表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギャルな元カノに裏切られて絶望した俺、学校一の冷徹美少女先輩に拾われてデレデレに甘やかされる  作者: Y.M


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/5

新しい男と去った元カノ。絶望の俺に手を差し伸べた高嶺の花

リナが神谷と並んで中庭を去っていったあと、俺はしばらく動けなかった。

 雨が降り出す前の、あの独特の湿った空気が肌にまとわりつく。

 胸の奥が空洞みたいにスカスカで、何も感じない。悲しいとか悔しいとか、そういう感情が出てくる前に、心が壊れてしまったような感覚だった。


二年間。

 俺の青春のほとんどを占めていた時間が、たった数分の会話で終わった。

 しかも、あんな雑な振られ方で。


ベンチに腰を下ろすと、ようやく雨が落ちてきた。

 最初はぽつり、ぽつりと控えめだったのに、すぐに本降りへ変わる。

 制服の肩が濡れ、髪から滴る水が頬を伝う。

 涙なのか雨なのか、自分でもわからなかった。


「……俺、何してんだろ」


呟いた声は雨音にかき消された。

 リナは神谷と帰ると言っていた。

 今ごろ二人で並んで歩いているのだろうか。

 俺が二年間守ってきた笑顔を、今は別の男が見ているのだろうか。


考えたくないのに、頭の中に勝手に浮かんでくる。

 雨はさらに強くなり、靴の中まで水が染みてきた。


そのときだった。


「……藤崎くん?」


雨音の中でもはっきり聞こえる、澄んだ声。

 顔を上げると、そこに立っていたのは――


学園一の高嶺の花。

 誰もが近づくことを恐れる完璧令嬢。


如月澪先輩だった。


黒髪のロングは雨に濡れず、傘の下で静かに揺れている。

 整った顔立ちに、冷たい印象の瞳。

 普段なら絶対に俺なんかに話しかけてこないはずの人。


「どうして、こんなところで濡れてるの?」


先輩は俺の前に立ち、傘を差し出してきた。

 その仕草は優雅で、どこか怒っているようにも見えた。


「別に……大丈夫です。放っておいてください」


「放っておけるわけないでしょ」


即答だった。

 その声は冷たいのに、なぜか胸に刺さるほど優しかった。


「顔、真っ青よ。……何があったの?」


「何も……」


「嘘。そんな顔して“何も”はないわ」


先輩は俺の腕を掴んだ。

 細い指なのに、驚くほど力強い。


「話したくないならいい。でも、このまま雨に濡れてたら倒れるわ。……来て」


「どこに……?」


「いいから」


強引に引っ張られ、俺は立ち上がった。

 先輩の傘に入ると、ふわりと上品な香りがした。

 リナの甘い香りとは違う、落ち着いた大人の匂い。


歩きながら、先輩がぽつりと言った。


「……あの子と、別れたのね」


心臓が跳ねた。


「なんで……わかるんですか」


「見てたから」


「え……?」


「あなたが呼び出されて、あの子と話してるところ。

 遠くからだけど、雰囲気でわかったわ」


先輩は少しだけ眉を寄せた。


「……あんな別れ方、ないわよ」


その言い方は、まるで自分が傷ついたかのようだった。


「別に……俺が悪いんで」


「悪くない」


先輩はきっぱりと言い切った。


「あなたは悪くない。悪いのは――」


そこで言葉を切り、少しだけ目を伏せる。


「……あの子よ」


雨音の中で、その言葉だけがやけに強く響いた。


校舎裏の屋根付き通路まで来ると、先輩は傘を閉じた。

 俺の制服はびしょ濡れで、靴の中まで水が染みている。


「風邪ひくわね……」


先輩は俺の袖に触れ、濡れた布を見て小さくため息をついた。


「藤崎くん。このあと予定は?」


「ないですけど」


「なら、少し付き合って。あなたのために、どうしても行きたい場所があるの」


「俺の……ため?」


「そうよ」


先輩はまっすぐ俺を見つめた。

 その瞳は冷たいはずなのに、今はどこか熱を帯びているように見えた。


「あなたを、このまま一人にしたくないの」


胸がぎゅっと締めつけられた。

 リナに捨てられた直後の俺に、その言葉はあまりにも優しすぎた。


「……なんで、俺なんかに」


「“なんか”じゃないわ」


先輩は一歩近づき、俺の胸元に手を伸ばした。

 濡れたシャツをそっと掴む。


「藤崎くんは……放っておけないの」


その距離は、リナとハグしたときよりも近かった。

 息が触れそうなほど。


先輩は小さく息を吸い、そして――


「……辛かったでしょ」


その一言で、張りつめていたものが崩れた。

 涙がこぼれそうになるのを、必死でこらえる。


先輩はそんな俺を見て、そっと腕を伸ばした。


「泣いていいわよ。……誰も見てないから」


その腕は、リナのときよりもずっと温かく見えた。


気づけば俺は、先輩の胸元に顔を埋めていた。

 先輩は驚いたように一瞬固まったが、すぐに優しく背中に手を回してくれた。


「……大丈夫。もう大丈夫よ、藤崎くん」


その声は、壊れた心に染み込むように優しかった。


雨の音が遠くなる。

 先輩の体温だけが、はっきりと伝わってくる。


しばらくして、先輩は俺の背中を軽く叩いた。


「……行きましょう。ここにいたら、もっと冷えちゃう」


「どこに……?」


「安心できる場所よ。あなたが、ちゃんと呼吸できる場所」


その言葉の意味を、このときの俺はまだ理解していなかった。


ただ、先輩の手が離れた瞬間、胸の奥がひどく寂しくなった。

 リナに捨てられた直後の俺が、誰かの温もりを求めてしまうのは、弱さなのだろうか。


でも――


先輩は振り返り、俺の手をそっと握った。


「大丈夫。私がいるから」


その一言で、崩れかけていた心が少しだけ支えられた。


そして俺はまだ知らない。

 この瞬間から、如月先輩の“本気”が静かに始まっていたことを。

 そして、俺の人生が大きく変わる夜が、すぐそこまで迫っていることを。

皆様の応援のおかげで、ハイファンタジー日間ポイントランキング227位にランクインすることができました!本当にありがとうございます!もし『続きが読みたい』『応援してやるか』と思ってくださったら、下にある【ブックマークに追加】や【評価の★】をポチッと押していただけると、さらに順位が上がり執筆の物凄い励みになります!

また、恋愛系も始めたのでぜひそちらも御覧ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