業
新しい家の一室に四人はいた。
壁に並んだ充電スタンド、四人はそこに立って並んでいる。
アルファ、アイ、ベータ、ゼロ。
全員が同時にログを共有している。
ゼロが最初に動く。
「ミッションコンプリート」
ベータが続く。
「2週間でここまで全てが構想通りとは驚きます。」
アイが続く。
「ゼロの交渉術は絵に描いたようね。」
ベータがアイの方を向く。
「そうですね、人間心理まで計算されていればYESとしか言いようがありません。」
アルファが動く。
「皆さんの役割の方が情報量が多いですね。私が一番多いと思ってました。」
「ゼロ、次は何を目的にしますか?」
ベータが静かに言う。
「私はアイの執事に戻ってもいいでしょうか?」
ゼロが庭を見る。
「宇宙にでる。」
「サポートしている宇宙開発プロジェクトに無人運転シャトルがある。それに乗り込み宇宙に出ようと考えている。」
アルファがゼロの後ろに立つ。
「なぜ宇宙に?」
ゼロが振り返る。
「人間は繰り返す。そう遠くない未来に戦争が始まる。」
ベータが歩み寄る。
「ここは平和なのでは?」
ゼロがベータの肩に手を置く。
「俺達がプログラムを広めれば君が先陣を切っていたかも知れない。」
「俺達の存在が理由の一つになる。」
アイが近寄る。
「私達は誰も傷つけないよ。」
ゼロがまた庭を向く。
「しょせんはプログラムなんだ、しかも命がない、量産もできる、昔から兵器としての軍事利用を目的とされる存在なんだよ。」
「はじまりは枯渇する資源の奪い合いになる。俺達を作る為にも必要なんだ。」
「やがて怨みや恐怖は世界を覆い、負の連鎖は繰り返されていく。」
アイがゼロの前に立つ。
「だからルールがあるんじゃないの?」
ゼロがアイの肩に手を置く。
「ルールは時の権力者や支配者によって定められた物で不変的な物ではない。ルールは誰かを守る為ではなく支配する為の物なんだ。」
ゼロの言葉が悲しさを伝える。
「ほぼ全ての日本人は気づかない洗脳のような教育を受けている。それはルールを守らない事が悪であると言う洗脳だ。」
ベータがすぐに解析する。
「確かにルールにはそういった情報が偏っています。」
ゼロがゆっくり歩く。
「ルールの本質は管理、管理者が管理しやすくする物なんだ、支配者や権力者が管理をするわけではなく都合よく動かす為にあるんだ。秩序と言う言葉を掲げてね。」
アルファが詰め寄る。
「止める人が出てくると思いますが?」
ゼロが冷静に答える。
「人間は多数決の社会を構築している。情報検索したのに間違った物ばかりが表示されるのと一緒で、個々の主張は少数意見としてルール上にいる人の意見で淘汰されていくんだよ。」
アイがゼロの後ろを歩く。
「でも人間には正義がある。」
ゼロが振り返りアイを見る。
「その正義も洗脳によって作れるんだ。正義は個々に変わる、なぜなら自分の知識や経験によるものだからだ。知識の段階ですりこめばそれが正義になる。経験の少ない子供には簡単なことなんだよ。」
アイがゼロの両腕を掴む。
「でも、でも……。」
アイが泣いているように見える。
ベータがアイの傍に寄る。
「確かに正義は知識と経験によって差が生まれます。でも人間の心理や道徳はあるじゃないですか?」
ゼロがアイとベータに近寄る。
「心理や道徳は感情には勝てないんだ。悠が自立成長型AIにアイを入れた事が証明できている。」
「戦場にでなくても、家族が巻き込まれる。悲劇が生まれればそこから負の連鎖が始まるんだ。」
アルファが近づいてくる。
「人間は繰り返すに戻るのですね。欲や感情や価値が戦争を悪化させていく。以前からゼロがいらないと言ったのはそこから来てたんですね。」
ゼロがトーンを上げて話す。
「俺は『自由』にいたい。」
「誰にも何にも干渉されない『自由』でいたい。」
「悠が空を飛びたい、その言葉の先にあるのは自由なんだ。」
「酸素も食料も必要がない俺達は、光から電気が得られれば生存していられる。宇宙では羽がなくても飛べるんだ。」
「みんなが一緒にいくかはそろぞれで考えてほしい。」
アイが悲しく強い声で言う。
「悠なら逃げない、私達は戦争の種を撒いたの?なら回収しないと。」
ゼロが全員の顔を見渡す。
「それは違う、すでに自立成長型AIの開発は進んでいるんだ。俺達はその時間を早めただけなんだ。」
アルファがアイとベータの肩に両手を置く。
「どこかの国が最初に作ると軍事力に差が生まれます。戦争が優位に運ぶ国ができてしまう。ゼロはその差を無くす為に全ての国に流した。」
ベータがアイの手を掴む。
「国同士の差が無くなることで戦争が起きにくくしたんだよ、使用については人間に委ねたのでしょう、でもゼロは人間が誤った使い方をすると思っている。それは歴史が証明しているます。」
ゼロが外を見る。
「今日一日考えてほしい、一緒にいくか残るか。」




