大学で「今度の土日、軽井沢行かない?」って澪に誘われたうえに、放課後は生徒会室で膝枕までされました
大学の門をくぐってからも、 俺の胸の奥にはまだ昨夜のぬくもりが残っていた。
隣を歩く澪もどこか機嫌がよくて、 講義棟へ向かう道すがら、 何度もやわらかく笑っていた。
朝のキャンパスは人が多い。
同じ学部の学生や、 サークルの連中や、 見慣れた顔があちこちにいる。
そんな中で澪と並んで歩いているだけでも十分特別なのに、 今日はそれだけじゃ終わらなかった。
中庭の近くまで来たところで、 澪がふいに足をゆるめる。
「ねえ」
そう呼ばれて、 俺は自然に澪のほうを見た。
「今度の土日、 軽井沢に一泊二日で行かない?」
あまりにも自然な口調だった。
まるで、 今日の昼ごはん何にする、 くらいの軽さで言うから、 一瞬意味を理解するのが遅れた。
「……軽井沢?」
「うん」
澪は小さくうなずく。 その表情は落ち着いているのに、 目だけが少しだけ期待しているみたいに見えた。
「前から行ってみたかったの。 のんびりできそうだし、 景色もきれいだし」
そこまで言ってから、 澪は少しだけ声をやわらかくする。
「あなたと一緒に行けたら、 もっと楽しいかなって思って」
その一言で、 胸が一気に熱くなった。
軽井沢。 一泊二日。 澪と二人で。
頭の中で言葉が並んだ瞬間、 心臓がうるさいくらい跳ねる。
「……行きたい」
気づけば、 ほとんど反射みたいにそう答えていた。
すると澪は、 ぱっと表情を明るくした。
「ほんと?」
「ほんと。 むしろ断る理由がない」
そう言うと、 澪はうれしそうに目を細めた。
「よかった」
その笑顔があまりにも可愛くて、 朝から胸がいっぱいになる。
「じゃあ、 あとで少し予定立てましょ」
「うん」
「楽しみ」
澪はそう言って、 ほんの少しだけ俺の袖に触れた。
人目があるから手はつながない。
でもその代わりみたいな小さな仕草が、 妙に甘かった。
午前の講義中も、 頭の片隅にはずっと軽井沢のことがあった。
澪と旅行。 しかも一泊二日。
昨日はお泊まり会であんなに甘かったのに、 その翌日に今度は旅行の約束まで増えるなんて、 幸せの密度がおかしい。
講義が終わってスマホを見ると、 澪からメッセージが届いていた。
「放課後、 生徒会室に来て」
短い文なのに、 それだけで胸が高鳴る。
「わかった」
そう返すと、 すぐに既読がついて、 少ししてからもう一通届いた。
「待ってる」
たったそれだけなのに、 どうしようもなくうれしい。
午後の講義を終えて、 俺は言われた通り生徒会室へ向かった。
廊下はもう静かで、 窓の外には夕方の光が差し込んでいる。
生徒会室の前まで来ると、 自然と緊張した。
軽くノックをすると、 中から澪の声が返ってくる。
「どうぞ」
扉を開けると、 澪は机の向こうではなく、 ソファのそばに立っていた。
「来てくれた」
その言い方がやわらかくて、 待っていてくれたのが伝わってくる。
「言われたから」
「うん。 来てくれると思ってた」
澪はそう言って笑う。
その笑顔は大学の中にいるときのものなのに、 昨夜の続きみたいな甘さがあった。
「仕事はもう終わったの?」
「だいたいね。 今日はあなたを呼ぶほうが大事だったから」
さらっとそんなことを言うから、 また胸が熱くなる。
「それ、 大学で言うの反則だろ」
「ここ、 今は二人きりだからいいの」
澪はそう言って、 ソファに座るよう促した。
「ほら、 こっち来て」
言われるまま隣に座ると、 澪は少しだけ俺を見つめてから、 ふっと笑った。
「今日、 ちゃんと講義受けられた?」
「一応」
「軽井沢のこと考えてた?」
図星すぎて、 思わず黙る。
すると澪は楽しそうに笑った。
「やっぱり」
「澪だって考えてただろ」
「もちろん」
即答だった。
「どこ行こうかなとか、 何食べようかなとか、 あなたとどんなふうに過ごせるかなとか、 いっぱい考えてた」
その言葉のひとつひとつが甘い。 しかも澪は、 それを隠す気がまったくない。
「ねえ」
澪が小さく呼ぶ。
「ちょっとこっち来て」
「これ以上?」
「うん」
不思議に思いながら少し身を寄せると、 澪は俺の腕をそっと引いた。
次の瞬間、 視界がぐらりと傾く。
「え?」
気づけば、 俺の頭は澪の膝の上にあった。
「……澪?」
「膝枕」
あまりにも当然みたいに言うから、 一瞬言葉を失う。
生徒会室。 放課後。 二人きり。 その状況で膝枕。
