表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
41/50

目が覚めたら、昨夜「好き」が増えすぎた彼女がすぐ隣で眠っていて、朝から心臓がもたない

意識が浮かび上がってくる。

最初に感じたのは、やわらかい布団の重みと、旅館特有の静かな空気だった。

次にわかったのは、ここが自分の部屋じゃないということ。


見慣れない天井。落ち着いた色合いの壁。障子越しに差し込む、朝のやわらかい光。

そこでようやく、昨夜のことがゆっくりつながっていく。

軽井沢。旅館。温泉。部屋に運ばれてきた夕食。澪との長い会話。


「今日の最後に好きって言ってほしい」と言われたこと。


ベッドに入って、おやすみを言ったこと。

そこまで思い出したところで、夢の余韻まで一緒によみがえった。


眠っているあいだ、今日一日のことを何度も振り返っていた気がする。

上野で澪を見つけた瞬間から、新幹線の中、旧軽井沢、旅館に着いてからのことまで、ひとつひとつが妙にはっきりしていた。

そのせいか、目が覚めた今もまだ、胸の奥にやわらかい熱が残っている。

そして、その熱の理由はすぐにわかった。

すぐ隣に、澪がいた。


一瞬、呼吸が止まりそうになる。

昨夜、同じ部屋で眠ったのだから、隣にいるのは当たり前だ。

頭ではそうわかっている。

でも、朝の光の中で見る澪は、昨夜とはまた違って見えた。

眠っている顔は静かで、昨日の夜みたいに照れてもいないし、笑ってもいない。

ただ、安心しきったみたいに穏やかだった。


その表情が、思っていた以上に無防備で、思っていた以上に近い。

夢の中で散々「可愛い」と思い返していたくせに、起きて最初にまた同じことを思うなんて、さすがにどうかしている。

でも仕方なかった。

可愛いものは可愛い。


しかも、朝の澪は少しだけ髪が乱れていて、それがまた妙にやわらかい雰囲気をつくっている。

昨夜のきちんとした感じとは違う、寝起き前の無防備さみたいなものがあって、余計に心臓に悪い。

……朝からこれはずるいだろ。

心の中でそうつぶやきながら、俺はそっと息をついた。

起こさないように、できるだけ静かに。




部屋の中はまだ完全には動き出していない。

外から聞こえる音も少なくて、遠くで鳥の声がした気がするくらいだ。

旅館の朝はもっと賑やかなものかと思っていたけれど、この時間はまだ、夜の静けさが少し残っている。

その静けさの中で、澪の寝息だけがかすかに聞こえる。


昨夜、眠る前に指先が少しだけ触れていたことを思い出す。

あれは夢の続きみたいだった。

でも今こうして隣にいる澪を見ると、ちゃんと現実だったのだとわかる。


俺は少しだけ体を起こしかけて、でもやめた。

今動いたら、この静かな朝の空気が壊れてしまいそうだった。

それに、もう少しだけ見ていたかった。


澪の寝顔なんて、そう何度も見られるものじゃない。

いや、付き合っているのだから、これから先そういう機会はあるのかもしれない。

でも、今日の朝は今日だけだ。


昨日の長い一日の続きにある、最初の朝。

その特別さを、たぶん俺はちゃんとわかっていた。

澪は少しだけ身じろぎした。

その動きに、思わずこちらの肩までこわばる。


けれど、澪はまだ起きない。

布団を少しだけ引き寄せて、また静かになる。

その仕草すら可愛いと思ってしまって、自分でもどうかしていると思う。


昨日の夜、「前よりもっと好きかもしれない」と言われた。

そのときもかなり効いたけれど、今こうして朝の澪を見ていると、たぶん俺のほうも同じくらい、いやそれ以上に好きが増えている気がした。


こんなの、朝から自覚することじゃないだろ。

でも、自覚してしまうものは仕方ない。

夢の中で思い返した本音が、朝になってもそのまま残っている。


上野で見つけたときも可愛かった。

新幹線でも可愛かった。

旧軽井沢でも、温泉のあとも、夕食のときも、夜の会話のときも、ずっと可愛かった。


そして今、寝起き前の無防備な顔まで可愛い。

もうだめだろ、と思う。

好きが増えるって、こういうことなのかもしれない。


障子の向こうの光が、少しだけ強くなった気がした。朝がちゃんと進んでいる。

そろそろ起きてもおかしくない時間だ。

朝食の時間もあるだろうし、いつまでもこうしているわけにはいかない。

でも、起こすのは少し惜しい。


昨日、澪は本当に疲れていた。

楽しいこともたくさんあったけれど、それ以上に気を張る時間もあった。

だから、こうして安心した顔で眠れているなら、もう少しだけそのままでもいい気がした。

そう思っていると、澪のまつげがわずかに揺れた。


今度こそ、起きるかもしれない。

俺は反射的に視線を少しだけそらして、でも結局また戻してしまう。

澪の目が、ゆっくりと開いた。

まだ完全には覚めていない、朝特有のぼんやりした目だった。


数秒、澪は何も言わずに天井のほうを見ていた。

それから、少しずつ意識が追いついてきたみたいに、視線がこちらへ向く。

目が合う。


その瞬間、昨夜とは違う意味で心臓が跳ねた。

澪は一瞬だけきょとんとして、それから状況を思い出したらしい。

ほんの少しだけ頬がやわらかくなる。


「……あ」


起きたばかりの、少しかすれた声。

それだけで妙に胸にくる。


「おはよう」


できるだけ自然に、でもやさしく聞こえるように言う。

澪はまだ少し眠たそうな顔のまま、小さく瞬きをした。


「……おはよう」


その返事も、いつもよりずっとやわらかい。

朝の澪の声って、こんな感じなんだなと思う。

昨夜の甘い会話の余韻がまだ残っているせいか、たったそれだけのやり取りでも、胸の奥がじんわりあたたかくなる。

澪は少しだけ布団を引き上げて、でも視線はこっちから外さなかった。


「起きてたの?」


「さっき起きた」


「そっか……」


澪はそう言って、少しだけ恥ずかしそうに目を細める。

たぶん、寝起きの顔を見られていたことに気づいたのだろう。


でも今は、それを指摘するほど意地悪な気分にはなれなかった。

むしろ、この朝のやわらかさを壊したくない。

だから俺は、昨夜よりもずっと静かな声で、本当に聞きたかったことをそのまま口にした。


「よく眠れた?」

最後までお読みいただきありがとうございます!

二人の甘すぎる時間が少しでも『尊い』『続きが気になる』と思ってくださったら、ぜひ応援をお願いします!


皆さんのポチッとが、日間ランキング上位を維持する物凄まじい原動力になります!

【ブックマークに追加】

【下の評価の☆☆☆☆☆を★★★★★に】


いつも温かい応援を本当にありがとうございます!おかげさまで日間18位、週間33位まで駆け上がることができました!


―――


【さらに深く作品を楽しみたい方へ(最新話先読み&外伝)】

noteにて、月額300円の限定プランをスタートしました!


・本編では明かされない「元カノ視点」の切ない裏話

・「澪視点」での主人公への本音エピソード

・なろう未公開の外伝や、最新話の先読み


など、ここでしか読めない特別な物語をどんどん投稿していく予定です。

『もっと先が読みたい!』という方は、ぜひ下記リンクのプラン内「加入する」ボタンからチェックしてみてください!


https://note.com/tasty_seal6427/membership


―――


なろうの本編も、毎日【朝7時40分】と【夜18時10分】に全力で毎日投稿を続けていきます!

次回の更新もどうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