞ?」


「本当にびっくりね」


 頭をぼりぼりと掻きながら、イヴに顔を向けて答える。イヴも口に手を当てて、瞠目していた。


 それだけ魔法が使えるのが凄いのかとヘルは、チヤホヤされる未来を想像していると、


「ま、まぁ。何はともあれ無事に終わったなら、帰ってパーティーにしようぜ? ヘルの誕生日だしさ」


「そうね〜。帰りにスイカ焼きを買いましょうか」


「スイカ焼き!」


 道中気になっていたあの屋台の食べ物。家で出されたことがなく、日本では食したことのない食べ方。


 気にならないわけがない。


 目を輝かせて食べ物の名前を呼ぶ。アダムは肩をすくめて「やれやれ」と言い、家に戻る前に家族全員で買い物を済ませ、帰宅する。





 家につき手を洗い、食卓につく。目の前には白く真ん中に十歳と書かれたケーキが用意されている。 

 甘い香りがヘルの食欲を誘う。

 

 ケーキに蝋燭を歳の数だけ乗っける習慣はなかったみたいだから、アダムとイヴに教えて蝋燭を立たせるようにしたのも十年前か……


「ふぅ!」


「「おめでとう!」」


 頬を膨らませ、力一杯蝋燭に向けて息をはく。灯りは一瞬で消えて、祝福の言葉がヘルの胸を貫いていた。


「ありがとう、これからもよろしくお願いします」


 毎年やっているノリを2人は軽くあしらってアダムがケーキを切り分ける。お皿に乗せているとアダムが「あっ」と言って、


「明日も早起きしろよ? 大事な日なんだからな。明日は俺が一番早く起きるだろうか!」


「あらあら」


 ケーキの乗ったお皿をズイッと突き出して、昨夜のヘルのように誇らしげに言っていた。

 

 イヴは顔を赤く染めて、気恥ずかしそうにしている。


 毎年毎年思うことがある。この2人はすでに32歳だ。それなのにいつも初々しい付き合いたてカップルのような感じでいる。もちろん熟年夫婦のように息があっているのだが。

 

 結婚は22歳でしたと言っていた。つまり——、


「2人ってできk」


「おおっと! いくらヘルでもそれ以上先は言わせないぞ?」


「そうよ〜? 私達はちゃんと合意の上で結婚したのよ」


 アダムにケーキを口に突っ込まれ、イヴが誤解を解くのに人差し指を立て、言ってきた。


 ——自分の誕生日の次の日がけ結婚記念日って……息子的にはどう、受け止めればいいんだよ


 げんなりしていると、アダムとイヴが顔を見合わせ頷き、2人同時に手を出してきた。


「——?」


「「冒険者カードを見せて」」


 2人が同時に言葉を発する。そう言えば見せてなかったのを思い出し、ポケットから取り出して2人に渡す。


「本当に魔法覚えるんだね……、? 精神力高いね」


「確か平均が10だもんね」


 イヴに教えてもらった世界の常識。魔法については教えてくれなかったが、しっかりと身についている。

 その答えを聞いてイヴが「よくできました」と、頭を撫でてくる。悪い気はしない。むしろ嬉しい。


「ま、明日魔法が発現するかもしれないし、発言しないかもしれない。気長に待てよ」


「明日発現? どうして?」


 なぜ明日なのか。アダムが当たり前だろと、言わんばかりの顔で、


「明日は『日食』だぞ? 魔力が暴走しやすい日なんだ。教わんなかったのか?」


 聞いていない。教わってもいない。なんだ日食って。魔力の暴走?


 イヴの方を見ると目を逸らし、ケーキにがっつく。

 アダムとヘルがイヴを見つめるが、食器のカチャカチャと当たる音が返事をする。


「ふぅ。日食はね魔力が暴走して魔法がいきなり発現しちゃうかも、しれない日のことよ。別に、教えるのを忘れてたわけじゃないわよ?」


 ケーキを食べる手を緩めて、念を押して言ってくる。


 魔力の暴走、それが原因で魔法が発動する?


「まぁ、明日になれば分かるわよ。今日はもう寝ましょ? 明日も早起きなんだからね!」


 ヘルは何も言えずに部屋へと消えていくイヴの背中を見つめている。


「俺達も寝るか」


「……そうだね」


 食器を片付け、布団に入り日食とは何か考えながら眠りにつく。





 目を覚まし、居間に向かうとアダムとイヴが話していた。


「じゃあ、俺は食品買ってくるついでにあいつらを呼んでくるよ」


「えぇ〜分かったわ。行ってらっしゃい」


 アダムは」行ってきます」と言い、玄関の扉を開けて出て行こうとした時、ヘルに視線を向けて片目を瞑ってきた。


「えぇ……」


 あまりにも下手くそなウィンクに反応が困る。


「私達は飾り付けと、日食になるまでゆっくりしていましょう」


 イヴの言葉に頷き、部屋を彩る。


 飾り付けが終わり、イヴがお茶を用意してくれた。それを飲みながら、イヴに切り出す。


「日食って結局何なの?」


「日食は太陽が何かに隠されて、朝なのに夜が訪れる。20年に一度起きるんだけど、あまり良くないのよね〜」


 イヴは頬に手を当て困ったような顔をする。


 20年に一度、20年前に何かあったのか?


