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伝説の最強暗殺者、七歳の幼女に転生してスローライフを目指す~孤児院を脅かす悪党は裏でこっそり始末します~  作者: 黒崎 隼人


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第5話「恩返しと不穏な影」

 数日が経過した。


 冷たい風が街に吹き込む。


 孤児院の庭に枯れ葉が舞っていた。


 木製の門が軋む音を立てて開く。


 レオンが立っていた。


 彼の背後には荷車がある。


 割られた薪が山のように積まれていた。


 大きな布袋には干し肉が詰まっている。


 マリアが驚いて玄関から飛び出してきた。


 修道服の裾が風に揺れる。


「レオンさん。これは一体どういうことですか」


 レオンは照れくさそうに頭を掻く。


「リリアの嬢ちゃんへの礼だ。受け取ってくれ」


 子供たちが荷車に群がる。


 肉の匂いに目を輝かせていた。


 マリアは深く頭を下げた。


 目元に涙を浮かべている。


 リリアは少し離れた場所からそれを見ていた。


 レオンが彼女に近づいてくる。


 彼の顔から笑みが消える。


 真剣な眼差しに変わった。


「少し話せるか」


 リリアは頷いた。


 二人は庭の隅にある大きな樫の木の下へ移動する。


 周囲に他の子供たちの姿はない。


 風が木の葉を揺らす音が響く。


 レオンは周囲を警戒するように見回す。


 声を潜めた。


「森の様子がおかしい」


「あの黒い猪だけじゃない」


「見たこともない魔物が増えている」


 リリアの目がわずかに細められる。


 心臓の鼓動が一つ跳ねた。


「領主軍は動いているの」


 レオンは顔をしかめる。


 拳を強く握りしめている。


「それがおかしいんだ」


「門の警備を減らしている」


「まるで見逃しているみたいだ」


 リリアの脳内で情報が結びつく。


 悪徳商人バルドの背後には貴族の存在があった。


 そして森の異常な魔物の発生。


 すべてが一本の線で繋がる。


 誰かが意図的に魔物を街へ招き入れようとしている。


 それもただの野盗レベルではない。


 強大な力を持つ何者かが裏で糸を引いている。


 彼女は冷たい空気を肺に吸い込んだ。


 吐く息は白い。


『街を丸ごと呑み込むつもりね』


 レオンは彼女の顔をのぞき込む。


「嬢ちゃんはしばらく森へ近づくな」


「何かあれば俺のところへ来い」


 彼はそれだけ言い残して去っていった。


 リリアは樫の木の幹に寄りかかる。


 ザラザラとした樹皮の感触が背中に伝わる。


 彼女は視線を空へ向けた。


 厚い雲が太陽を隠している。


 街を覆う影が色濃くなっていた。


◆ ◆ ◆


 夜が訪れる。


 リリアは孤児院の屋根に登った。


 瓦の上に静かに座る。


 街全体を見渡す。


 遠くの森から不自然な冷気が流れてきていた。


 肌を刺すような悪意の波動だ。


 常人には感じ取れない微かな歪み。


 魔族特有の淀んだ気配である。


 前世で培った危機感知能力が警鐘を鳴らしていた。


 敵の姿は見えない。


 だが確実にそこにある。


 リリアは呼吸を深く整えた。


 血管の隅々まで酸素を行き渡らせる。


 筋肉の緊張を解く。


 彼女は暗殺者としての本能を静かに呼び覚ましていた。

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