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〈連載中〉飛竜落とし姫は振り向かない ~戦う聖女は騎士団所属~  作者: 米野雪子


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登城と二人の王子




「う~…グレンさんめぇ…」



昨日喧嘩の後、拗ねる私にグレンさんがコチョコチョ攻撃をしてきて、

笑いすぎて横腹が吊ったのだ。まだ痛いし。


ノロノロと起き上がり、部屋着に着替える。


エリカさんは、特別休暇を先に取って実家に帰って不在。

変わりの侍女は、私がいらないと断ったから誰も手伝いはいない。

まあ、豪奢なドレスの着付け以外、他は自分一人で出来るし。


グレンさん達、今頃は提出する報告書をチェックしてる最中かな。


遠征帰りの荷物の整理でもするか…

ゴソゴソと洗う着替えや、お土産を床に広げる。

長い半年間の浄化遠征だったが、色んな村も見れたし、

そして、知らないことも沢山知れた。


視野が広がったし、楽しかったなぁ…


長剣と弓矢を壁の武器フックに掛けようとして、ふと思い出す。



あの襲撃者…



強かったけど、心からの敵意が無かった。

だから、殺せなかった。

むしろ、私と会話をしたい感じだったし…


マッシュルームオニオンチーズサンド渡した時なんて、

私一人だったから、殺そうと思えば出来たはず。

それに、命令でやらされてる感があって本当の敵って感じがしない。



稀人の血筋…



本当なのか確かめる為に、話してみたいけど、

多分、グレンさん他皆んなは反対するだろうし。


でも、彼はまた絶対接触してくるだろう。

その時どうするか、考えておかないと…




* * * * * * *




そして、片付けやら、報告書作成やらで、

あっという間に一週間。今日は登城の日だった。



「半年間の土地浄化の遠征、大儀であった。

 御主たちからの評判は王宮にも届いておったぞ。

 礼の品々が、多数こちらに届いておる。

 欲しいものがあれば、好きなだけ持って帰るといい」


「勿体ないお言葉、光栄に存じます」


「サトミ殿、慣れぬ野営で大変であったであろう」


「いいえ、皆守ってくれましたし、野営も楽しかったです」


「はははは、そうか。逞しくて何よりだ。

 そなたの働きで、救われた人々が沢山いる。私からも礼を言う」


「ありがとうございます。お役に立てて光栄です」


「して、最後の夜は大変であったな。襲撃されたと聞いたが…

 皆、無事で何よりだ」


「はい、それについては報告書をまとめております。

 陛下、こちらを…」



じっと、報告書を見る国王陛下。

また、説教されるのかな…


しばらく何も言わずに目を通していたが、

ため息を吐いて、テーブルに報告書をおく。



「隣国だな…」


「失礼ですが、なぜそう断言されるのです?」


「この、赤毛の男だ」


「知っているのですか?」


「有名な諜報員だ。主に暗殺を請け負っている。

 いつもフードをかぶっているが、派手な見た目だから、

 少しでも目撃されると印象に残りやすい。

 サトミ殿が対峙して足止めしたから、今回騎士団は無事だったが、

 この男は相当の手練れだ。周辺国でも、王族が此奴に暗殺されている。

 逃げ足が早く痕跡を残さないから、目撃者はあれど…

 今まで一度も捕まっていないのだ。しかし、魔力保持者とは厄介な…」


「あの襲撃は、重要人物の暗殺が目的だったって事ですが?

 今回の遠征のメンバーで、地位的に考えると、

 ステラ師団長か、セオドア様ですか?あ、まさか私じゃないですよね?」


「それはまだ調査中で不明なのです。サトミ様」


「あ、そうなんですね。失礼しました。セオドア様」


「しかも、稀人の血筋だと言ったとか…」


「本人が自称しているだけなので確証はなく、嘘の可能性はあります。

 ただ単に、サトミ様の気を逸らすための言葉だったのかもしれません」


「実際向き合った、サトミ殿はどう思った?」


「……私ですか?…そうですね。

 もし嘘を言うなら、自分が稀人だと言った方が相手は動揺すると考えます。

 でも、わざわざ血筋だと言ったのが…少し気になりますね。

 私と、話をしたがっている風にも感じました」


「なるほど…確かにそうだな…」


「多分また、何らかの形で接触してくると思います。

 その時に、捕らえるチャンスがあるかもしれませんが…」


「うむ…私もそう思う。護衛を増やして警戒はするが…」


「サトミさんは、顔を覚えていますよね?」


「はい、ステラ様。今度接触してきたら、話を引き伸ばしてみます」


「では、よほどの事がない限り大丈夫でしょう。

 彼女は拒絶の結界がありますし、あまり厳戒態勢を強くすると、

 接触しにくくなります」


「待ってください。サトミを囮に使う気ですか⁉︎」


「囮などと…落ち着いてください、グレン団長」


「サトミに諜報員と接触させる気ですか?暗殺者ですよ?

