表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の最強暗殺者、七歳の幼女に転生してスローライフを目指す~孤児院を脅かす悪党は裏でこっそり始末します~  作者: 黒崎 隼人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/15

番外編「剣士の背中と見えない守護者」

◇レオン視点



 冒険者ギルドの裏手にある訓練所だ。


 乾いた土埃が風に舞っている。


 俺は両手で重い両手剣を握りしめていた。


 上半身は汗で濡れている。


 革の胸当てが軋む音を立てていた。


 深く息を吸い込む。


 胸郭が大きく膨らんだ。


 腹の底から力を振り絞って剣を振り下ろす。


 空気を引き裂く鋭い音が響いた。


 剣先が地面すれすれでぴたりと止まる。


 腕の筋肉が悲鳴を上げていた。


 手のひらには新しい剣だこがいくつもできている。


 それでも俺は剣を振るう手を止めなかった。


 街が魔物の大群に襲われたあの日からだ。


 自分の無力さが骨の髄まで染み込んでいる。


 俺たちはただ門の前で足止めをすることしかできなかった。


 怒涛のように押し寄せる魔物の波に飲み込まれる寸前だった。


 だが突然魔物たちの動きが統率を失った。


 恐怖に駆られたように森の奥へ逃げ帰っていったのだ。


 後になって領主の館で黒幕の貴族が捕らえられたと聞いた。


 上位の魔族も館の中で消滅していたらしい。


 証拠の書類が丁寧に机に並べられていたという。


 王都の隠密部隊の仕業だと誰もが噂している。


 だが俺の直感は別の答えを示していた。


 脳裏に一人の幼女の姿が浮かぶ。


 深い森の奥で巨大な魔物の首の骨を砕いた少女だ。


 音もなく背後から降り立ち一撃で命を刈り取った。


 あの無表情で冷たい瞳を忘れることができない。


 彼女が街を救ったのだと俺は確信している。


 証拠はどこにもない。


 ただの冒険者の勘にすぎない。


 俺は剣の柄を握り直す。


 額の汗が目に入って視界がにじむ。


 目を細めて痛みを堪えた。


「レオン。まだやっているのか」


 背後から仲間の声がした。


 振り向くと盾使いのガルドが立っていた。


 彼は呆れたような顔をしている。


「少し休め。体が壊れるぞ」


 俺は剣を地面に突き立てた。


 荒い息を吐きながらガルドに向き直る。


「もう少しだけだ。俺はもっと強くならなきゃならないんだ」


 ガルドは肩をすくめる。


 木桶に入った水を差し出してきた。


「街は平和になったじゃないか。焦る必要はないさ」


 俺は水を受け取って一気に飲み干す。


 冷たい水が喉の奥を通り抜けていく。


 空になった木桶をガルドに返した。


 手の甲で口元の水を拭う。


「平和だからこそだ」


「この平和は誰かが無理をして守ってくれたものだ」


「俺はその重さを背負えるくらいに強くなりたい」


 俺の言葉にガルドは不思議そうな顔をした。


 彼には俺の言っている意味がわからないだろう。


 それでいい。


 彼女の秘密は俺の胸の奥底にだけしまっておく。


 孤児院の前を通るたびに彼女の姿を探してしまう。


 庭で子供たちと遊ぶ彼女はただの無邪気な幼女に見える。


 その小さな背中を見るたびに俺は胸が締め付けられるような思いになる。


 あんな小さな子供に街の命運を背負わせてしまったのだ。


 大人として冒険者として不甲斐ない自分が許せなかった。


 俺は再び剣を構える。


 重心を低く落とした。


 彼女のような人間離れした動きはできない。


 俺には俺の戦い方がある。


 表の世界で堂々と剣を振りこの街を守る盾となる。


 陰で街を守る見えない守護者が二度と手を汚さずに済むように。


 俺は雄叫びを上げて渾身の一撃を放った。


 土埃が激しく舞い上がる。


 剣先が空気を鋭く切り裂いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