デート?
朝ロビーにはほとんど人はいない。琴子が待ってると笠原がフラフラとやって来た。
「ごめん!ほとんど寝てない…スタッフが飲めや歌えやで巻き込まれたよ。」ソファにグッタリと突っ伏す。
「いいよ〜私1人で行くから。休んどきな。」琴子が遠慮したが、ふらつきながら笠原が付いてくる。
「…なんでタクシー呼ばないの?錠前さん。」ホテル裏の坂道をズンズンと登っていく琴子の後ろをヘロヘロと笠原が付いてくる。
「朝から申し訳ないよ〜と言うか、あの人が居たら邪魔なんだよ。多分あの人は連れて行かないように言い含められている。と思ってる。」琴子はさらにズンズンと山を登る。
「…ねえ、どこに行くの?」笠原が土気色の顔で聞く。
「灯台だよ。」琴子が後ろを振り返らず言う。
「閉鎖されてたんだろ?昨日、言ってたじゃん!」笠原が驚いている。
「確かに灯台 直の外線電話は繋がらないけどね…9時になったら電話するよ。」と言いながら登っていく。が、前に工事用のガードフェンスが土嚢に繋がれて道をふさいでいる。
「チッ、ホテル側からの道もふさがれてるかあ〜
外周道路からと同じか!」琴子は携帯を出す。時間は9時回っている。
「ほら、やっぱり本当に緊急の休みだとネットにも表示されない事も
あるし。って、なにをするんだ!」笠原が慌てる。
なんと琴子が土嚢ごとフェンスをどけだしたのだ。
「コラッ!怒られるぞ!そんな事したら!」思わず笠原がたしなめる。
「誰が怒るの?熱海の市役所?じゃあ、聞いてみようよ。」琴子が携帯で熱海市役所に電話を掛ける。
「すみません。初島の灯台へ行きたいんですが、電話が通じなくて〜」と可愛い声で聞く。
「はい、はい、そうです。外線電話が不通になってて確認できないんです〜
エッ、良いですか?聞いていただけますか?」と携帯から心地よい音楽が流れる。
琴子が、電話をオープンにする。
「お待たせしました。今日、灯台はやっております。
どうぞ、お越し下さい〜」と市役所の女性の声が辺りに響く。琴子は電話を切る。
「どういう事?」笠原がたずねる。
「つまり、市役所から内線電話は繋がってるんだよ。
灯台は現代は法人に任されてる所が多いの。半分個人みたいな組織だよ。だから、それなりに繋がりがある人に頼まれたら断れないんだよ。」とフェンスをどけて道を登っていく。
「推しも往生際が悪いけど、ファンも往生際が悪い奴らが集まってるの。
その上!私の推しは小賢しいの!生意気なの!
こんな小細工しやがって!クソーーーーッ!楽しいぜ!」高笑いしながら琴子が坂を登っていく。