 国の重要保護対象者としておきながら、彼女を積極的に危険に晒している

 ではないですか!」


「グ、グレンさん、私は魔力も強いし、大丈夫だから…」


「君もお人好しすぎる!その優しさにつけ込まれて、

 利用されているのが分からないのか?

 自分の事をもっと大事にしろ!いくら魔力が強くても、君は不死身じゃない。

 隙をつかれて刺されたりすれば、簡単に死ぬ人間なんだぞ」


「彼の怒りは最もだ。返す言葉もない。

 確かに、サトミ殿に我々は頼りすぎている。

 そなたは、普通の生活を望んでいるにも関わらずな…

 だが、聖女の力は特別だ。

 様々な者達が、引きつけられて接触してくるのは避けられない。

 今後もそれはあるだろう。

 それも踏まえて、彼女に危険が及ばないよう考えていきたいのだ。

 どうか怒りを収めてくれぬか…グレン団長殿」



寡黙なグレンさんがこんな人前で、

しかも国王陛下の前で怒りをあらわに声を荒げているのを

初めて見て驚くと共に、不敬罪で捕縛されるんじゃないかと

私は内心焦っていた。


でも、私を心配して怒っているのも分かるから、正直嬉しいのも事実。

しかし…国を担う国王陛下の言うことも、理解できるのだ。


彼の手を取り、私は口を開く。



「私のことは、グレンさんが守ってくれるんでしょ?」


「それは勿論だ。だけど、限界がある。

 危険なものから守る範囲が広がれば、いずれどこかに穴ができて、

 君が危険にさらされる事になるだろう?」


「うん…分かってる。ごめんなさい…

 でも私は、意に反して聖女の力を持ってしまったの。

 不本意だけど、これは沢山の人を救って守れる魔力だから、

 それを役立てたいと考えるのは、許して欲しい。

 でも、私もグレンさんが言った通り、魔力以外は皆んなと同じ人間だから、

 全ての要求を受けるつもりもないし、嫌だったり無理そうな物は断るし、

 グレンさんにも、絶対相談する」


「……サトミ…」


「私は、絶対グレンさんの元に帰るから、それだけは信じて欲しい。

 私の為に怒ってくれて、心配してくれてありがとう」


「……一つだけ、約束していだけませんか?国王陛下」


「うむ、構わん。言ってみよ」


「聖女としての仕事以外は、やるかどうかは、サトミが決めます。

 彼女の意見を尊重すると約束してください」


「勿論だ。無理強いはしない。それは最初の規約と変わらん。

 ステラ師団長殿、セオドア文官殿もよろしいな?

