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〈連載中〉飛竜落とし姫は振り向かない ~戦う聖女は騎士団所属~  作者: 米野雪子


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野営と謝罪




「もうすっかり野営も慣れましたねぇ…」


「うん。外でご飯食べるのもいいね。騎士塔でも、たまにやろうか?」


「いいですねっ!楽しそうですぅ」



「……この辺…盗賊……出るん…け…」


「そうそう…見回りの範囲…広げた方が…」



…ん?何だか物騒な会話が聞こえてきた。

後ろの方で見回り中の騎士さん達が歩きながら話していた内容…

“盗賊?” 私が黙ったのをみて、エリカさんが察して口を開く。



「大丈夫ですよぉ。盗賊も北の辺境の精鋭部隊に、

 挑むほどアホじゃないでしょう」


「でも、いるんだよね?」


「そうですねぇ。この辺の国境近くの村はずれは、森が姿を隠してくれますし、

 ならず者が、自然に流れてくるんですよぉ。

 犯罪を犯して村に居づらくて、はぐれ者になって、いつしか似たもの同士で、

 グループが出来てしまうそうです。最近は、見ていないはずですが…」


「そう、なんだ…」


「犯罪を犯した者達の刑期満了で出所後の生活支援を国が色々保証して

 くれるので、昔より少なくなったんですよぉ。

 仕事の斡旋や住居など、それは、もう手厚いんです。

 でも、手を差し伸べても…社会に適応できずに、それを受け入れない

 人もいるようで、そういう方達が、こういう生き方を選択してしまうん

 でしょうねぇ…」


「支援って、被害者遺族とかと、顔を合わせないのは含まれてる?」


「はい、勿論です。お互い顔を合わせない方が精神衛生上良いでしょうし、

 他の離れた村に移住させるそうです」



追放村といい、加害者にも配慮している点は随分成熟した制度を

取り入れている。少なくとも隣国と違って、この国は常に正しくあろうと

している。国王陛下ちゃんとしてるなぁ。

面倒くさい権力者だからって、あんまり毛嫌いしちゃいけないか…



「サトミさーん!今日の夕飯何~?」


「今日のメインはハンバーグだよ、アレンくん」


「やったー♪見回りしてくるねー!」


「気を付けてね~」


「……すっかりサトミ様の弟枠ですねぇ…アレン様。

 自分のキャラを良くお分かりで…」


「うん、可愛いよね」


「ええ、可愛い顔してますけど、彼も男ですからねぇ。

 油断してると危ないですよぉ?」


「え~?ないない。エリカさんったらぁ。あっはっはっ」


「あらあら、アレン様、ご愁傷様…」



ぼそりとエリカさんが何か言ったが、私には聞き取れなかった。




* * * * * * *




「初対面のときは、申し訳ありませんでした。

 私は、過去の聖女の良くない文献を学んだばかりで、

 それに加え王宮での噂話も相まって…偏見を持って、

 あなたも同じだろうと決めつけてしまったんです」


「いえ、もうそれはいいです。私は気にしてません。

 全ての人に好かれるのなんて、不可能ですから」



食後に、たき火の前に座って物思いに耽っているセオドア様に、

前の聖女とクーデターについて何か知っているか、駄目もとで聞いてみた。


そしたら、いきなり初対面の時の無礼な挨拶の件を謝罪され面食らう。

もう、私自身すっかり忘れていたのに。

あの後は、ちゃんと文官の仕事に徹してくれてたし。

真面目だなぁ、流石文官と感心する。



「勿論、聖女の文献は把握しています。

 約百年前に召還された方で…あの村の先祖がクーデターを起こしたのは、

 その件が関係しているのです」


「やっぱり、聖女がらみなんですね?」


「ええ。その…召還された聖女の神聖力は、微量だったそうです。

 瘴気もほとんど祓えないような…なんていうか…

 国にとっては召還損というか…そんな存在だったのです。

 ですが、当時は稀人、ひいては聖女は神に等しい、絶対的存在でした」


「召還したからといって、魔力が強いとは限らなかったって事ですか?」


「はい。文献だけが頼りの手探りの召還でしたから。

 召喚できない時も多々ありました。 

 それに、いくら魔力が役に立たないとはいえ、勝手に召還しておいて、

 捨て置く事もできず、王宮で保護していたのですが、

 何を勘違いしたか…我が儘放題で、随分王家が振り回されたのです」


「召還された方からしたら、意に添わない誘拐ですからねぇ…

 荒れる気持ちは分かりますけど…所で何したんですか?その方」


「皆が優しくしてくれるのをいいことに、

 見目のいい王子達や貴族に迫ったり、あとはドレスやアクセサリー…

 まあ、国の税金で贅沢三昧、我が儘放題の限りを尽くしたそうです。

 それだけでは飽きたらず、為政にも口出ししてきて税を上げたり、

 気に入らない邪魔な令嬢をありもしない罪をでっちあげ、

 有罪にして追放したり、自分の地位と立場を私欲で利用しまくり、

 ありとあらゆる悪行をおこないました」 



傾国の美女ならぬ、傾国の聖女か…

これって、まるで隣国が聖女に対して持っている

厄災の忌み子、そのものじゃない?

