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19/50

美人な先輩の部屋に俺の私物が増えていくたび、溺愛がどんどん加速してます

「次に来る日、今から楽しみ」


澪先輩がそう言って、

俺の肩にそっと寄りかかったまま目を細める。

その横顔はやわらかくて、

見ているだけで胸の奥が甘く痺れていく。


「俺もです」


そう答えると、

先輩は少しだけ顔を上げて俺を見た。

近い。

さっきからずっと近いのに、

目が合った瞬間、改めてその距離を意識してしまう。


「ほんとに?」


「ほんとです」


「じゃあ、ちゃんと来てね」


その言い方が、

お願いみたいでもあり、

約束を求められているみたいでもあって、

胸がどきりと跳ねた。


「行きますよ。

先輩がこんなに準備してくれたんですから」


「準備したのは、まだ途中だけどね」


先輩はくすっと笑って、

俺の手を指先でなぞる。

その触れ方がやさしいのに妙にくすぐったくて、

思わず息が詰まりそうになる。


「途中?」


「うん。

だって、まだ足りないものいっぱいあるもの」


「たとえば?」


聞くと、

先輩は少し考えるふりをしてから、

いたずらっぽく笑った。


「まずはマグカップ。

それからタオル。

あと、できれば部屋着用のクッション。

それと……」


「それと?」


「藤崎くんがもっとここでだらだらできる環境」


思わず笑ってしまう。

でも先輩は真剣だった。


「だって、くつろいでほしいの。

遠慮しないで、自然に過ごしてほしい」


その言葉が嬉しくて、

胸の奥がじんわり熱くなる。


「もう十分くつろいでますよ」


「まだ足りないわ」


先輩はそう言って、

俺の腕にそっと自分の腕を絡めた。

ぴたりと寄り添う体温に、

一気に心臓がうるさくなる。


「先輩……」


「なに?」


「距離、近いです」


「近くしたいの」


即答だった。

しかも少しも照れずに言うから、

こっちばかりが動揺してしまう。


「だめ?」


上目遣いでそんなふうに聞かれて、

だめなんて言えるわけがない。


「……だめじゃないです」


そう答えると、

先輩は満足そうに笑って、

さらに肩を寄せてきた。



しばらくそのまま二人で座っていると、

部屋の静けさが少しずつ心地よくなってくる。

窓の外は夕方の色を深めていて、

部屋の中にはやわらかな明かりが落ちていた。


先輩は俺の腕に寄りかかったまま、

ぽつりとつぶやく。


「こういうの、好き」


「こういうの?」


「何もしないで、ただ一緒にいる時間」


その声は静かで、

でもすごく甘かった。


「買い物したり、話したりするのも楽しいけど……

こうして隣にいるだけでも、すごく落ち着くの」


先輩の言葉を聞きながら、

俺も同じだと思った。

何か特別なことをしているわけじゃない。

ただ隣に座って、

同じ部屋の空気を吸っているだけ。

それなのに、

こんなにも満たされる。


「俺も好きです」


「うん」


先輩は嬉しそうにうなずいて、

今度は俺の肩に頬をそっと預けた。

やわらかな感触が伝わってきて、

頭が真っ白になりそうになる。


「先輩、それは反則です」


「反則?」


「近すぎて、落ち着かないです」


そう言うと、

先輩は少しだけ顔を上げて、

くすっと笑った。


「私は落ち着くわよ?」


「先輩が余裕ありすぎるんです」


「余裕なんてないわ」


そう言いながらも、

先輩の声はどこか楽しそうだった。

そして次の瞬間、

俺の手を取って自分の胸元へ引き寄せる。


「ほんとは、すごくどきどきしてるもの」


手のひら越しに伝わる鼓動に、

息が止まりそうになる。

先輩の心臓も、

ちゃんと速くなっている。

それがわかっただけで、

胸の奥が熱くなった。


「……ほんとだ」