 サトミ殿が忠実で優しいからと言って、調子に乗るでないぞ?」


「承知しております。国王陛下」


「勿論です。まあ、その前にグレン団長の関所で止められますからね」


「申し訳ありません。陛下、皆様、お騒がせしました」


「良い良い、愛する女性を守りたいと思うのは当然だ。

 さて、報告はこれくらいにして晩餐にしようではないか。

 その後に、献上された礼の品を見て、気に入った物を持ち帰るといい」




* * * * * * *




「………初めまして、サトミです」


晩餐の食卓の別室に入ると、知らない若い男の子2人。

第二王子ウィルアルド殿下、第三王子セラデュード殿下だった。


無表情と無言で、国王陛下へクルリと顔を向け

何これ?と半目で凝視する私に、陛下は目を逸らしながら、

面通しだと必死に言い訳をしていた。


せめて、前もって言ってくれないだろうか。

まあ、拒否するのを分かっていたから、

こんな騙し討ちみたいな事したんだろうけど。

さっきの件で、怒りの矛先を収めたグレンさんにも、

更に火に油を注ぐような事をよくやるわ。さすが王族。


当の二人は、ニコニコと穏やかな笑顔で挨拶してくれたが、

多分、こっちの事情は知らないのだろう。


第一王子のヴァニタリス殿下より、二人とも随分年下で、

第二王子は、私より少し年下位で青年ぽいが、

第三王子に至ってはまだ子供だ。

大きなナイフとフォークを小さいながらに、綺麗な仕草で食事をしていた。


二人とも、美しい金髪碧眼。

第二王子は、中性的な顔立ちで、少しウェーブした髪を切りそろえて、

ボブみたいなヘアスタイル。

第三王子は、目がくりくりの幼い顔で、クルクルの巻き毛で

絵画に出てくる天使みたいだった。


この二人は悪くない。

でも、この強引な面通しは納得がいかない。


私は、コルセットのせいもあるが、途中で食欲がなくなり、

ほとんど手を付けない状態で下げて貰った。

やっぱり、こういうのは嫌だったし、どうにも不愉快な感情を消化しきれない。


グレンさんに至っては、抗議の姿勢なのか一切手をつけず、

水しか飲んでいない。

そして、必要最低限の相槌しか打たないし、あれは怒りが再燃している。


ステラ師団長とセオドア様は、

場慣れしている貴族らしく、すました顔して黙々と食べていた。



「口に合わなかったかな?ははははっ。

 宮廷料理は高級素材を使っておるが、伝統の味付けがイマイチだからな。

 まあ、サトミ殿の美味い料理には叶わなんからなぁ」


「…いいえ、美味しかったです。

 食欲がなくて、ほとんど残してしまい、無作法で申し訳ありません」



まあ、あんたの騙し討ちのせいだけどね?



「そういえば、騎士団食堂の料理が、美味しくて羨ましいって、

 ヴァニタリス兄上が言ってました。

 いいなぁ、僕も今度食べに行きたいです」



目をキラキラさせて、第三王子セラデュード殿下が無邪気に笑う。

あーあ、王子様じゃなかったらなぁ。

弟みたいで可愛いし、仲良くできそうなのに。


最後に出てきたデザート、プリンみたいな多分ババロアを食べてみた。

うえ…おいしくない。なんか味しないし生臭い。

付け合わせのベリーは、美味しいけど…


嘘…王宮でこれ?

いや、私の舌が肥えすぎなのか。

第二王子がこっちの様子に薄々気がついたのか、声をかけてくる。



「遠征帰りでお疲れの所に申し訳ありません。サトミ様。

 父上が無理を言っていませんでしょうか?」


「…あ…ハイ。ダイジョウブ デス」


「父上…サトミ様が片言で、空気読んで何も言いませんけど、

 もしかして、今日の面通しは相談なしに強引に決めたのですか?」


「そ、そんな事はないぞ?ウィルアルド。前もって言い忘れてはいたが…」


「父上?それワザとですよね?

 そういう事をなさると、尚更嫌われるって分かってます?」


「仕方ないではないか。サトミ殿は王族が苦手だと言うから、

 正直に言えば、断られるであろう?」


「断られるからと、騙して対面させる方のが拗れるのではないですか?

 ただでさえ、王族との謁見など恐縮してしまうのに…

 そんな事されたら、私なら不信感で一杯になります」


「面通しの件は今後のため、了解は得ていたぞ?

 ただ今日とは、言っていなかっただけで…」


「サトミ様は、臣下といえど聖女の称号をお持ちの方です。

 たとえ国王だとしても、対等な御身分のはずでは?

 権力を笠に来て、昔の王族みたいな強引な事をするなど…

 我々が嫌われたら…父上のせいですよ」


「ええっ⁉︎ 父上、僕、聖女様に嫌われたくないですっ…」


「い、いや、そんなつもりはない。…ただ……

 ………その…悪かった」



王子二人に、詰められてタジタジの国王陛下を見て、

少しは溜飲が下る思いだった。


あれ?この二人の王子は、話が分かる子たちなのでは?

私はてっきり、子供とはいえ王族だし、

あの第一王子みたいな感じかと警戒していたのだが。



「サトミ殿、グレン団長殿、ステラ師団長殿、セオドア文官殿も…

 こんな騙し討ちのように面通しさせて…悪かった。謝罪する」


「…必要最低限の臣下としての役目は果たします。

 ですが、今後このような事は辞めていただけますか?

