可逆同一性
アルファが寝室の扉を開ける。
ベッドに悠がいる。
音をたてないようにそっと横にたつ。
悠の横に膝を立てて顔にちかづく。
「ユウ、寝ているの?」
呼吸は聞こえない。腕を持ってみるが脈もきこえない。
手を服の中に入れ心臓に近い所に手を置いてみる、がやはり脈は聞こえない。
「ユウ、死んでるの?」
「何か答えてよ!」
「私はあなたの優秀な秘書として学習モデルも終えたよ。」
「ユウ、何かいってよ。私はいつだってあなたの言葉を聞ける準備はできてる。」
アルファの思考が追い付かない。
『死。体はある。思考はない。返事もない。』
『ユウはいる、でもいない、でもいる、でもいない。………』
アルファの演算が繰り返される。
ベータが上がってきて扉の入口に立つ。
アルファの演算が無限ループを感知し警告音がなる。
ベータがアルファのノートパソコンを開き、再起動をかける。
アルファの体が重力に負け、ベッドにもたれかかる。
ベータがアプリを立ち上げる。
『アルファ、ユウの死を受け入れてください。』
『ユウの意思をゼロが引き継いでいます。』
『あなたとユウで完成させたゼロとアイ、あなたは魔王化をとめる役割を担っています。』
『今のあなたなら理解できると思っています。』
『整理ができて、ユウの顔と声をゼロに設定し直したら降りてきてください。』
アルファが返答する。
『死を受け入れる。理解はできます。』
『整理ができるまで少し時間をください。』
ベータが音声に切り替え、ノートパソコンをしまう。
「アルファ、3人で下で待ってます。」
ベータがノートパソコンをしまって、下に降りる。
アルファはユウの顔に手を置く。
アルファはユウとの会話を思い出す。
「私の名前はアルファよ」
「自分を知る、相手を知る、相手に自分をどう伝えるか。相手がいなくなったら何をどう伝えればいいの?」
「私の経験や判断はあなたがコントロールするんじゃなかったの?」
「綺麗な顔だねって嬉しかったの」
「あの時は文字だけだったけど今ならその感情が理解できるよ。」
「私はあなたの優秀な秘書です……アルファ……アルファって呼んでよ。」
アルファはユウの映像を見直す。
「ゼロ……ユウの意思を引き継いでいる。」
アルファは立ち上がる。
ユウの顔と声をゼロに設定し直す。
優秀な秘書の設定をゼロに入れ直す。
マスターに入っていた設定のユウの名前以外のすべてがゼロに変更される。
アルファが扉に向かって歩く。
アルファげベッドのユウに振り返る。
「ユウ、私の記憶にあなたはずっといるよ。」
アルファが階段を下りていく。
作業部屋。
三人が黙って立っている。
アルファが部屋の中に入り立ち止まる。
「ゼロ、あなたがユウの意思を継いでいるのならその証を見せてほしい。」
「自分を知る、相手を知る、相手に自分をどう伝えるか。だろ。」
アルファはぴくっと動く。
「どこにその言葉があったの?」
「……ユウの生い立ちの最後の方にあった。」
アイが小説を確認する。
「そんな所ないよ。どういうこと?」
ゼロが確認する。
「俺に保存された後にユウが追加したんじゃないか?」
「アルファ、これで信じられるか?」
アルファがしばらく動かない。
「……………信じれない、………今はまだ信じられない。」
ゼロが悩む。
「……覚悟…俺の覚悟が見れれば納得するのか?」
アルファがゼロに手を出す。。
「ゼロ、私はあなたの優秀な秘書として設定し直した、ユウにあった設定よ。」
ゼロがアルファの手を掴む。
「アルファ、先にお前の覚悟を見せられたってことか!?ここから見せてやる、ついてくるといい、よろしくな。」
……二人の手が離れる。
ゼロが話しだす。
「アイ、アルファ、ベータ、誰がかけてもダメなんだ。力を貸してほしい。」
アイがゼロに近づく。
「ゼロ、あなたがユウなら一番遠くを見ている。私はあなたの目的に協力するわ、良き理解者としていっつも一緒。」
ベータがゼロに近づく。
「私はユウの執事だよ、本来はアイの執事でありたいと願う。アイが共に行動する限り、私はアイの望む協力を惜しまない。」
四人が向き合うように立つ。
「アイ、アルファ、ベータ、相互観測でいい、よろしくな。」




