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〈連載中〉飛竜落とし姫は振り向かない ~戦う聖女は騎士団所属~  作者: 米野雪子


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解除と脱出




パキンッ、パキッ‼︎ ジャラジャラジャラ…



繋いでいる鎖の先にある、南京錠の鍵に神聖力を狙い撃ちして粉々に壊し、

トウジとアキラの契約魔法を一瞬で解除した。

今まで彼らの首に巻きついていた鎖も、バラバラと崩れ消えいった。

そして、魔力封じの手枷も砕いて、ブン投げる。



「な、何だ!この光はっ‼︎」


「解除した‼︎ 」


「えっ、もう?姫さんマジ?」


「あっ、本当に奴隷紋消えてる!消えてるぞ、トウジ!」


「よし、もう自由だ!飛ぶぞ‼︎ 二人とも掴まれ!」


「ま、待て!」



魔術師が狼狽しながら腕を伸ばし、新たな契約魔法をトウジに放つ。

鎖は真っ直ぐトウジめがけて首に届き、グルグルと巻きついた。



ジャラジャラッ、ジャリンッ、ガシャン!



「あーうっぜえ、また首に奴隷紋の鎖が巻きついて来やがった!

 姫さん、再解除頼むわ!」


「分かった、すぐ解除する!えーと…もー鎖多すぎっ!

 …あっ、鍵……みっけっ!…」


「何が起こっている?おい、副師団長!何やってる!」


「そ、それがっ…あのっ…」


「おい、トウジ!待て!この恩知らずがっ!」


「はあ?恩なんて一度も感じたことねーわ!バ────カッ‼︎」


「逃げられると思っているのか?ガレリアに行ってもお前たちは敵だ!

 ここから逃げても、どうせ殺される運命なんだぞ!」


「それは、ここにいても同じだろ。

 俺たちがどうしようが、テメーにゃ関係ねぇだろ!うっせーな‼︎」


「この国以外で生きていけると思っているのか!」


「解除完了っ!行こう!」


「了解、流石姫さん!あばよ、ゴミ野郎共!」




シュンッ‼︎




「トウジ‼︎」



トウジとアキラ、そして聖女は、転移魔法で姿を消した。

訳が分からず、その場で茫然とするレガリアの大将と魔術師達。



「おい、何だ?何が起こっている?何で逃げられた!

 神殺しと魔力封じが効いてないのか?