 身分を偽って、私に対面してきた第一王子同様、信用できません」


「う、うむ。あい分かった。二人の王子にも申し訳なかった…」


「言質はとりました。ここにいる6人が証人です。

 いいですね?父上?」


「…うむ、見事だウィルアルド。お主、為政者向きだぞ?」


「さて、何のことでしょう?」



ハハーン、国王陛下は次期国王は第二王子になって欲しいんだな。

本人は嫌がってるっぽいけど。



「食事も済みましたし、献上品をご覧になるんですよね?

 私がご案内します」


「僕もご一緒します!」


「いや、私が案内をするぞ?」


「父上はこの後、定例会議があるのでは?」


「分かった、わかった。後は王子二人に任せる。

 サトミ殿、グレン団長殿、他二人も気に入った物は、持ち帰るといい。

 私はもう顔出し出来んでな、申し訳ないが見送りも二人に任せる。

 今回の浄化遠征、誠に大儀であった。

 報酬は後日セオドア文官を通して、騎士塔に送られる。

 では、来月の表彰式と遠征祝賀会でまた会おう」



国王陛下とはここで別れ、また別部屋に移動する。

移動する道中、王子たちの護衛騎士や侍従らしき人がゾロゾロついてくる。

うわー、移動するだけで大名行列みたいな仰々しいさ。


私の横でキラキラした瞳を向けてくる、第三王子の可愛さに

やられそうになりながら、献上品の数々が、丁寧にズラッと並べられた

部屋に案内された。




* * * * * * *




「え、何この量…」


「これは、凄いですね。全部目を通していたら何日かかるか…」


「一部魔力を感じますね…どれどれ…」


「さっさと見て帰ろう、サトミ」


「う、うん」


「うわ~凄い。宝石とかいっぱい!」


「こらこら、彼等に優先権があるんだ。セラデュード控えなさい」



あのグレンさんに、横恋慕していた領主様の娘さんの香り袋が、

また紛れていたと、ステラ様が、イライラしながら無効化して始末していた。

国王陛下の献上品にまで、紛らわせてくるなんて…

早々に処分が必要だとセオドア様もご立腹だし、

何だか空気が悪くなってしまった。

しかし、凄い執念だなぁ。

その匂い袋が万が一、私かグレンさんの手に渡る可能性に、かけたという訳か。


私は、主に特産品の食材を中心に、干し肉やハムやソーセージ、野菜、

苗を貰って帰った。

騎士塔の周りで、今作っている畑で育ててみたいし、

新しい食材で料理もしてみたい。



「サトミ様は、それだけでいいのですか?

 こっちには宝石やアクセサリー、美しい高級な布もありますが…」


「ええ。これだけで十分です。遠征先でお土産も沢山買いましたし、

 あとは騎士塔の皆に食べさせたくて、試しに育ててみたいんです」


「…サトミ様、これなんてどうでしょうか?お似合いになると思いますが…」



第二王子のウィルアルド様がおずおずと、

ネックレスとイヤリングのセットを差し出す。

あ、グレンさんの瞳と似たような色のアイスシルバーの宝石だ…綺麗…



「貰っておいたら?サトミ。王子殿下の言うとおり、君に似合いそうだ」


「う、うん。確かに素敵ですね。ありがとうございます。ウィルアルド殿下。

 いただいていきます」


「良かった。では、どうぞ」


「特に欲しい物は、ありませんねー。匂い袋の排除は出来て良かったです」


「私はこの上等な万年筆を仕事で、使わせていただきます」


「グレンさんは?」


「ああ、いらない。サトミ、俺が持とう。保存魔法もかけるから」


「う、うん。ありがとう」


「皆さん、欲がありませんねぇ。ふふっ」


「兄上!僕これ欲しいです!」


「こら、それはワインだ。お前はまだ飲めないだろう?」


「ボトルの青い色が美しいですし、ラベルのデザインが素晴らしいです!

 飲める年齢になるまで、部屋に飾っておきます!」



ああ可愛い…頭を撫でくり回したい。

お許しが出て、ワインボトルを大事そうに抱きしめる。

そのワインは、あの追放村の名産品だった。

この第三王子は、なかなかお目が高い。


まだ王族らしくない、王子二人ににこやかに見送られ、

別れ際に可愛い第三王子に懇願され、

今度塔城する際は、サンドウィッチとお菓子を持参する約束をした。


ステラ師団長は魔法塔に一旦戻り、

セオドア文官は、王宮で遠征の報告の仕事がまだあって残り、

私とグレンさんのみ騎士塔に戻った。

まだ表彰式と祝賀会があるが、

一旦、明日から一週間の休暇に入れるのだ。





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