↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
26/62

第26話 ゴアス廃坑

 ゴアス廃坑は、周辺を広大な鉱山に囲まれたエリアである。

 鉱山にはいくつもの坑道が造られており、無数にある入り口はどれも入り組んだ洞穴のようになっていて中でつながっている。


 出現するモンスターはモグラのような小型の魔物か、かつての鉱山労働者を思わせるスケルトンのみで、脅威度はそれほど高くない。


 クロノは目についた入り口を適当に選び、二人を引き連れて中に入って行く。


「さっき渡したつるはし、ちゃんと装備しとけよ?」


 クロノが二人にそう忠告すると、アオハルもユーリも示し合わせたかのように首を傾げた。


「普通の武器じゃなくていいのか?」


 アオハルが問う。


「モンスターに襲われたら大変ですよ」


 ユーリもアオハルに賛同するように言葉を続けた。


「この廃坑で出てくるモンスターにはなぜかつるはしの方がダメージが通るんだよ。クリティカルヒットになりやすいとでもいうのかな。火力だけでいうと伝説級の武器にも引けを取らない」


 自信満々に解説するクロノのその知識は、もちろんタイムスリップする前のLEOの情報だった。


 サービス開始からしばらくして、多くのプレイヤーに目をつけられたゴアス廃坑は一時期「調整不足」の汚名を着せられていた。


 ネット上で頻繁に上がる評価のほとんどが「レアな素材が手に入るけど出現するモンスターが堅すぎる」である。


 堅すぎる――とはつまり、「防御力が高い」ということを指していて、ここを訪れたプレイヤーたちは自慢の武器でも碌にダメージを与えることのできないゲームバランスに苦言を呈していたのだ。


 そんな折、一人のプレイヤーが公開した情報で評価が一変する。それがクロノがついさっき説明した「つるはし」による攻撃の有効性だったのである。


「相変わらずやたら詳しいな。どれだけプレイしたらそんな情報を知れるんだよ」


「シッ……ダメですよ、アオハルさん。そこ詮索すると、私契約を打ち切られてしまいますから」


 クロノが前を歩き、二人がそれに続く。半ば呆れ気味のアオハルにユーリが注意する声がクロノにもよく聞こえた。


「情報の出所を一切探らない」というクロノとユーリの契約はまだ生きている。その条件に対する対価が「攻略の見学」から「動画用の情報提供」に変わっただけだ。


「クロノさん、空いている時間はほとんどLEOにいるみたいですよ。それもソロで。多分頑張って情報を集めてくれているんだと思います」


「そういや大学の講義もLEOも時間確保のために工夫しているみたいだったな。……ここまで来るとさすがに頭が下がる」


 二人は声を潜めているつもりなのだろうが、坑道の岩壁に音が反射してしまっている。

 かつ、クロノは索敵のために聴覚を上げるスキルを伸ばしているので会話は丸聞こえだった。


 ソロでLEOに入り浸っているのは、単純に未来のラスボス攻略に備えているだけなのだが、ユーリは良い感じに誤解してくれている。


 アオハルの方も、単にユーリと話す話題探しにクロノを利用しているだけで特に怪しむそぶりはない。


 このまま持っている知識をひけらかし続けていると、さすがに二人も疑念を抱くかもしれない。


 クロノが最新の攻略情報を持ち続けていることに、不自然さを感じる日が来ないとは言い切れない。


 もしもそうなった時には、二人と距離を置くか……あるいは――。


 クロノはそんな風に考えつつ、入り組んだ廃坑を迷わずに進んでいった。


「『素材を集める』って言ってなかったか? 全然素材らしきものは落ちていないぞ」


「飛竜区みたいに素材アイテムが落ちているんだと思ってました」


 しばらく坑道を進んでいると二人がそんなことを口走る。つるはしを装備して炭鉱夫のような恰好までしたというのに拍子抜けだ、と言わんばかりの声色である。


 クロノは二人のやる気に軽く苦笑し、それから目的を明かした。


「ここの名前、『ゴアス廃坑』だろ? 目に見える表面部分の素材アイテムは大昔にすべて採掘され尽くしているんだよ」


 もちろん、それはLEOの設定上の話である。


 クロノの求めている素材アイテムは、もっと地層深くの隠されたエリアでしか採取できない。


 話をしているうちに、クロノは目的地にたどり着き、行き止まりとなった岩壁を持っていたつるはしで軽く叩く。


 すると、岩壁がぼろぼろと崩れ落ちその向こうに地層深くまで下る隠し通路が現れた。


「さ、お待ちかねの素材採取はこの先だ。張り切って行こう」


 クロノが珍しく楽し気にそう言うので、アオハルとユーリはお互いに顔を見合わせて不安の表情を浮かべた。


 LEOにおける素材アイテムとは、「武器」「防具」「アイテム」その他すべてのプレイヤーが自作できる物に必要となるアイテムのことを指す。


 LEOにはプレイヤーの役割を決める職業《ジョブ》システムは存在せず、それは生産系においても同じことだが、その代わりに「熟練度」と呼ばれるシステムが存在する。


 生産したいアイテムにも必要な熟練度が定められているため、強力な装備やアイテムを作るには熟練度を上げる必要があるのだ。


 クロノが求めている素材アイテムとは、鍛冶系の熟練度を上げるのに必須級のアイテム、「魔錬鋼」であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。