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伝説の最強暗殺者、七歳の幼女に転生してスローライフを目指す~孤児院を脅かす悪党は裏でこっそり始末します~  作者: 黒崎 隼人


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第3話「ギルドのざわめきと緑の森」

 朝の光が街を明るく照らし出す。


 孤児院の朝はいつも通りに始まった。


 だが昨日の暗い雰囲気はない。


 バルドからの使いが朝早くに訪れたのだ。


 借金は手違いだったという謝罪の手紙を持っていた。


 マリアは手紙を抱きしめて涙を流す。


 子供たちも安堵の声を上げて喜んでいる。


 リリアは少し離れた場所でそれを見守っていた。


 唇の端にわずかな笑みが浮かぶ。


 平和な日常は守られた。


 だが根本的な資金難は解決していない。


 冬を越すための薪も食料も不足している。


 リリアは街の中心へ向かって歩き出す。


◆ ◆ ◆


 冒険者ギルドの大きな木製の扉が見えてくる。


 彼女は両手で重い扉を押した。


 むせ返るような熱気とざわめきが耳に飛び込んでくる。


 汗と酒と鉄の匂いが混ざり合っていた。


 屈強な男たちが円卓を囲んで酒を飲んでいる。


 武器の手入れをしている者もいた。


 リリアは人混みを縫って受付へ歩み寄る。


 背伸びをしてカウンターの縁に手をついた。


「依頼を受けたいの」


 受付の女性が目を丸くする。


 羽ペンを置いてリリアを見下ろした。


「迷子かしら。お家はどこ」


 リリアは表情を変えずに答える。


「仕事を探しているの。薬草の採取ならできるわ」


 女性は困ったように眉を下げる。


「子供には危険よ。森には魔物が出るの」


 リリアはカウンターに小さな銀貨を置いた。


 孤児院の裏庭で見つけた古い硬貨だ。


「登録料よ。十五歳よ」


 女性は苦笑いを浮かべる。


 リリアの真っ直ぐな瞳に気圧されたようだ。


 彼女は一枚の羊皮紙を差し出した。


「これなら街の近くよ。気を付けてね」


 リリアは依頼書を受け取る。


 背後から重い足音が近づいてきた。


「おいお嬢ちゃん。ここは子供の遊び場じゃないぜ」


 声の主は若い剣士だった。


 革の鎧を着ている。


 腰には使い込まれた長剣を下げていた。


 レオンという名前の冒険者だ。


 彼は見下ろすように笑っている。


 周囲の仲間たちも面白そうに見ていた。


 リリアは彼を一瞥する。


 筋肉の付き方は悪くない。


 だが重心がわずかに浮いている。


 実戦経験は少ないようだ。


「心配ありがとう。でも大丈夫よ」


 リリアは短く答えてギルドを後にした。


◆ ◆ ◆


 街の門を抜ける。


 深い森が広がっていた。


 土と落ち葉の匂いが鼻腔を満たす。


 木漏れ日が地面に斑模様を描いていた。


 リリアは依頼書にある薬草を探す。


 瞳孔を開き森の微かな匂いをかぎ分けた。


 土の色と草の形状を瞬時に判別する。


 大樹の根元に目的の草を見つけた。


 小さな手で根を傷つけないように丁寧に摘み取る。


 麻袋に入れていく。


 順調に依頼をこなしていた。


 突然遠くで空気が震える。


 重い金属音が森に響き渡った。


 誰かが激しく戦っている。


 リリアは耳を澄ませる。


 先ほどのレオンの声が微かに聞こえる。


 怒声の中に恐怖が混じっていた。


 どうやら窮地に陥っているようだ。


 リリアは短く息を吐いた。


『仕方ないわね』


 彼女は麻袋を木の陰に隠す。


 音もなく駆け出した。


 森の奥へと進む。


 木々の間を滑るように走る。


 落ち葉を踏む音すらない。


 現場に到着した。


 太い木の枝に飛び乗る。


 眼下でレオンたちが魔物に囲まれていた。


 巨大な黒い猪の魔物だ。


 表面は硬い岩のような外殻で覆われている。


 レオンの剣は外殻に弾かれていた。


 剣を握る彼の手から血が流れている。


 仲間たちも地面に倒れ伏していた。


 レオンは荒い息を吐く。


 絶望の色が顔に浮かんでいた。


 魔物が前足を高く上げる。


 鋭い蹄がレオンに振り下ろされようとしていた。


 リリアは木の枝から跳躍する。


 重力を利用して急降下する。


 気配は消し去っていた。


 魔物は頭上の脅威に気づいていない。


 リリアの小さな足が魔物の首の関節に触れる。


 外殻の隙間にあるわずかな急所だ。


 彼女は落下の勢いを利用してそこを的確に蹴り抜いた。


 骨の砕ける鈍い音が響く。


 魔物は声も上げずにその場に崩れ落ちた。


 巨体が地面を揺らす。


 土煙が舞い上がった。


 レオンは呆然と目の前の光景を見つめていた。


 土煙が晴れる。


 そこには無表情な幼女が立っていた。


 リリアは服の土を軽く払う。


「大丈夫」


 レオンは言葉を失ったまま何度も瞬きを繰り返した。

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