1章 第3話 【魔法】
ようやくここに言葉を書いて保存できました!!
イヴに手を引かれ初めての外に出る。
「うわぁぁ、これが異世界……」
ヘルは今初めてここが異世界だと実感する。建物は石や木で統一されていて、赤茶色の建物がほとんどだ。
異世界お約束の中世ヨーロッパって感じか?
初めて見る物に目移りしていると、
「どうだ? 初めての外は」
「びっくりだよ。なんか、こうとにかく凄い!」
アダムは笑いなが「そうか」と言ってくる。実際ヘルには凄い! 以外で表す事は難しい。初めて見る物、初めて感じる物、初めて外を歩く事。初めての事ばかりで、ろくに考える事はできない。
「ねぇ! あれは何?」
石造の家の前、何かの屋台がある。そのお店にはスイカのようなものが売っていた。
「あれは焼きスイカだな。食べたいのか?」
焼きスイカ……?
ヘルは初めて聞く食べ物に興味を持ちつつ、少し食べるのに勇気がありそうだなと眉間に皺を寄せる。
でも、こう言う初めての食べ物にチャレンジするのは転生っぽい! 常識が違うのも定番だ。
「食べたい!」
ヘルは初めての転生イベントはここなんだと思い、勢いよく返す。日本のスイカとどっちが美味しいのか気になるところ。
「ま、今日の帰りに買ってやるさ。まずは冒険者ギルドだろ?」
アダムに今日来た目的を言われる。
初めて事だらけですっかり忘れていた。
「絶対だよ」
アダムに念を押すと「はいはい」とヘルの頭にポンと手を置く。
子供扱いしないでもらいたい。いや……子供扱いのままの方がやりたい放題できるのか?
ショタの方が人気出るんじゃ? とか考えているヘルの手を再びアダムが握り、歩き出す。アダムの顔はどこか満足しているように見える。イヴは微笑ましそうにこちらを見ていた。
「なんか、空気が違う?」
唐突にヘルが問う。日本と違うのはもちろんだが、どこか重い空気が漂っていた。実際路地裏に見える人や、街中で通り過ぎた数人は傷だらけで暗い顔をしていた。
「そうだなー。あまりいい空気、とは言えないな」
「確か今、モンスターを近寄らせないための結界が壊れかけてて、そのモンスター退治のために戦ってるのよね?」
アダムが空を見ながら言い、イヴが確認を取る。またもやヘルの知らない情報。
しかし、モンスター避けの結界に守られてる街。
本当にモンスターいるんだなぁ
感心していると、ふととても大事な、この先生きていく上で最も大事な事をヘルは思い出す。
それは、結構人がいるように思うんだが……いない。
「ねぇ、獣人とかエルフとかドワーフっていないの?」
ヘルは今外を歩いていて、一番気になった事を聞く。答え次第では異世界でのやる気は変わってしまう。
「この村にはいないけど、ちゃんといるぞ。いつか会えるかもな」
これは期待大。エルフとかすごい会ってみたい。やっぱりエルフの森とかあったりするのかな?
そんなことを考えながら歩いているとある建物の前で二人が止まる。
「着いたな」
「さぁ行ってらっしゃい。中に入れば教えてくれるわよ。私達は外で待ってるわね」
「頑張れよ!」
アダムとイヴがそれぞれ手をヘルの背中に当てて押してくれる。衣服の上から肌の温もりを感じつつ、
「わ、分かった。行ってくる」
二人に振り返りはせず扉に向かって歩き出す。
いきなり一人で会話だとかハードル高いな。でもこれはイヴが前から言っていた話す練習だ。
「——」
冒険者ギルドの扉に手をかけて、止まる。
落ち着け、大丈夫だ。話は通してあるって言ってた。ただ声をかけて登録してもらうだけ……あれ? 登録ってどうやるの?
ガチャっと扉が開けられた。
「お、おぉぉぉ」
「あぁん? 何だ、オメェ?」
視界いっぱいに広がるのは冒険者だろうか? 強面の連中から、ヒョロイ体のおじさんに、若い男性と女性の集まり。パーティかな? ジョッキを持ちながらワイワイと騒いでいる。
日本とで、似ても似つかないのはやはり、彼ら彼女らの服装だ。鎧を纏っていたり、剣を携えている。
日本では見れなかった光景に感動していると一人の女性が近づいてくる。
「まーた子供に迷惑かけないでくださいよ」
「えぇ? 俺はただ扉を……」
ヘルの代わりに扉を開けた強面の男性は、納得いかないと言う表情をしていたがお姉さんに「わーわー」と言われギルドを出て行ってしまった。
何だったんだ?
その男性の後ろ姿を眺めていると、
「こんにちは。黒い髪に金色の瞳、貴方がヘル君?」
黒髪青瞳をした綺麗な女性。悪いが俺はイヴよりこのお姉さんの方がタイプだ。
「は、はい、ヘルです」
緊張で声が上擦ってしまう。そんな返事を聞いてお姉さんは口元に手を当て「ふふ」と笑い、
「お話は聞いてます。冒険者登録するんですよね? こちらへどうぞ」
美人なお姉さんの案内に鼻息を荒くしながら着いて行く。すると、曲がり角にある小部屋に入る。入り口の冒険者達が屯していた木造りの建築とは違い、鉄だろうか? 銀色に輝いている床、壁、天井とここだけ造りが違うのが一目で分かる。
それだけ重要な場所なのかな?
