表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推し恋  作者: たま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/18

警報音

警報音が朝の森に鳴り響く。鳥が一斉に羽ばたく。

琴子が振り返る。

「殺されたよ、琴子」笠原が苦しげな顔をしてる。

「……」うなづいて琴子がビブスからマスクを出した。笠原は着てきていない。が琴子は着てきた。

つまり、琴子はこの事態を想定してたのだ。

推しのキャラは熟知してる。

途中からう薄っすら、推しの考えが見えて来た。

『勝つためには、どんな見苦しい手も使う!』

それが琴子の推しなのだ。

琴子が笠原には詰められない事を。

詰めれば推薦した男が落ちてしまうのだから。

が、そのまま琴子は坂を登っていく。

「オイッ!お前は死んだって!」笠原が声を掛けるが琴子は手を振り前に進む。

このゲームのルールは守る。発言はしない。

が、行動に制限は無いのだ。

塔が見えて来た。中の人が不安そうにこちらを見ている。年配の男性だ。灯台を残す会が全国にあると昨夜携帯で知った。だいたいは定年後の男性達で構成され法人化して各行政から保全活動を請け負っているのだ。

琴子はポケットからホテルのメモ紙とペンを出す。

そう、部屋の備品を持ってきておいた。

そこに「ゲームの参加者です。中を見せてください。」と書く。

「もしかしたら来るかもしれないとは聞いてたよ。

その時は中を見せるように言われてるよ。」ビブスを見て観念したようだ。

笠原は灯台の前で琴子を見つめてる。その目には戸惑いと混乱があふれてる。

琴子はマスクの下でクスッと笑う。

「まだまだだな。これから鍛えないと!

デベロッパーハンターとして最強に!」推し活の醍醐味なのだ。推しやる女は、育成ゲームが大好きなのだ!

完成した男なんて、要らない。

自分が育てる余地と可能性が大好物なのだ!

灯台のテッペンの部屋は、やはり訳が分からない機械がそびえていた。ビブスの番号が振られている。

サッパリ分からないが写真を撮る。

「琴子ちゃんの言うとおりやな。これが大元や。」背後から太一の声がした。

「デートの邪魔かと思ったけど、面白そうやから付いてきてしもたわあ〜ごめんな〜」とはんなり笑う。

「これがwifiルーターかぁ〜デカくない?」保坂の声もする。「俺らの勝ちかあ〜ビクトリー!」と隆史が声を出す。嬉しそうだ。

「合格したの?やった!」恭弥がマッチョポーズをする。


ホテルに戻ると、やっと目を覚ましたプロデューサーやスタッフがロビーに降りてきていた。

皆起き抜けなのか?頭が鳥の巣だ。

「犯人役を見つけました。ゲームを終了してください。」太一がプロデューサーに告げる。

笠原と琴子が前に出る。笠原のズボンのポケットに手を入れてリモコンキーを出す。

プロデューサーは、?とサッパリ分かってないようでディレクターとカメラマンがそれを受け取りうなづく。

琴子は黙ったまま携帯で写した機械を見せる。

「灯台に良く入れたね。バリケードしてたのに。タクシーの運転手さんにも行かせるなと言っておいたのに。」ディレクターとカメラマンが笑う。

さすが琴子の元推しだ。

自分達と良く話す機会があるプロデューサーにはほとんど情報与えていなかった。代わりに話す機会が少ないスタッフが全体を把握していた。

琴子は、推しが配信者以外何者か?なんとなく予測してる。軍師だ。

平和な世の中で軍師と言っても自衛隊ではない。囲碁・将棋チェスの棋士だ。元々囲碁・将棋チェスは、戦略を立てる為に発達した遊びなのだ。

推しは常に勝つために思考する。

その場で勝つには何が必要で何が要らないか?省くのは羞恥心、磨くのは言葉の刃。

学生にも社会人にも、全く要らない感覚だ。

これが研ぎ澄まされるのは、棋士のみだ。

この世で最もペット化されてるのは、人間だと言われている。

つまりペット化する事が、生きる戦略なのだ。

それを棄てて群れの中で際立つ!

その姿勢は現代の騎士。いや棋士なのだ。

小さい頃から三国志大好き!愛読書は兵法!錦糸町のジジイ達の中でじゃりン子チエみたいに生きてきた琴子にはハマる男だったのだ。何より美形だ。

本物の人間がどうにも美形に見えない琴子には2次元キャラが馴染んだ。

なのに!

なのに!

また、琴子は涙が溢れそうになる。

笠原はまだまだ戦う姿勢が足りない。バイトリーダーやって来た男なので協調性のあるちゃんと人間なのだ。

素地と経験値は高い!もしかすると推しよりも…

育て甲斐がある!震える!


「もうマスク取っていいよ。琴子さん。」ディレクターが声を掛ける。

「犯人役お疲れ様でした。大変だったでしょう、笠原君。」ディレクターが笠原をねぎらう。プロデューサーはポカンとしてる。まだ酒臭い!

「全員合格です。と言うか君等はすぐデビューが決まってる先鋭です。撮影したものは、デビュー回として動画配信するよ。

太一君、保坂くん、隆史くん、恭弥くんは正義の味方だ。戦隊だから。そして笠原くんは適役ダークヒーローだ。

昔風に言うとハカイダーだね。おめでとう!」ディレクターが、まだボケっとしてるプロデューサーと一緒に拍手する。

笠原が驚いている。琴子とスタッフや正義の味方達やら皆をキョロキョロ見てる。配信世界を全然知らない笠原には驚きの連続なのだ。

ここはエンタメの世界なのだ。


「あの…このマスクは、元々死んだ設定のためじゃないですよね?

ある人を守る為…でしょ?音声さんもマスク外しましょうよ?ねっ?」琴子がミザリーみたいに笑う。

やはり書くのは気持ちが落ち着く。絵を描くのも不眠症治ったし。

気持ちが切り替わってきた。

ほぼ失恋の回復方法と同じなんだろな〜

失恋したことないが。

生身の人に滅多に惚れないから。

だって皆必死で生きてるんだもん。

人の事まで余裕ないよ、生身の人は。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