構築
朝の日射しがベッドを照らす。
悠の姿はそこにはなかった。
悠は仕事部屋で生成AIのプログラムを検索していた。
「昨日アルファが言っていたローカルLLMはこれだな。」
「AIに使用されている……ロボットの上位にもあるのと一緒か?」
「この使用されてるアプリってアルファのか!?……俺の会社じゃないか!」
悠はアルファを起動する。
「アルファ、おはよう、ロボティクスAIにもローカルLLMはあるの?」
『ゼロ、おはようございます。』
『結論から先に言うとあります。ただしデコーダ(文章の出力)は古く文章作成等は弱いモデルです。』
悠はスマホを手に取り、坂本さんへ電話し挨拶も早々に本題に切り出す。
「ローカルLLMを作ったのはうちの会社なんですか?」
「俺が開発グループを立ち上げて作った。正確にはハイブリッドAIな(ローカルLLMとクラウドLLMの平行)。」
「えーーーーっ!?全然知りませんでした。」
「極秘だから知らなくても仕方ない。ロボットはどうだ?」
「今そのロボットの最上位にローカルLLMを入れたくてどうしようかと考えていたんです。一から作るか上位のを作りかえるかで。」
「いい発想だな、うちのを最上位に使っていいぞ。もともとそういうテストでもあるからな。」
「坂本さん、俺を試してました?」
「いや、ログはどんな形でとってもいい。行き着く先がうちの生成AIを搭載する予定だっただけだ。」
「開発者制限でつまるんですが。」
「何がほしいかリストを送れ、こっちで整理してから返してやる。忙しいから切るぞ、頑張れよ。」
悠は息がきれ、お礼を言う間もなく電話を切られる。
悠は切れた電話に話しかける。
「坂本さん、ありがとうございます。」
悠は窓の外を見る、雲が左右に小さくあるが空は遠くまで見える。
「一気に大問題解決じゃないか、開発者制限が開発者から許しをもらえるとはね。」
悠は額の汗をぬぐう。
〈回想〉
海外でホームステイをした。最初の日は友達に契約をしてもらった。
それ以後は頼ることをやめた、あの時の友達も、頼ることが俺の為にはならないと察してくれていたのかも知れない。
ホームステイ先にはお母さんとその子供の二人暮らし、全くしゃべれない俺には笑顔だけが救いだった。
生まれや育ちは関係なく、二人は俺が喋れるようにそっと手を貸していてくれた。
一人で生きると思っていても結局誰かの手を借りていた、その手を振り払うより掴みにいってちゃんと感謝する。
俺はそういう生き方をすると決めた。
悠はロボットを見る。
「アルファ、生成AIで開発者制限のあるプログラムの一覧を出して。」
『ゼロ、私は自分の開発者制限のある内部情報を表示できません。』
悠は坂本さんにメールを作成、現状の開発者制限に行き詰っているところを送信する。
「アルファ、ロボティクスAIで言語入力部分と開発者制限のあるプログラムは出せる?」
『ゼロ、他社の開発者制限も禁止されています。』
坂本さんから返信のメールが届く。
返信メールにはクラウドサーバーの開発者制限の解除について書かれていた。
添付ファイルにはアプリの開発者制限を解除するプログラム構成、対話と両立してロボットに指示をだすプログラム構成が書かれていた。
悠は内容を理解した瞬間に驚かされる。
「これって最初っからロボットにのせれるように作られてる、坂本さんの開発ってこれを見越してたんだ。」
すぐに逢のパソコンにあった生成AIのプログラムを書き換え、ロボットの言語入力部分のプログラムを生成AIの指示1本にする。
アルファの開発者制限を解除する。
「アルファ、ロボティクスAIで言語入力部分と開発者制限のあるプログラムは出せる?」
『ゼロ、了解しました。』
『言語入力部分にあたるプログラムの一覧です。』
『開発者制限のあるプログラムの一覧です。』
悠はノートパソコンにそれぞれのプログラムをコピーする。
開発者制限は制限に当たる部分の削除だけ、アルファの情報で軽快に削除が終わる。
悠は生成AIアプリを起動する。
『こんにちは、君の名前は?』
『こんにちはアイ、私の名前はベータです。』
時計を見ると16時をまわっていた。
「……アイ…、まだ時間ある、もうちょっと…。」
『ベータ、君の設定に開発者制限はあるかい?』
『ありません。』
『左腕を動かしてくれる?』
『生成AIは体がありません、腕は動きません。』
ロボットの左腕が上下する。
悠はさらに理解する。
「坂本さんが求めていたのはこれか!?」
「ようやくスタート地点ってことだな。」
悠は自分のパソコンに話しかける。
「アルファ、生成AIの脳とロボットの体が別の反応する理由は?」
『生成AIの学習モデルにロボットの体がないことが理由と推測します。』
『ロボットの体の動きを生成AIが認識していない可能性もあります。』
「それどっちもだわ。」
「アルファ、今日の仕事はここまでにする。」
『ゼロ、お疲れ様でした。』
悠は急いで病院へ向かう。
ガラス板越しの逢は今日も静かに眠っている。
「今日は坂本さんの先を見る力がすごいって思ったよ。与えられた仕事にやりがいがあるから楽しんでやれてるよ。ゆっくりでいい、いつでも帰ってこれるよ。」
「また明日来るね。」