もしかして、この方の影響で隣国では聖女が、

そんな存在になってるとか?



「あ~…憂さ晴らしに走りましたか…」


「ええ、最悪の展開です。

 挙句、周辺国の貴族令嬢に対しても無体を働き、危うく外交問題に発展して

 開戦の危機に。それで国が傾きかけて、煮え切らない対応の王家と正しい

 判断が出来ない臣下や側近に、保守派の王族がクーデターを起こし、

 玉座を奪還して話し合いを行いました」


「もしかして、クーデターを起こした王族って、追放された、

 あの村の祖先ですか?」


「はい。その通りです。

 皮肉な事に、正しき行いをした者が追放されている現状です」


「それで、話し合いはどうなりましたか?」


「プライドの高い王家が間違いを認めず、話し合いは長い間平行線を辿り、

 その状況に、我慢が成らなくなった市民からデモが起こりましたね。

 ようやく、その聖女の幽閉を交換条件に、クーデターを起こした王族は、

 矛先を納め撤退。誠実な彼等は、反逆罪として自ら極刑を望みましたが、

 それに対して、貴族達も多数反対し、クーデターを起こした王族全員を

 指定の土地へ追放することで譲歩して、ようやく終結したそうです」



それが、あの追放村か…

なんかあの人達の先祖、全然悪くないじゃない。

むしろ、英雄というか…王家のメンツを保つためとは言え…理不尽だなぁ。


よし、あの追放村の人達と今後、積極的に交流しよう。

ワインも美味しいし、ハンモックも素敵だったし…

畜産の羊肉と羊の毛糸の衣服も盛んだし、ハーブやキノコも沢山採れる。

いい取引できそう。あ、いけない目的が違う方に。



「今の王家の祖先は、先祖の不甲斐なさを恥として、

 今現在では、公に正しく伝えられていません。

 文献で真実を知っているのも、王族と側近のみになってます」


「でも、流石に聖女1人にチョロくやられすぎてませんか?

