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第20話 身軽な両手剣士

 この方法の利点は大きく分けて二つある。


 一つは、ナイト・レイド・トレインが勝手にモンスターを呼び出すので、自分たちで探す手間がないこと。


 そしてもう一つが慣れれば、他のモンスターよりも倒しやすいことだった。


 大勢のモンスターが一塊となって突っ込んでくるトレイン状態は、一人で挑もうとすると中々の脅威である。


 攻略にはプレイヤーの技量と慣れ、それなりのコツがいる。

 しかし、ヘイトを分散する仲間が一人でもいれば難易度は大きく下がる。


「まず俺が注意を引く。アオハルはあの軍団の最後尾から順番に倒していってくれ」


 クロノはそう指示を出し、軍団の最前列で配下のモンスターを牽引するナイト・レイド・トレインの前に躍り出る。


 ヘイトを集めやすくするスキルなどは取得していないが、二人しかいないのならあまり関係はない。


 ナイト・レイド・トレインとその一団は、クロノに狙いを定め一直線に馬脚と犬脚を走らせた。


「避けるのも少しコツがいるからな。よく見といてくれよ」


 クロノはそう言って笑い、迫りくるナイト・レイド・トレインの群れをひらりと交わした。


 その光景に、アオハルはなんというか、ある種の感動のようなものを覚える。


 洗練された動きはもちろん、相手のことを知り尽くして軽々と避けてみせる様は闘牛士のようだ。


 ヘイトの主導権は戦闘を行くナイト・レイド・トレインにあるのか、後ろを行く配下たちは避けたクロノを負うことはせずにきっちりと主人の後を追いかける。


「わかったか?」


 一度目の突進を退けたクロノがアオハルを振り返って問いかける。アオハルは自信ありげに答えた。


「ああ、つまり気を付けるのはあの戦闘のボスだけってことだな」


 クロノはにかっと笑って頷いた。


 多くのモンスターが一塊となって突撃してくるこの攻撃は、初見だとかなり厄介に思える。


 しかし冷静に観察すれば、その集団を操っているのがボスのナイト・レイド・トレインでその後ろの手下たちは主人の通ったところをなぞるように行動しているのだとわかる。


 もしもボスの攻撃を喰らってしまえば、その後は手下の猛攻が待っているが、その仕組みさえわかっていれば避けるのはそう難しくない。


「まぁ、一人だと避けられても背後を取れないから結構ジリ貧になるんだけどな」


「ん? 先頭の奴から少しずつ倒していくんじゃだめなのか?」


「やってみたらわかると思うけど、避けながら倒すのって結構難しいんだ。気を抜くと一瞬でボスの槍の餌食になって、そのまま抜け出せずに手下どもに引きずり回される」


 二人が話している間にナイト・レイド・トレインは大きく旋回し、再びこちらに戻ってきている。


「アオハル、やってみろよ」


 クロノが言う。

 本当なら、この役はアオハルにやってもらいたかったのだ。短剣を持ち、機動力に優れたクロノなら避けることは容易い。


 しかし、両手剣を持ったアオハルが手下を追いかけて後方から一体ずつ倒すのは一苦労だ。


 クロノが手下を倒す役目になれば、一度に二、三体は倒せる自信があった。


「いいけど、俺にできるかな」


 アオハルは少し不安そうに自身の両手剣「屍竜の刃」を見つめる。剣で受け止めろ、というのならまだ自信はあるのだが、ナイト・レイド・トレイン相手にそれをやっても後ろの手下たちの餌食になるのは目に見えている。


 両手剣の重さのせいで身軽には動けないし、人馬一体となったナイト・レイド・トレインの動きはかなり早い。


「アオハルはLEOのことをもっと自由に考えていいと思うぞ。既存のゲームと照らし合わせるんじゃなくて、もっと現実のことも踏まえて考えてみろよ」


「どういう意味だ?」


 クロノの助言にアオハルは首を傾げる。言っている言葉の意味が分かりそうで分からない。

 そんなアオハルにクロノは、


「とりあえず装備外してみろよ」


 と軽快な口調で言った。


 ♢


「なるほど。確かにこれなら避けられる……でも怖い!」


 アオハルはそう言って横っ飛びする。恰好はまだ少し無様だが、それでもナイト・レイド・トレインの攻撃をしっかりと避けられている。


 彼が地下一階層で入手したレア武器「屍竜の刃」は現在彼の背中にはない。

 遥か後方、モンスターの攻撃が届かない安全なところに置かれ、持つ主の奮闘を見守っていた。


 通常、どんなゲームでもモンスターと戦う時に武器を装備しないなんてことはありえないだろう。


 素手の攻撃力なんてたかが知れているし、よほどキツイ縛りプレイでもしていない限りやるメリットはない。


 しかし、ことLEOに関してだけ言えば「武器を外した方が都合がいい」場面がいくつかある。


 それがアオハルのように「モンスターの攻撃をひたすら躱したいとき」だ。

 LEOでは各武器に重量が指定されていて、その重さによって持っているときの行動に制限が付く。


 クロノの様に軽い短剣を使えば動きは軽く、両手剣であれば動きも重くなるのだ。

 そして、武器を装備していなければこの制限は解除される。


「動きやすくはなったけどよ、武器無しでモンスターと対峙するの怖すぎるんだけど!」


 避けながら、アオハルは悲鳴に似た声を上げる。


「いいぞ、避けるのは結局タイミングだ。ボスとの距離、それから槍の間合いを考えてタイミングを見計らい、勇気を出して思いっきり飛べ!」


 ナイト・レイド・トレインのヘイトが自分に向かないように気を付けながら、クロノは後方から手下の魔物を次々と倒していく。


 時折顔を上げてアオハルにアドバイスをする彼の表情はどことなく楽しそうだった。

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