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伝説の最強暗殺者、七歳の幼女に転生してスローライフを目指す~孤児院を脅かす悪党は裏でこっそり始末します~  作者: 黒崎 隼人


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第4話「戦士の戸惑いと遊びの作法」

 倒れた魔物の巨体から濃い血の匂いが立ち昇る。


 レオンは地面にへたり込んでいた。


 彼は息を荒くしている。


 土に汚れた顔は蒼白だった。


 彼の視線が魔物とリリアを激しく往復する。


 リリアは静かに魔物の骸から離れた。


 足元に転がる石を避けて歩く。


「お前がやったのか」


 レオンの声はかすれていた。


 喉がひどく渇き切っている。


 リリアは彼を見下ろす。


 まばたき一つしない。


「魔物が勝手に転んだの。当たり所が悪かったみたいね」


 彼女は淡々と嘘をつく。


 レオンは信じられないという顔をする。


 だが魔物の首の関節は砕けていた。


 ただの転倒で起きる損傷ではない。


 彼は額の汗を手の甲で拭った。


 立ち上がろうとして足がもつれる。


 リリアは彼に手を差し出さない。


 ただ静かに見つめて待つ。


 レオンは自力で立ち上がった。


 剣を鞘に収める。


「助かった。俺たちの命の恩人だ」


 彼は深く頭を下げた。


 仲間たちも次々と立ち上がる。


 彼らも同様にリリアへ頭を下げた。


 リリアは少しだけ目を伏せる。


『面倒なことになったわね』


 彼女は木の陰に隠していた麻袋を取りに行く。


 依頼された薬草が中に入っている。


 レオンが背後から駆け寄ってきた。


 彼は大きな手で麻袋を奪うように持った。


「俺が持つ。せめて街まで荷物を持たせてくれ」


 リリアは彼の目を見た。


 真剣な光が宿っている。


 断る方が不自然だと判断した。


「ありがとう」


◆ ◆ ◆


 彼らは連れ立って森を歩く。


 レオンの仲間たちが魔物の素材を解体して運んでいる。


 硬い外殻は高く売れる。


 街の門が見えてきた。


 ギルドへ向かう道中もレオンはリリアを気遣う。


 大きな身体を丸めて歩幅を彼女に合わせていた。


 ギルドのカウンターに獲物を提出する。


 受付の女性が目を見開いた。


「森の浅い階層にこんな魔物が」


 彼女の顔が青ざめる。


 レオンは硬い表情で頷いた。


「異常事態だ。奥から押し出されたのかもしれない」


 彼は報酬の銀貨を受け取る。


 その半分をリリアに差し出した。


 リリアは首を横に振る。


「私は何もしていないわ」


 レオンは強引に彼女の手に銀貨を握らせる。


 金属の重みが手のひらに伝わる。


「これは護衛代だ」


「お前がいなければ俺たちは死んでいた」


 リリアは銀貨を見つめた。


 孤児院の冬を越すための資金になる。


 彼女は静かにそれを受け取る。


「もらうわ」


◆ ◆ ◆


 孤児院へ戻る。


 夕暮れの赤い光が建物を照らしていた。


 庭で子供たちが遊んでいる。


 リリアは彼らの輪に入った。


 鬼ごっこが始まる。


 リリアは決して捕まらない。


 足音を消して死角へ入り込む。


 重心を常に低く保った。


 子供たちは不思議そうに彼女を探す。


「リリアの歩き方を真似してみて」


 彼女は遊びの延長として身体操作を教える。


 踵から着地しないこと。


 呼吸を歩みに合わせること。


 孤児院の子供たちに自衛の術を授ける。


 世界は安全ではない。


 彼女は誰にも気づかれないように種を蒔き続けていた。

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