心臓が一気に跳ね上がる。
「ちょっと待って、 これ大丈夫なのか」
「大丈夫。 鍵かけてるもの」
澪は落ち着いた声でそう言って、 俺の髪にそっと触れた。
「それに、 今日は甘やかしたかったの」
その言葉と一緒に、 やさしく髪を撫でられる。
「……ここで?」
「ここで」
澪は少しだけ得意そうに笑った。
「昨日、 いっぱい甘えてくれたでしょう?」
「それは澪が甘やかしたからだろ」
「うん。 だから今日も続き」
その理屈はよくわからないのに、 澪らしくて反論できない。
膝枕は思っていた以上に落ち着かなかった。
でも同時に、 思っていた以上に心地よかった。
澪の体温が近い。見上げればすぐそこに澪の顔がある。
指先はやさしく髪を梳いて、 ときどき額のあたりまで撫でてくれる。
「……だめになる」
思わずそうこぼすと、 澪はうれしそうに目を細めた。
「だめになっていいの」
「よくない」
「ここではいいの」
その言い方が甘すぎて、 もう何も言えなくなる。
「疲れてる?」
澪が静かに聞いてくる。
「少しは」
「じゃあ、 ちょうどよかった」
そう言って、 澪は今度はこめかみのあたりをやさしく撫でた。
「あなた、 頑張りすぎるときあるから」
「そんなことない」
「あるわよ」
澪は少しだけ眉を下げる。
「だから、 こういうときくらいちゃんと力抜いて」
その声は、 昨夜ベッドの中で囁いてきたときと同じくらいやわらかかった。
「澪」
「なに?」
「甘やかすの、 上手すぎる」
そう言うと、 澪はくすっと笑った。
「あなた限定だから」
その一言が強すぎて、 胸の奥がじんと熱くなる。
「軽井沢でも、 いっぱい甘やかしてあげる」
「予告するのか」
「するわよ」
澪は楽しそうに笑って、 また髪を撫でる。
「朝は一緒にごはん食べて、 のんびり歩いて、 疲れたら休んで、 夜はゆっくりして」
そこまで言ってから、 少しだけ照れたように続ける。
「そういう時間、 あなたと過ごしたいの」
その言葉がうれしくて、 胸がいっぱいになる。
「俺も、 澪と行けるならすごく楽しみ」
「うん」
澪は満足そうにうなずいた。
「じゃあ決まりね」
しばらくのあいだ、 俺はそのまま澪の膝の上で甘やかされ続けた。
髪を撫でられて、 額に触れられて、 ときどき頬までやさしくなでられる。
そのたびに胸が落ち着かなくなるのに、 不思議と離れたくはならない。
「眠くなってきた?」
「少し」
「ふふ。 かわいい」
「それはやめて」
「やめない」
澪はそう言って笑う。
その笑い声までやわらかくて、 聞いているだけで安心する。
「ねえ、 旅行のときもこうしていい?」
「膝枕?」
「うん」
「……いいけど」
そう答えると、 澪は本当にうれしそうにした。
「よかった」
それから少しだけ身をかがめて、 俺の顔をのぞき込む。
「その代わり、 ちゃんと私にも甘えてね」
その言葉に、 胸の奥がまた熱くなる。
「もう十分甘えてる気がするけど」
「まだ足りない」
澪はきっぱり言い切った。
「もっと頼って、 もっとくっついて、 もっと安心してほしいの」
そのまっすぐさが、 どうしようもなくうれしい。
生徒会室の窓の外では、 夕方の光が少しずつ色を変えていた。
大学の中なのに、 ここだけ時間の流れがやわらかい。
澪の膝の上で見上げるその横顔は、 きれいで、 やさしくて、 甘かった。
たぶん俺はこれから先も、 こうして何度も澪に甘やかされるのだろう。
大学でも、 部屋でも、 そして今度の軽井沢でも。
そう思うだけで、 胸の奥があたたかく満たされていく。
澪は最後にもう一度、 俺の髪をそっと撫でて微笑んだ。
「放課後に呼んでよかった」
その一言に、 俺も小さく笑う。
「俺も、 来てよかった」
そう答えると、 澪は本当に幸せそうに目を細めた。
軽井沢の約束は、 もう始まっているのかもしれない。
そんなふうに思えるくらい、 その日の放課後は甘くて、 やさしくて、 特別だった。
もし『続きが読みたい』『応援してやるか』と思ってくださったら、下にある【ブックマークに追加】や【評価の★】をポチッと押していただけると、さらに順位が上がり執筆の物凄い励みになります!
また、別の作品でファンタジー日間116位をとれました。
とても頑張った作品なので、そちらもぜひ御覧ください。
また、この作品で日間18位、週間33位にランクインしました。
毎日18時10分と7時40分に投稿するのでぜひ見てください




