表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の最強暗殺者、七歳の幼女に転生してスローライフを目指す~孤児院を脅かす悪党は裏でこっそり始末します~  作者: 黒崎 隼人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/15

第9話「陽光の帰還と温かなスープ」

 空は明るさを取り戻していた。


 朝の太陽が街の石畳を照らしている。


 孤児院の煙突から細い煙が上がっていた。


 リリアは裏庭の塀を越える。


 着地の音は草葉の擦れる音に紛れた。


 井戸のそばへ向かう。


 冷たい水を汲み上げた。


 手と顔の汚れを丁寧に洗い流す。


 水が肌を刺すように冷たい。


 血の匂いが消えるまで何度も洗う。


 清潔な布で水気を拭き取った。


 呼吸を深く整える。


 暗殺者としての鋭い気配を奥底へ沈める。


 平穏な日常を生きる幼女の顔を作る。


 リリアは勝手口の扉を開けた。


 食堂にはすでに子供たちが集まっている。


 無事だった街の様子を窓から見て安堵していた。


 マリアが台所で大きな鍋をかき混ぜている。


 野菜の甘い香りが部屋に満ちている。


 彼女は振り返る。


 リリアの姿を見つけると顔をほころばせた。


「リリア。どこに行っていたの。心配したのよ」


 マリアは小走りで駆け寄ってくる。


 リリアを強く抱きしめる。


 修道服から石鹸の香りがした。


 マリアの体温が冷え切った身体に伝わってくる。


 リリアはそっと彼女の背中に腕を回した。


「ごめんなさい。裏庭で隠れていたの」


 リリアは声のトーンをわずかに高くする。


 不安げな子供の演技だ。


 マリアは安堵の息を吐いてリリアの頭を撫でる。


「無事でよかったわ。さあ朝ご飯にしましょう」


 席につく。


 木の器に温かいスープが注がれた。


 昨日の干し肉が細かく刻まれて入っている。


 リリアは木のスプーンを手に取る。


 スープを一口すする。


 塩気と肉の旨味が舌に広がる。


 胃の腑からじんわりと温かさが広がっていった。


 張り詰めていた筋肉の緊張が解ける。


 子供たちの賑やかな笑い声が耳に届く。


 外ではレオンたち冒険者が凱旋の声を上げていた。


 街は平和を取り戻したのだ。


 リリアはスープを飲みながら密かに微笑む。


 誰も彼女が街を救ったことを知らない。


 知られる必要もない。


 彼女はこの小さな食卓を守りたかっただけだ。


『これでしばらくは平穏ね』


 彼女は器を空にする。


 マリアが嬉しそうにおかわりを勧めてきた。


 リリアは頷いて器を差し出す。


 太陽の光が窓から差し込んでいる。


 木漏れ日が彼女の小さな手を温かく照らしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