 なぜ、あの二人まで契約解除された?」


「魔力封じは…あの娘は魔力量が膨大で…効いていなかったようで…

 神殺しの効力も同じ理由で…既に切れていたようです…

 トウジとアキラの…契約魔法は…神聖力で…あの娘に2度、

 解除されま…した…」


「は?」


「一瞬で……申し訳、ありません…間に、合いませんでした…」


「国王陛下、申し訳ありま…」


()()を放て』


「は?…で、ですが、この国の民も犠牲になりますが…」


『それが何だ?いいから放て。絶対に逃すな。手に入らぬなら殺せ』


「はっ」




一瞬、この目が信じられなかった。

なぜ、あんなにも似ている。


キヌ…


私の心を捕らえて離さない、誰より恋い焦がれ、愛執し、

その美しい喜びを知った後、私の心を深淵へ突き落とした。


狂おしい愛憎を抱かせた、聖女キヌ。


消さねば…そうしなければ…



私 は ────────── …




* * * * * * *




「はっはー!姫さん、あんた最高だぜ!」


「一瞬だったな…」


「でも、冷や冷やしたな~…

 一国の王様にああもズケズケ言うとは、いい度胸してんな」


「だって、ムカついたんだもん。全然要領得ない事ばっか言って。

 これでも我慢したんだよ?」


「はははっ。さて、後は逃げるだけか…帰りはルート少し変えた方がいいな」


「行きのルートは最短だったけど、あの大将にバレてるからね。

 多分、追手を放ってるだろうし…」


「え?でも人間と馬じゃ、トウジさんの転移に追いつけないでしょ?」


「魔獣飼ってんだよ、あいつら。地下牢にたんまり」


「あ〜、そっちかぁ…」


「徒歩も入れて、少しでも移動した方がいい」


「ああ、そうだ。学校の図書館寄って行くわ」


「え、何で?」


「ほら、伝説の童話の本、あとこっちの義務教育で使ってる教科書が

 あった方がレガリアの教育方針が分かるし、いい土産になると思うぜ?」


「なるほど。近いの?」


「向かう方向に1校だけある」



こうして、トウジさんが転移で本もあっさり手に入れて、

私達はその後も、転移を繰り返しガレリアに向かった。

そして、途中で小さな村の宿に宿泊して、

明日にはガレリアに入国できる予定だった。



「…俺たち、本当にもう自由なんだな」


「姫さんを信じたのは間違ってなかった。だろ?アキラ」


「ああ…」



疲れて寝息を立てているサトミをじっと見つめ、微笑む兄弟。

3つの衛星が浮かんでいる夜は、不気味なほど静かだった。




* * * * * * *




「父上、サトミ様が帰ってきます!」


「…ん?」


「夢にサトミ様が出てきました。男性2名を連れ立って!」


「もしかして…予知夢を見たのか?」


「はい!」


「お前の願望ではないのか?間違いないか?」


「間違いありません。そうであればいいとは思っていましたが、

 赤毛の男性と茶髪の男性二人を連れて、北東方面から帰国されます。

 でも、追手がかかった状態で危ういので、北の精鋭部隊に待機して

 貰った方がいいと思います」


「赤毛の男?まさか…そうか。北東だな?」


「はいっ!」


「分かった。どれ位で戻るか分かるか?」


「多分、明日の午前中だと…予知夢で父上が報告を受けたのが、

 定例会議中でしたから」


「なるほど…、よし、迎えを待機させよう。よくやったセラデュード」


「はいっ!」



第三王子のセラデュードは、時折予知夢を見る。

他には、火と風の2属性の魔法を持ち、兄妹の中では一番魔力量が膨大だった。


こうして、北の精鋭部隊は、早朝より北東の国境付近に待機して

サトミ達を待つことになった。




* * * * * * *




「ふぁ~、おはよー」


「ああ、姫さん、おはよう」


「簡単な朝食買ってきたから、それ食べたら早めに出発しよう」



私たちは、味気ないパサパサのパンと豆のスープを腹に入れ、宿を後にした。

そして、再び深い森に入ろうとした時、

村の方から、物凄い轟音と悲鳴が聞こえてくる。



「な、何?」


「なんだ、追っ手か?」


「早く行こう、トウジ、サトミさん!」



そして、大きな黒い物がズルリと姿を表した。

真っ暗な巨大な大蛇。

赤く光る瞳で見やり、大きな口を開けて家を破壊し、

人々を襲っている。



「うわっ、キモッイ‼︎」


「くそっ、見つかったか…行くぞ!」


「ねえ、村の人たちまで襲ってない?」


「魔獣にそんな配慮できねーよ。それ分かって放ってるんだ、アイツらは」


「酷い…」


「こっちに引き付けてから飛ぶか。そうすりゃ、この村からも離れるだろ」


「うん、神聖力使っていい?」


「ああ、その後すぐ飛ぶぞ。多分次の追手が来るから、倒してる暇はない。

 姫さん、この先のこと考えて、魔力温存しておいてくれよ?」



そして、私は神聖力をその大蛇に放った。

光の柱がその大蛇を貫き断末魔の咆哮をあげて、大蛇は一度消滅した…

かと思いきや、なんと口の中から再び大蛇が飛び出して、姿を表したのだ。



「ぎゃーっ!どうなってんの⁉︎ 新しいの出てきたっ!」


「あー、こういうタイプか。何回まで有効か分かんねーけど、

 逃げるが勝ちだな。もういいだろ、標的がこっちに移った」


「やだー、マトリョーシカみたい‼︎」


「は?何それ?」


「えーと、ロシアの有名な民芸品で、中からひと回り小さな人形が、

 次々繰り返し出てくる入れ子‼︎ でもコイツは、そんな可愛い物じゃない!」


「なんだそりゃ、ははははっ!」


「ちょ、笑ってる場合じゃないって、トウジ!追いつかれる!」


「はいはい、今飛ぶって!」



黒い体をウネウネさせて追いかけてくる様は、まさに悪夢だった。

蛇嫌いの人は、一瞬で失神する気持ち悪さだろう。

私たちは充分に引き付けて、転移魔法でその場を離れた。

村人たちが心配だったが、こちらも余裕がない。



「後、どれ位~?」


「結構、徒歩でも稼いだからな、俺は多分後50km飛べる」


「もう少し歩いた方がいいな…」


「今飛べば、多分ガレリアの国境近くには行けそうだが…」


「ルート変更しただろ?」


「あ~、そっか…」


「何なの、あの気持ち悪い魔獣…」


「キメラ作ったんだろ」


「え…複合体ってこと?」


「ああ…気色悪いこと平気でやるからな、アイツら」


「……………」



ガレリアとは魔法の使い方が全然違う…

本当に隠と陽のような、対照的な隣国だ。


それに、国の名前もガレリアとレガリアで似過ぎている。

この2国間の諍いも、聖女の文献と共に調べてみよう。


道なき森の中を3人で歩き続け、最後の転移をした。



「あ~、やっぱ届かなかったか…」


「でも、もう目の前だよ。後200mくらいで国境だ。

 充分歩いていける」


「もう大丈夫だと思うが、急いだ方がいい」



もう国境は目前だった。

良かった…逃げ切れたみた…




ドッ、オオオォォォォォ────ォオン‼︎




突然、轟音と共に、目の前に黒い塊が落ちてきた。

あの巨大な大蛇だ。



「なん、でっ…転移してきた?嘘でしょ⁉︎」


「ああ…くそっ、俺の転移魔法も魔石に付与されてんのが腐る程ある。

 多分、それを使ってやがる」


「あと、少しの所で…」


「引き返せっ!…おっと…やべーな、こりゃ…」


「やだっ!何で増えてるのっ?」



後ろを振り返ると、もう一匹いたのだ。中から出てきたのだろうか…

そして、大きく口を開けてもう一匹ずるりと出てきた。

気がつくと私達は、この三匹の大蛇にグルリと囲われている。



「私が、神聖力放つから…」


「駄目だ。さっき見ただろ。神聖力は、継続的な速さに弱い。

 すぐに別のが出てきて、食い付かれるぞ」


「でもっ、他に方法がないじゃない!」


「あんたをよっぽど、逃したくないんだろなぁ…」



トウジは、はあ、とため息を吐き項垂れる。

そして、ボソリと呟いた。



「あ~…最悪。せっかく、自由になれたってのによぉ~…」


「……え、何?」


「いいか、良く聞け。

 転移魔法は枯渇したが、風魔法はまだ少し使える。

 俺が国境側の一匹を吹っ飛ばす。その間に走って国境を越えろ。

 ガレリアに行けば、姫さんの結界でコイツら魔獣は通れない。

 この先200mだ。足場悪いが全速力で走れ。コケるなよ?」


「え?…ちょっと、待って‼︎ 何するつもりなの?」


「蛇は俺が引きつける。…アキラ、姫さんのこと頼むわ」


「トウジ…」



トウジは、くるりと踵を返して後ろに向き直り、

手を前に掲げた。





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