 体裁を気にするにも程があるというか…

 王族や貴族の方って賢い方が多いとお見受けしてますし…

 それとも聖女って、そんなに魅力的だったんでですか?」


「流石ですね。

 なぜこのように簡単に、聖女の思い通りに事が運んだのか、

 私もそう思いました。

 顔は…失礼ですが別に特段美しくは、なかったようです。

 詳細の文献を拝見した所、聖女は “魅了” を持っていました。

 本人も無自覚に使っていたようです。

 あっという間に側近が骨抜きにされ、彼女に味方する輩だらけになり、

 彼女の思い通りに働いて、動いていたのです。

 気づいた時には、上層貴族や上位役職員の外堀を埋められ、

 クーデターしか無理な状態でした」


「うわぁ魅了って、恐ろしい効力ですね…

 周りの人間を攻略して隷属化してしまう。

 それで、幽閉された聖女様はどうなったんですか?」


「そのまま、幽閉された塔で亡くなりました。

 まあ、外に出れないだけで何不自由なく、衣食住は与えられていました。

 召還されて、お気の毒な身の上とはいえ、やらかした罪に対しては、

 優しい刑罰だと思います」


「話して頂いて、ありがとうございます。

 正直、ここまで詳細に聴けるとは思っていなかったんです。

 私、信用されていない、みたいだったし…」


「いえ…最初こそ、私の狭量な勘違いで失礼な事を言ってしまいしたが、

 ずっと、お側であなたの人となりを見てきました。

 誰に対しても、あなたは平等で誠実だった。

 それに、同じ召還された聖女として、あなたにも知る権利はあります。

 それを踏まえて、信頼たる方だと判断し、お話した次第です」


「それは…ありがとうございます。

 私自身、初めはガンウルフに追われて怖い目に合いましたけど、

 助けて貰いましたし、出自不明の私に親切にしてくれました。

 この国に悪い印象はありませんし、悪意も持ってません」


「北の辺境の騎士団の忠実な働きのお陰ですね。

 お互い巡り合わせの運が良かったのでしょう」


「これで納得行きました。

 私に、なぜあんな態度だったのかも分かりましたし、

 まあ、私もそういう女だと警戒しますよね。ふふふっ」


「サトミ様は…あんなバカ女とは別の方なのに、

 本当に申し訳ありませんでした」


「もう謝罪は結構ですよ。結果的に、隣国のいうような厄災の忌み子に、

 私はならなかったんですから」


「…隣国のやった事は、許される事ではありません。

 あなたは被害者だ。

 隣国には証拠を揃えた上で、きちんと制裁は下します」



私は、たまたま運が良かっただけだ。

最初に出会ったのが、グレンさんと騎士団の強くて良識のある人だったから、

今の私があるんだ。

前の聖女は、どんな形でこの世界に落されたのだろう…

最初に誰と出会ったのだろう。

百年以上前なら、もっと貴族が権威を振りかざしている時代だったはず。

誰か彼女の身になって、支えてくれた人は居たのだろうか。

亡くなった後まで、こんな風に悪く言われるのが少し気の毒に感じた。



「あの、この国には何人の聖女が召喚されていたんでしょう?」


「確か…聖女として扱われたのは6人です。サトミ様を入れると7人。

 全く魔力なしの異世界人は…すいません、詳しい人数は今はわかりません。

 女性だけでなく男性も居たと思います。その方達は、平民として暮らして

 いたそうです。今度王宮の詳しい文献をサトミ様にお見せします」


「男性も?…あ、文献私も見て大丈夫なんですね?」


「勿論ですよ。自覚がないようですが、サトミ様は聖女です。

 王族と同等の身分なんですよ?」


「あ、そうでした。では、よろしくお願いします。

 話していただいて、ありがとうございました。

 そうだ、私の前の聖女様のお墓はあるんでしょうか?」


「ええ、罪人ですが、表向きは聖女として弔っています」


「お墓詣りに行きたいので、場所を教えて頂けますか?」



何でわざわざ?と怪訝そうな表情をしたセオドア様だったが、

王宮の近くにある墓地に、埋葬してあると教えてくれた。


墓標名は「聖女 チエコ イセ ここに眠る」

名前からして彼女もまた、黒髪黒目の日本人だったのだろう。




* * * * * * *




セオドア様と話した後、焚火の前でぼんやりしていると、

エリカさんはもう寝ます~と、馬車に戻っていった。

入れ替わりにグレンさんが私の隣に座る。



「お疲れ様」


「うん。今日で野営は最後だね」


「ああ、やっと帰れる。…これレイが渡しておいてくれって」


「えっ!あ、長剣?」


「ああ、移動中に頼んでいた鍛冶屋の村が近かったらしい。

 レイが馬を飛ばして取りに行ってきてくれたんだ。

 護身用に君に早く渡せってね」


「うわ~綺麗な剣…ありがとうございます」



銀色のスラリとした美しい剣と革製の鞘。

私の腕力でも振りやすい、細くて軽い長剣をレイ副団長が鍛冶師に、

オーダーしてくれていた物だ。

騎士が通常使用している大剣より、刃の部分の鉄が長く薄い。



「凄いっ…手に馴染む…」


「こっちは短剣。お揃いのデザインだね」


「えっ、可愛い」


「ああ、あとこっちは、剣を携帯する用の腰ベルト」


「…格好いい!騎士団員っぽい!」


「はははっ、武器で喜ぶなんてサトミは面白いな」


「えっ?だって格好いいじゃないですか!綺麗な武器~♪」



その後、鞘を抜かない状態で少しグレンさんに手合わせしてもらい、

私たちは最後の野営の就寝についた。




* * * * * * *




夜明け前、それは突然だった。



ガキンッ!ガンガンガンガンッ‼︎ バキッ!



「きゃあああああっ!」



バンッ‼︎



エリカさんの悲鳴で、目が覚めたと同時に、

馬車のドアが蹴破られた。


覗き込んだ、知らない男がニヤリと笑う。



「おいっ!ここに上玉の女がいるぞ!!」



盗賊⁉︎──────



しかし、その男はすぐに姿を消した。

駆けつけた、護衛騎士に後ろから引っ張られ捕らえられている。


私はすぐに起き上がり弓矢ではなく、

昨夜グレンさんに渡された自分の長剣を手に取る。

タイミング良く届けられて、早速使う機会が来るなんてフラグかよと、

苦笑しながら、それを鞘から抜いた。


エリカさんを馬車に押し込め、

破壊された鍵に魔力でロックをかける。



「サ、サトミ様‼︎ 外に出てはダメです!サトミ様ぁっ‼︎」



本当は出るつもりはなかった。


でも、膨大な魔力の気配がする。



これに対処できるのは、私しかいない。

隠れていても、誰かが犠牲になるかもしれない。



凄い数の盗賊が騎士団と抗戦していた。


…どこ…あの魔力の持ち主は──────


魔力量を辿って、目を巡らせる。




そして、見つけた。





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