「まぁ、大丈夫よ。きっと何も起こらないわ」


「そんなフラグを……」


 すると、窓から差し込んでいた陽の光が右から左へと暗くなっていく。この世界に電気はない。

 太陽の光が遮断される。イヴが安心させるように言う。


「大丈夫よ。すぐ終わるわ」


 それはいつも聞いているイヴの声。2人目の母である彼女は日本の頃の母より好きなお母さん。

 踏み込んで来てくれるアダムと、いつも話を聞いてくれたイヴ。これからも大事にしていきたいと、そう思っていた時——





    ——レベルが上がりました——





「は?」


 唐突に頭に浮かび上がる文字。それはレベルが上がったと告げてきた。あまりにいきなりの出来事に困惑していると——、






 ボトっと、何か重量のある物が落ちる音がイヴの方から聞こえてきた。


「お母さん?」


「……」


 返事はない。部屋は静寂に包まれた。


 いや、ポタポタと何か水が溢れるような音が静寂を打ち消す。その音も、イヴの方から聞こえてくる。


「お、お母さん? どうしたの? いつもの悪戯なんでしょ? そろそろ喋ってくれないと、この暗闇の中だと怖くなってきちゃうよ?」


「……」


 イヴはよく悪戯を仕掛けてきた。それはくだらない物だったけど、ヘルの心には強く残る思い出の一つだった。

 これがその悪戯だとしたら、今までで一番タチが悪い。日食が終わったら文句を言ってやろう。


「お母さん……」


「……」


 視界は悪いどころか、何も見えない。その状態で音しか聞こえず、脈絡もなく頭に浮かんだあの言葉。


 不安にならないわけがない。そして、イヴの無言が続く。



 

 日食が終わるのか、窓から差す光が部屋を右から左へと照らしていく。そして、イヴの座っていた椅子を照らした瞬間——、



 


「——なっ! お母さん!?」


 床に座っていたが、勢いよく立ち上がる。目の前の"頭がない"イヴの体を見て。



 何で頭がないんだ? 


 何で首が切れてる?

 

 何で。いつの間に。どうして。そんな、単調な言葉だけが頭を埋め尽くす。


 頭に酸素が回らない。身体中の熱が一瞬で冷え切った気がした。部屋には血の匂いが充満する。


「お、お母さん! お母さん!」


「ただいまー。皆んなを連れてきたぞー」


 ガチャっと扉が開けられる。そこから、アダムと冒険者ギルドにいた人達に登録をした時に教えてくれたお姉さんも来ていた。


 ——どうする!? この状況どうすれば……


「ヘル何してん……おい。何で、何でイヴの頭がない? 何で死んでんだよ!?」


 アダムは座っているイヴの体を見て、驚愕する。持っていた食品は全て落ち、イヴの血でじわじわと紅く染まっていく。


 ヘルは黙っていることしかできない。自分でも何が何だか分からない状況だ。


「ヘル、答えろ!? イヴはどうしてこうなった!?」


「……」


 沈黙を続ける。すると、ヘルの前に不自然に転がってくる丸い物体。それには目が、鼻が、耳が付いていた。


「あ、あぁ……」


 何故かヘルにはその物体——イヴの頭は表情が緩み、笑っているように見えた。

 

 落ち着かせるためか、心配してくれたのか、イヴならどちらもしそうだな。


 そんな、もう表情を変えることのできない頭と視線を交わしていると、


「ちょっ! 人を、自分の親を殺したの!?」


「この、親殺しが!」


「早く、早くその子を捕まえないと!?」


 アダムと来ていた冒険者達が次々と罵声を浴びせてくる。その表情はイヴとは違い、恐ろしい物を、人殺しを見るよう、顔をしていた。


 一人一人の目は鋭く、震えている。


 次の瞬間、声を荒げて、罵声を投げていた三人の首が飛ぶ。



    ——レベルが上がりました——


    ——レベルが上がりました——


    ——レベルが上がりました——



「な、何なんだよ、これ」


 また、あの時と同じ言葉が今度は3回も頭に浮かぶ。ここまで来ると、嫌でも理解してしまう。最初の時と三人の首が飛んだ時、これは——


「——俺がイヴを殺したのか……?」


読んでいただきありがとうございます。


ヘルの魔法、物騒すぎますよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。