「でしょ?」


先輩は少し照れたように笑った。

その表情があまりにも可愛くて、

思わず目をそらしたくなる。

でも、そらせなかった。


「藤崎くんが隣にいると、

私だって平気じゃないの」


その言葉は、

甘くて、やわらかくて、

でもまっすぐだった。



気づけば、

俺たちの距離はさっきよりずっと近くなっていた。

腕を絡めたまま、

手を重ねたまま、

互いの体温が自然に伝わる距離。


先輩は俺の指をそっと握りながら、

小さく笑う。


「手、大きいね」


「先輩が小さいんですよ」


「そうかも」


そう言って、

先輩は自分の指を俺の指に絡めた。

恋人つなぎ。

その形になった瞬間、

胸の鼓動が一気に跳ね上がる。


「先輩……」


「嫌だった?」


「嫌じゃないです。

むしろ……かなり嬉しいです」


正直に言うと、

先輩はふわっと笑った。


「よかった。

私も、こうしたかったの」


絡めた指先を、

先輩が少しだけきゅっと握る。

その小さな力に、

離したくない気持ちが込められている気がして、

胸がいっぱいになる。


「藤崎くん」


「はい」


「もっとこっち来て」


言われるまま少し身を寄せると、

先輩は満足そうに目を細めた。

肩と肩が触れ合って、

膝も軽く当たる。

それだけなのに、

体温がじわじわ広がっていく。


「……幸せ」


先輩が小さくつぶやく。


「そんな顔で言われたら、

俺までだめになります」


「だめになって」


「先輩」


「私が甘やかすから」


その一言が強すぎて、

もう何も言い返せなくなる。

先輩は本当に、

俺を甘やかす気でいるのだ。

しかも隠す気もなく、

まっすぐに伝えてくる。


「ここに来たら、

いっぱい甘えていいのよ?」


「それ、先輩が言いますか」


「言うわよ。

だって、藤崎くんが遠慮するの嫌だもの」


先輩はそう言って、

空いているほうの手で俺の頬にそっと触れた。

指先がやさしく肌をなぞる。

その触れ方があまりにも丁寧で、

胸の奥が甘く痺れた。


「先輩、ほんとにずるいです」


「ずるくてもいいの」


「よくないです。

こんなの、好きになるしかないじゃないですか」


言ってから、

自分で何を口にしたのか気づいて息が止まる。

でも先輩は驚かなかった。

ただ、少しだけ目を見開いて、

それからとても嬉しそうに笑った。


「……うん。

もっと好きになって」


その返事があまりにもまっすぐで、

胸がいっぱいになる。

先輩は頬に触れたまま、

今度は親指でそっと撫でた。


「私も、もっと好きになるから」


その言葉に、

もう理性が追いつかない。

こんなに甘くて、

こんなに近くて、

こんなに大事にされて、

平気でいられるわけがなかった。


先輩は少しだけ顔を寄せて、

額が触れそうな距離で俺を見つめる。


「藤崎くん」


呼ばれただけで、

胸が熱くなる。


「次に来るときはね、

もっと甘やかす準備しておく」


「まだ増えるんですか……」


「増えるわよ?」


先輩は楽しそうに笑った。


「だって、私の部屋に来た藤崎くんには、

世界で一番居心地いいって思ってほしいもの」


その言葉に、

思わず笑ってしまう。

でも同時に、

どうしようもなく嬉しかった。


この部屋にはもう、

枕も、歯ブラシも、パジャマも、棚もある。

そしてこれから先は、

きっと先輩の溺愛まで

どんどん増えていくのだろう。


絡めた指を離さないまま、

先輩はやわらかく微笑む。


その笑顔を見ているだけでわかる。

俺の居場所は、

もうただの“スペース”なんかじゃない。


先輩のぬくもりごと、

まるごと包み込んでくれる、

甘くて幸せな場所になり始めていた。

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