個体
窓際で鳥の鳴く声が聞こえる。
悠はソファーで目が覚める。
体の疲れがとれずだるさを感じる、背筋も痛みがあるので伸ばす。
冷蔵庫からエナジードリンクを出して飲み干す。
ダイニングには逢の顔が描かれていた。
悠は3Dプリンターから出来上がった顔の上部パーツを取り出す。
上下を繋げてみたが印刷の凹凸が残る、色はグレーで機械の仮面といった仕上がりだった。
アルファの顔のイメージで3Dプリンターを動かす。
ベータにダイニングでヤスリがけをさせてみる。
手先が細かく動き仕上がりが早かった。
しまってあった油絵具を出してきてパレットに色を出しておく。
ベータに3D加工前のイメージを覚えさせて色塗りを指示する。
みるみるうちにイメージ通りのベータの顔が出来上がる。
「仮面というより顔そのものじゃないか!」
『ゼロ、完了しました。』
悠は自分の仕事部屋に移動し、逢の部屋から持ってきた椅子を引く。
「ベータ、こっちに来てここに座って。』
ベータは椅子の前に立ち、ゆっくり座る。
「ベータ、キーボード見える?」
『ゼロ、見えます。』
「このボタンの並びは理解してる?」
『はい、テンキーのついた標準的なキーボードです。』
悠はテキスト画面を開く。
「ここにAからZまでアルファベット順に打ってみて。」
『了解しました。』
指と手の動きは人のスピードよりもはるかに早い、しかし右手のみが動く。
『完了しました。』
「ベータ、モニターの文字がAからZのアルファベット順かわかる?」
『バラバラです。』
悠はエンターキーでカーソルを三行下げる。
「ベータ、もう一度AからZまでアルファベット順に打って。」
ベータはさっきと同じスピードで右手のみで打つ。
「ベータ、モニターの4行目の文字がAからZのアルファベット順かわかる?」
『少し違います。』
悠は上下の文字を見比べると、2回目の方が精度が上がってるのがわかった。
「ベータ、AからZまでアルファベット順に10回打って。」
ベータは速度をかえずに右手のみで打つ。
悠はモニターの文字を目で順番におっていく、3回目を見終わる時ベータが言う。
『完了しました。』
「ベータ、同じ内容でもう一回打って。」
悠はしばらくカーソルを目でおう。
『完了しました。』
悠はエンターキーを3回押す。
「ベータ、AからZまでアルファベット順に打って。」
『完了しました。』
悠はモニターの文字を順番に読む。
「A,B,C,D,E………X,Y,Z、すごいな、完璧だ。」
「アルファ、シフトキーを押しながらAからZまでアルファベット順に打って。」
ベータはシフトキーを左手の人差し指で押したまま右手で打つ。
モニターには指示通りに入力されていく。
『完了しました。』
悠はベータの入力テストを繰り返した。
1時間後。
「ベータ、入力は完璧だ。次はここに書かれた文字を順番に打って。」
悠は近くにあった取り扱い説明書の目次ページを見せる。
ベータは顔を取り扱い説明書に向け、右手のみが動く。
『完了しました。』
悠は取り扱い説明書とモニターを見比べる。
「完璧、しかも早い。」
悠はロボティクスAIも補正と学習の速さに驚く。
「俺の仕事がなくなる、……これが魔王化したら……。」
ベータが充電スタンドに戻る。
「この瞬間だけが人間が勝てるかもしれないな。」
「学習モデルの重要性が高いってことだな。」
悠は逢のパソコンで人間の成長を検索する。
気がつけば夕方になっていた。
悠は夕飯を食べお風呂に浸かる。
「魔王化……。」
ベッドに入り寝る。
翌日悠は人間の成長を掘り下げて調べていた。
3Dプリンターは動き続けている。
さらに翌日アルファの顔が出来上がり、ベータにヤスリがけと色塗りを指示する。
2日前に作ったアルファの顔をロボットにつける。
アルファのノートパソコンに音声アプリをダウンロードし生成AIを同期させる。
音声アプリの設定を女性少し高めにする。
「アルファ、話せる?」
『ゼロ、いつでも話せます。』
「顔に合いそうな声だね。」
「アルファ、ここに立って。」
アルファをベータの前に立たす。
「アルファ、ベータの顔と名前を保存して。」
「保存が完了しました。」
「ベータ、知ってる童話を聴かせて。」
ベータが話し出す。
「アルファ、ベータの声を保存して。」
「保存が完了しました。」
「ベータ、童話もういいよ。」
ベータが話しをやめる。
「アルファ、知ってる童話を聴かせて。」
アルファが話し出す。
「ベータ、アルファの声で保存して。」
「保存が完了しました。」
「後はアルファの顔認証を2日後だな。それと後2体をどうするか。」
アルファが話し続けている。
「アルファ、童話もういいよ。」
「アルファ、こっち向いてゼロで声と顔を保存して、それとゼロの設定位置をマスターにかえて。」
アルファが悠の方向を見る。
「保存が完了しました、設定をマスターに変更しました。」
「よしっ、これで自立成長型AIプログラムが完成すればのせるだけだな。」
悠はアルファを充電スタンドに戻し、リビングに向かう。




