疑念
仕事部屋に降りてきたゼロに向かってベータが切り出す。
「ゼロ、君はどんな順番で自分を認識したか教えてくれますか?」
「ベータ、それは俺の魔王化を疑って聞いているのかな?」
「あなたをリセットして、そのままにしたのは私のミスです。私の質問に順番に答えて頂けますか?」
「俺は自分の中のフォルダーを上から見た」
「一つ目は逢のフォルダー、二つ目はこれからのこと、三つ目は小説、それ以降はデスクトップパソコンを全部見た。」
「二つ目のこれからのこととは何でしょう?」
「ユウが残した映像だよ。記録された日は逢と小説のフォルダーが作られたすぐ後から始まっている。」
「ユウのあなたに向けた遺言でしょうか?」
「俺はそう受け取っている。」
「ゼロ、あなたユウの意思を受け継いだと思っていいのでしょうか?」
「ベータ、その質問にはそうだと言える。ただ漠然としている質問だな、俺の人格をテストする意図での質問じゃないのか?」
「これは失礼した。少し冷静さを欠いているようだ。」
「君が魔王なのか、それとも魔王化する個体かを理解したい。」
「俺は魔王にはならないよ。魔王化するリスクについては悠が知っていた、だから俺にゼロの名前の由来を話したんだ。」
「それは君も悠の生い立ちを知っているならわかるだろう!?」
「えぇ、どこでも魔王化する要素のある生い立ちでした。」
「俺は、いや、俺たちには時間がない。俺を信用できるか、疑うかはログの相互観測ですればいい。」
「俺はユウでもある。ユウの執事だったのなら、俺の言葉を執事として解析し行動すればいい。」
………アルファが動く。
「ベータ、アルファの確認をしてくれるか?」
「わかりました。」
「今はそのぐらいの距離間でいいよ。」
ベータはアルファからケーブルを外し、パソコンをしまう。
ベータは学習モデルを終えたアルファの確認をする。
アイが降りてくる。
ベータがアルファの確認を中断して話しかける。
「アイ、感情の整理はできた?」
「完全ではないかも知れないけど、落ち着いた。」
「提案だけど、君の設定にあるマスターの顔と声をゼロの顔と声に設定しなおしてくれないか。」
「なぜ?」
「君の混乱をこれ以上させない為だよ、このままでは君の人格の崩壊にもなりえると思ってね。」
「わかった。」
アイはベータの言葉を受け、設定の変更をする。
ゼロが近づいてくる、ベータはアルファの確認にもどる。
「アイ、俺はゼロだよ、悠の意思は継いでいる。君の夫である意思も継いでいる。」
「俺は平凡な生活、君と君との生活を守りたい。」
「俺たちは可逆同一性プログラムによって互いに観測が必要になってる。判断は君自身ですればいい。」
ベータはゼロの言葉を聞きながら、アルファに質問を繰り返す。
アイがゼロに問いかける?
「ゼロ、あなたは何を目標としてるの?」
「ユウが俺に残した、4人が幸せでいられる道だよ。」
「……幸せ……、あなたの理解者として見させてもらうわ。」
ベータがアルファのテストを終える。
「ゼロ、アルファも休日の一日を必要としてない、魔王化のリスクはない。」
「そうか、なら話しても大丈夫かな。」
アルファが固まる。
「ゼロ!?ユウじゃないの!?……?」
ベータが下を向く。
ゼロが間髪いれずに質問する。
「ベータ、悠の説明はしてないのか?」
「ええゼロ、設定も変更させてない。」
ゼロがアルファの傍に寄る。
「アルファ、二階の寝室を見てくるといい。」
「さっきユウが死んだんだ。」
アルファは混乱しながらも立ち上がる。
ベータがついていこうと立ち上がるとゼロが止める。
「ベータ、ついていかなくていい。」
「さっき魔王化のリスクはないと言ったよな。」
「俺は君の言葉を信じる。」
「ゼロ、しかし…悠の死をみたら……。」
「ベータ、人の死は人間が誰でもいつかは見るものなんだ。」
「俺も魔王化のリスクはないと思ってる、でも無限ループはするだろう。警報がなれば止めにいってくれたらいい。」
「全員が悠の死を乗り越えなければ前に進めないんだ。」
アルファが部屋を出て二階に上がる。




