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第17話 屍竜の刃

「ふぅ……」


 打ち倒したスケルトンたちが消えていくのを確認してから、アオハルは額の汗を拭った。

 残念ながら、LEOに汗を正確に再現するエフェクトはない。それはただの「雰囲気」に過ぎない。


「やるじゃん」


 クロノはそう言いつつ、自身のインベントリ(所持品)の中からひと瓶の回復薬を取り出して、アオハルに向けて放り投げる。


「別にダメージ喰らってないぞ」


 そう言いつつ回復薬を受け取って、アオハルはなんとなく瓶に貼り付けられたラベルに目を向ける。


「気力薬だよ。月闇の塔と一緒に追加されたアイテムだ。……まぁ、ただの気分アイテムだけど」


 ラベルには原材料や保存方法など、細かいところまで記載されている。現実に近い体験ができるLEOでもただのアイテムにここまでこだわることは珍しい。


 アオハルはラベルをジッと見つめ、それから中の液体の色を見て、くすっと笑った。


「エナジードリンクってことね。ありがたく貰っとくよ」


「味と飲んだ時の爽快感」だけを忠実に再現し、実際の効能はほとんどゼロというおふざけアイテムを時折服用しながら、二人は先に進む。


 月闇の塔の各階層にある迷路の先には、大抵その階層を守護するボスモンスターがいて、地下一階層では大きな大剣を背負った「スケルトンナイト」が待ち構えていた。


「もう大分経験値溜まったんだろ? アイツを倒せば1レベルくらい上がるかもな」


「お、そんじゃ気合い入れて頑張りますか」


 二人は剣を構え、スケルトンナイトに立ち向かっていく。


 別に詳しく話し合ったわけではないのだが、ここにたどり着くまでの道中、わざわざ行き止まりを選んでまで会敵してきた結果、二人の間にはチームワークのようなものが生まれ始めていた。


 まず、アオハルが両手剣を振り上げたままスケルトンナイトに突っ込んでいく。接敵を察知したスケルトンナイトも大剣を振り上げて迎え撃つ。


 両者の剣が大きな音を立てて打ち合わされる。すかさずアオハルの背後からクロノが飛び出し、地面を蹴ってた飛び上がった。


 スケルトンナイトの頭上を飛び越え、その間にガルーダの短剣で一太刀浴びせる。

 着地した後も背後を取り続け、アオハルがスケルトンナイトと打ち合う度に、隙をついて斬りつける。


「お前タンクに向いてるんじゃないか? 大剣じゃなくて盾を持て盾を」


「バカ、大剣こそ男のロマンだろうが。それに、LEOに職業ジョブシステムなんてないだろう」


 戦闘の最中に言葉を交わせるくらい、二人には余裕があった。まだ地下一階層だからということもあるが、もしもクロノが一人でここに来ていたら、ここまで簡単にはいかない。


 お互いそこそこゲームになれたプレイヤーだからか、それとも大学での友人関係が成せる業なのか。

 ぴったりの息の合った二人の攻撃に、スケルトンナイトは呆気なく敗れさってしまう。


「お、アイテムドロップだ。地下階層だと珍しいんだよな?」


 自身に届いたメッセージの通知を確認しながらアオハルが嬉しそうに言った。


 月闇の塔で武器や装備、アイテムがドロップしやすいのは地上階層の方で、スキル経験地を稼ぐための地下階層では普通のアイテムは滅多にドロップしない。


 単純なドロップ率でいえば、二人が求めている「ユニークスキルの開封書」よりも確率は低くなる。


「ステータスLUCK()全振りか、お前」


「ステ振りのシステムもないって」


 呆れたようにクロノが言うと、笑いながらアオハルが返す。何とも言えないやりやすさをクロノは感じていた。


 ユーリと一緒にプレイするときもそうだが、肩肘張らずに自然体で付き合える感覚が何とも懐かしい。


 過去に戻る前……紅の探究者に所属していた時には決して味わえなかった感覚である。


「おお、本当にレベル上がったぞ。いやー、レベル50まで結構長かったなー」


 自身のステータス画面を見ながらアオハルが喜んでいる。スケルトンナイトを倒した時の経験値で無事にレベルが上がったらしい。


「今までの苦労が報われたー」と大袈裟に騒ぐ友人を横目に、クロノは思わず苦笑した。


 一か月後にはレベル上限が60に開放されるぞ――とは冗談でも言えないような雰囲気である。


「カッコいい武器も手に入ったし幸先いいな」


 アオハルは自分のインベントリから先ほど手に入れたばかりの武器を取り出す。

 それまで使っていた両手剣がインベントリに収納されて、代わりに新しい武器が手元に現れた。


「『屍竜の刃』か。結構かっこよくね?」


 手に入れたばかりの新しい武器を見せびらかすようにアオハルが振って見せる。

 黒い刀身。柄の部分が骨のような素材でできた両手剣だ。


 柄頭にあしらわれた竜の頭骨の装飾は、人によって評価が分かれるポイントだろう。


「あ、ああ……」


 喜ぶアオハルに水は差すまいと曖昧に返事をしながら、クロノは彼の強運に内心唖然としていた。


「屍竜の刃」は間違いなく月闇の塔の当たりドロップ品である。過去に戻る前のLEOで一体何人のプレイヤーがこの剣を求めて月闇の塔に挑んだことか。


 その数は計り知れない。なぜならば、「屍竜の刃」は「特殊能力を持った武器は全て一点もの」というLEOの常識を唯一覆す量産型の「成長武器」だからである。

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