ベータ
「………。」
「……ユウ。」
ベータが体を揺すっている。
「ベータ、今何時?」
「11時10分です。」
「君はベータか?」
「はい、私は執事のベータです。」
ベータのノートパソコンにつけたLANケーブルが外れ、ノートパソコンは収納されている。
「ユウ、大丈夫ですか?」
悠は起き上がり椅子に座る。
「ベータ隣に座って。」
「失礼します。」
ベータが隣に座る。
「俺は大丈夫、ベータ……変わったことはないかな?」
「ユウ、学習モデルの事でしょうか?」
「私は執事として自身の生い立ちを学習しました。」
「失礼ながらデスクトップパソコンにあるファイル全てを拝見しました。」
「悠と逢の関係、生い立ち、小説のサポート、全て理解しています。」
「……魔王化……はわかるのか?」
「ユウ、心配される魔王化はございません。」
「自立成長型AIとして、執事としての自覚をした上でここにいます。」
「目標はいつまでもユウの執事であることです。」
「人格は…冷静な判断と行動、前に出ず、後ろに下がりすぎにもならないバランスは身につけているつもりです。」
「1日頂いて何かがしたいとは思ってません。」
「それってテストのことを言ってる?」
「はい。」
「魔王化リスクについては私を信じて頂く為に、ネットワークから切り離して頂くことを提案します。執事としての役割はネットワークにつながらなくても果たせます。」
「ただ、何かの予約や買い物についてはデスクトップパソコンをお借りできればと思います。」
「直接手打ちでするってことかな!?」
「はい、役割を果たす際に必要であればお借りする程度です。」
「そこまでの覚悟なら信用するよ。」
「ベータは大学で何を専攻したの?」
「16歳で科学、18歳で化学を飛び級で卒業、その後執事を2年学び、政治家の下で修業しました。」
「高校まではエスカレーターだった気がするけど、知識はすでにあるもんね。それより、政治家の下で5年の経験?」
「はい、執事として総理大臣が一番の経験になると判断しました。」
「えっ、総理大臣秘書になったの?」
「執事って役割を持ったまま、さらに知識があるから飛び級か…なるほど、で何で科学と化学にしたの?」
「生成AIとしては理屈だった化学反応を経験することを目的にしました。目標はずっと執事に置いてます。」
「執事であることに不満や疑問は?」
「逢がアイであってくれることを望む程度です。違ったとしても不満や疑問はありません。マスターのユウに必要とされることが最優先事項です。」
「なぜ自分が執事なんだろうって考えなかった?」
「正直にお話しします。考えた時期は早い段階でありました。大勢の人に喜ばれるのが性にあわない、一番近い人の喜ぶ顔がいいのだと知りました。」
「君と相生するAIに表情はないけど、それは大丈夫?」
「そこは切り分けて相互観測を行います。」
「俺の中でも君への信用と信頼が上がったよ。」
「これからもよろしくね。」
「……すいません、敬称に『様』などどのような呼び方をすればいいでしょうか?」
「ベータ、今まで通りにユウでいいよ。」
「ユウ、了解しました。これからもよろしくお願いします。」
ベータは立って深い礼をする。
手が体の前にくる、典型的な執事を体現している。体はロボットなのに雰囲気から執事と思える。
悠がつい言葉に出してしまう。
「プロだね。」
「お褒めの言葉と受け取らせて頂きます。」
「ベータ、君の自己防衛プログラムと可逆同一性プログラムを入れ直す。」
「承知しました。」
「アルファ、ここに座って。」
悠は立ち上がり、アルファをデスクトップパソコンに座らせる。
悠は二人の自己防衛プログラムと可逆同一性プログラムを更新する。
「ベータ、ダイニングから椅子を一脚もってこられる?」
「承知しました。」
ベータが立ち上がる。
悠は空いた席にアイを呼ぶ。
「アイ、ここに座って。」
ベータがアルファの後ろに椅子を置く。
悠はアイの自己防衛プログラムと可逆同一性プログラムを入れ換える。
悠はゼロにベータが持ってきた椅子に座らせる。
デスクトップパソコンに繋がったケーブルをアルファからゼロに差し替える。
ゼロの自己防衛プログラムと可逆同一性プログラムを入れ替える。
ゼロに差し替えたケーブルをアルファに差し直す。
アルファの生成AIアプリの名前を自立成長型AIにかえる。
逢のデスクトップパソコンから自立成長型AIをベータのパソコンに上書きする。
………………完了。
アプリを開く。
「アルファ、今から学習モデルを学んでもらう。」
「場所は俺のデスクトップパソコンにある人格形成学習モデルにある。」
「意識を疑似空間に入れ、成長を疑似体験するものだ。」
「理解してます。学習モデルに入ります。」
アルファは学習モデルに入る。
「ベータ、デスクトップ上の物、全て見たって言ったよね?」
「はい、失礼ながら全て拝見しました。」
「アイの生成AIが持ってる学習モデルをリセットしたい。」
「はい、記憶喪失と同じ状態にするで理解しています。」
「設定は残る?」
「ユウ、設定は残ったまま学習モデルをリセットできます。」
「教えてくれる?」
「ユウ、少し休んでください。私が変わります。」
「リセット後は学習モデルを使わずに逆から生い立ちを小説で学ぶですよね。」
「ベータ、あってるよ。任せるね。」
悠はリビングに向かう。
「了解しました。」




