↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
38/62

第38話 白麗の真手

 アスランたちは五人で一塊となり、群がる虫型モンスターたちに果敢に挑みながら入り口を目指した。


 五人とも「レアアイテムのためならプレイヤーを襲うことも辞さない」というプレイスタイルだ。その自信に裏打ちされた実力派中々の物で、虫型のモンスターと次々と蹴散らしていく。


 だが、やはり数の暴力には抗い切れない。

 思うようには進めずに進路は左に逸れ、モンスターの波に押し流されるようにして隅に追いやられてしまう。


 それでも尚懸命に戦う五人の姿をクロノたちは少し離れたところから見ていた。


「大丈夫でしょうか……」


 心配そうにユーリが言った。


「まぁ、死んでも近くの町に戻るだけだから」


 クロノが短く答える。


 ここは所詮ゲームの中。死んでも永遠に命を失うわけではない。

 大きな虫に大量に迫られる光景というのはひょっとしたらかなりのトラウマになるかもしれないが、自分たちのしたことに対する報いだと諦めてもらうしかない。


 言いがかりで襲ってきた相手を心配するユーリとは違い、クロノはそんな風にしか考えられなかった。


 LEOで楽しむべきなのは希少なアイテムを入手するために競い合うところまで。

 その勝敗が決する時にPKで解決しようなんて輩はLEOプレイヤーの風上にもおけないという考えだ。


「それで、この後どうするんだ?」


 クロノほど憤りを感じているわけではなかったが、心象的にはユーリよりもクロノ側だったアオハルは既にアスランたちには興味を亡くしたように呟いた。


 現状、虫型モンスターの群れはアスランたちにヘイトを向けている。その影でクロノたちは襲われることなく静観できているのだが、群れの数は凄まじく、アスランたちが隅に追いやられた今も入り口は埋め尽くされたままだ。


 無理に通ろうとすればヘイトが映る。このままじっとしていてもそのうち気づかれる。

 そうなったら、どちらの場合でもアスランたちの二の舞になることは明らかだった。


「それは、ほら。これを使う」


 クロノはインベントリの中から入手したばかりのアイテムを取り出し、それをユーリに渡す。


 白い布地のようなアイテムだった。


「何ですか、これ」


 ユーリが首を傾げる。そのアイテムの正体にいまいちピンと来ていない。


「パラサイトマッシュルームの触手」


「え……」


 ユーリは持っていた布地を落としそうになり、慌てて持ち直した。

 これがついさっき倒した苦手なキノコ型モンスターの一部だと知り、放り投げてしまいたくなる。


「宝箱の中身だよ。それが入っていた。名前は『白麗の真手」だってさ」


「白麗?」


 今度はアオハルが首を傾げる。「白麗」とは三人が求めていた武器に付く名前だったはずだ。それなのに、ユーリが持つ布地はどこからどう見ても武器には見えない。


「それを加工屋に持って行って武器にしてもらうんだ。サイドクエスト関連だから後で教える」


 クロノはそう言うと、入り口に群がる虫型モンスターに向き直る。

 そして、指先で進行方向を示した。


「そのアイテムにはパラサイトマッシュルームの威光が残っているんだよ。だから、それを持ってさえいればとりあえず襲われることはない」


 半身半疑のユーリとアオハルだったが、クロノに唆されるまま入り口に歩き出す。

 アリやクモと言ったモンスターが目前に迫り、ユーリが小さく悲鳴を上げる。


 だが、クロノの言った通り襲われることはなかった。


「アスラン、アイツら逃げちゃうよ」


「なん……どうやって切り抜けたんだ……」


 エリファとアスランはクロノたちが入り口付近に差し掛かっていることに気付いたが、今更どうすることもできない。


 取り巻き三人のうち、二人はすでに倒されて町に戻ってしまい、残った一人もほとんど瀕死の状態だ。


 エリファとアスランでさえ、HPの七割が削れている。


「畜生……ふざけやがって。アイツら、絶対に許さねぇ!」


 アスランの恨みがましい雄たけびが洞窟の最深部の岩壁に反響した。


 ♢


 無事にモンスターを切り抜けた三人はそのまま洞窟を脱出する。

 湖畔近辺の森の中で一先ず休息を取り、「町に戻るのでなく、このまま加工屋に向かおう」と三人で決める。


 クロノの言っていたサイドクエストがこの近くで受けられるから、という理由と今町に戻ると再びアスランたちに絡まれるかもしれないから、という二つの理由のためだった。


 LEOには「転移石」というアイテムが存在し、それを砕くことで近くの町にワープすることができる。


 また、主要な町には「転移結晶」と呼ばれるオブジェクトが存在し、それを介して他の転移結晶のある町に移動することもできる。


「転移石で移動してから転移結晶を使ってサレスの町に戻る」という手もあるのだが、転移石の仕様上、帰還する町がどうしてもアスランたちと被ってしまう。


 町の中でいきなり襲ってくるという可能性は低かったが、それでも鉢合わせするのは面倒くさいし気まずかったので、サイドクエストで時間を潰すことにしたのだった。


「でもこんなところに加工屋なんているのか?」


 LEOではNPCであってもモンスターに襲われる対象になる。だから、NPCの行動範囲にセーフエリア以外の場所が含まれていることは滅多にない。


 アオハルはクロノにそう尋ねたが、クロノはにやりと笑うばかりで二人に詳細を明かさなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。