疑問符を浮かべていると、銀色の部屋の隅から細長い箱が出てくる。縦に細長い3メートルぐらいの高さの電話ボックスのような物が出てきた。
「えぇっと……」
「それでは、そちらの登録ボックスの中にお入りください」
お姉さんは何かをいじりながら言ってくる。
このボックスも銀色だ。全て銀色で統一されている事を不思議に思ったが今は置いておく。
言われるままボックスの中に入る。すると——、
「——!」
「少しピリピリするかもしれません。害はないので安心してください」
体中がピリピリと痺れる感覚が走る。こんな感覚味わったことがない。……いや、これはあれに似ている。足を攣る寸前のあの辛さだ。
ボックスの中は狭く上に高い。誰でも入れるようにした結果なのか? 言ったら笑いが、太ってる人とか入れなくね?
横幅は1メートルもない。
しばらくして、痺れる感覚のせいで固まっていると、お姉さんの声が聞こえてくる。
「お疲れ様です。無事に終わりましたよ」
ボックスのドアを開けて外に出ると痺れる感覚は消えた。プシューと煙も共に出ていく。一体どこから出た煙なのか。不思議に思っているとお姉さんがカードを渡してくる。
カードは銀色で薄く、重さは感じない。待ち続けた瞬間。焦がれ続けた想い。
ヘルは受け取ったカードを大事そうに胸に抱いて、改めて視界にカードを映す。
「はぁぁ。これが冒険者カード……あ! なんかパラメーターみたいなのが書いてありますよ?」
「はい。それがステータス値ですね。力、速力、体力、防御力、技量、精神力、魔力、魂魔率と全部で8項目あります。詳しいことは学校で教えてくれますよ」
おぉ、凄い。これだけで異世界だと実感が出てくる。しかし、見慣れない項目があるな。
ヘルは自分のカード、ステータス値を見て、
力10
速力8
体力10
防御力10
技量5
精神力20
魔力10
魂魔率0%
魔法『 』
魔法はもちろんだが。やはり目を引くのは他では見たことがない"魂魔率"だ。これは何だ?
「あら、平均より精神力が高いわね。ステータスはこれから頑張れば上がるから、努力次第よ!」
平均値は10とイヴが言っていた。魂魔率についても聞きたいが今、一番聞きたいのは……
「……お姉さん、俺は魔法使えない? 使える人は超少ないって言ってたけど」
「そうねぇ。ほんの一握りだからね。……えぇ!? ま、魔法使えるよ!?」
お姉さんが今日一番の大声と、驚きを隠さずに曝け出してくる。
「え! 本当に?」
「魔法の項目の所。普通は空白が無いんだけど、ヘル君のは空白があるんだよ。これは後から覚えるってことなんだけど、えぇ? まさか本当に使えるなんて……」
どうやら、主人公補正が着いていたのか。俺の時代来ました!
「どうやって魔法は覚えるの!?」
お姉さんに顔をぐいっと近づける。お姉さんは驚き目をパチパチとしていると、
「え、えぇっとね。魔法は七属性あるのは知ってる? そっか、じゃあ教えるね」
属性は既にイヴに教えられている。お姉さんの質問にヘルはぶんぶんと首を縦に振る。
「まず発現方法はまだ明かされていないのよ。だから誰もどうやって魔法が発現するのか分からない」
嘘だろ。
ヘルは絶望した顔をお姉さんに向けつつ、開いた口をパクパクと見せつける。苦笑いをされ、「でもね」とお姉さんは続けて、
「魔法を使うには己の魂を磨け! って言葉があるのよ。だから、まずは自分の魂を磨く事で魔法が発現するんじゃないかって言われる。でも、魔法っていきなり発現するのが普通なんだけどね」
お姉さんは呆れたように笑う。ヘルはお姉さんの言葉を咀嚼し、
魂を磨くか。
何で魂を磨けば魔法が使えるのかは分からないが、『魂魔率』ってのが関係してるのか?
「まぁ、発現するなら待ってみるよ。お姉さん今日はありがとうございました」
「いえいえ、これから頑張ってくださいね? 後、明日楽しみにしてますよ」
銀色の部屋から戻り、ヘルはお姉さんに頭を下げてお礼を言う。お姉さんは指でハートを作りギルドの入り口の方に顔を向ける。
明日はアダムとイヴの結婚記念日。毎年、知り合いを呼んでは家でパーティをしている。
ヘルは苦笑し、お姉さんにもう一度お辞儀をしてギルドを後にした。
読んでいただきありがとうございます。
ここのタイトルは正直変えようと思ったのですが、カクヨムでは【魔法】のままなので、こっちもそのまま行くことにしました。




