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伝説の最強暗殺者、七歳の幼女に転生してスローライフを目指す~孤児院を脅かす悪党は裏でこっそり始末します~  作者: 黒崎 隼人


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エピローグ「陽だまりの少女」

 柔らかな春の風が孤児院の中庭を吹き抜けていく。


 庭の隅にある大きな樫の木が新しい緑の葉をつけていた。


 木漏れ日が地面に優しい斑模様を描いている。


 小鳥たちが枝の上で高く澄んだ声で鳴いていた。


 リリアは樫の木の根元に座っている。


 古い木の幹に背中を預けた。


 ゴツゴツとした樹皮の感触が服越しに伝わってくる。


 彼女は両足を軽く伸ばして目を閉じた。


 太陽の熱がまぶたの裏をオレンジ色に染めている。


 風が髪を揺らすくすぐったい感覚があった。


 遠くから街のざわめきがかすかに聞こえてくる。


 馬車の車輪が石畳を転がる音だ。


 人々の笑い声や商人たちの活気ある呼び込みの声だ。


 平和な日常の音が彼女の耳を心地よく満たしていく。


 前世の記憶が遠い夢の彼方へ霞んでいくのを感じていた。


 血と硝煙の匂いしか知らなかった暗い過去だ。


 感情を殺し命令に従うだけの冷たい機械のような人生だった。


 誰かに愛されることも誰かを愛することもなかった。


 生きている実感など一度も抱いたことはない。


 ただ死ぬためだけに生きていたような日々だった。


 彼女はゆっくりと目を開ける。


 視界に広がるのは鮮やかな青い空だ。


 白い雲がゆっくりと流れていく。


 手のひらを太陽の方へ向けてみた。


 小さな子供の手だ。


 血管が透けて見えるほど白い肌をしている。


 だがこの手の中には確かな体温があった。


 心臓が力強く血液を全身に送り出している。


 血の通った温かな命の鼓動が、彼女の胸の奥底から静かに湧き上がってきた。


「リリア」


 春風に乗って、マリアの優しい声が耳に届く。


 リリアは首だけを動かして振り返る。


 玄関の前にマリアが立っていた。


 手には籠を持っている。


 市場へ買い物に行くのだろう。


 彼女の隣には数人の子供たちが手を繋いで並んでいた。


「一緒にお買い物に行かない」


 マリアが優しく微笑みかけてくる。


 リリアの唇が自然とほころんだ。


 胸の奥にあった硬い氷のような塊が溶けて消え去る。


「行くわ」


 リリアは幹に手をついて立ち上がる。


 服についた草を軽く払い落とした。


 彼女はマリアたちの待つ場所へ向かって歩き出す。


 足取りは羽のように軽い。


 足音を消すことも気配を殺すこともない。


 地面をしっかりと踏みしめて歩く。


 靴底が土を叩く確かな音が響いた。


 マリアがリリアに向かって手を差し出す。


 リリアはその温かい手を取り強く握り返した。


 マリアの体温が安心感をもたらしてくれる。


 子供たちが歓声を上げて駆け出した。


 孤児院の門を抜けて明るい街の通りへと出て行く。


 太陽の光が彼女たちの背中を眩しく照らしていた。


 闇の中で生きてきた暗殺者の魂はここでようやく救済されたのだ。


 彼女の歩む未来にはもう冷たい孤独はない。


 愛し合う家族と共に歩む穏やかな日々が始まろうとしている。


 リリアはもう一度空を見上げた。


 どこまでも高く澄み切った青空が、彼女の新しい人生を祝福しているように見えた。

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