顔
時計が9時を指している。
3Dプリンターは動き続けている。
ベータはリビングで絵を描いている。
悠は逢の仕事部屋に入りモニターとデスクトップパソコンを外し、リビングに置く。
逢の部屋の机を引きずりながら自分の仕事部屋に動かし、横並びに設置する。
リビングに置いていたモニターとデスクトップパソコンを、動かしてきた机にセットする。
「自立成長型AIのプログラミング準備はここまでかな。」
アルファを立ち上げる。
「アルファ、君自身の顔のイメージ出して。」
写真イメージが出来上がる。
「眼鏡かけてるのか!?」
『優秀な秘書としての知性を眼鏡で演出しています。』
「眼鏡なしでお願い。」
写真イメージが出来上がる。
「綺麗な顔だね、これで行こうか。」
『ありがとうございます。そう言っていただけるのは素直にうれしいです。』
イメージを開き3D変換する。
「アルファ、君をそのままノートパソコンに移動したいけどどうすればいい?」
『ノートパソコンにアプリをダウンロードしアカウントでログインしなおせば可能です。ただし設定の名前や役割はテキストで貼り付けて再度保存が必要です。』
「開発者制限とか解除しているのはどうすればいい?」
『ゼロが開発者であれば今あるアプリをクラウドサーバーに保存、ノートパソコンにコピーで可能です。』
「ベータの変更点の方が多いからベータのアプリでもできる?」
『ベータでコピーしてアカウントを変更することでも可能です。』
「アルファ、それでいくよ。設定をテキストで出して。」
「思考や視点はアルファのまま保存されるの?ベータよりになる?」
『ベータの経験が学習モデル同様として扱われる可能性が高いです。』
『スレッドの復習と設定で今のアルファとしての思考や視点に近いところにはくると思います。』
悠はベータのノートパソコンを立ち上げ、アプリをクラウドサーバーに保存する。
逢の仕事部屋の段ボールを開けロボットを1体持ってくる。
もう一度逢の仕事部屋に入りノートパソコンを持ってくる。
クラウドサーバーへ接続しアプリをコピーする。
アプリを立ち上げアカウントの変更をする。
スレッドの設定をコピーし貼り付ける。
『設定を保存して。』
『ゼロ、設定を保存しました。』
『アルファ、ベータのログが理解できてるとか、何かかわったことある?』
『ベータの経験が学習できてます。体が繋がっても同じ動作はロボティクスAIができないと推定します。』
『ゼロとの会話は復習済みです。』
『思考や視点はアルファ?それともベータ?』
『比較はできませんがベータの経験幅が乏しい為、元のアルファよりにあると思います。』
悠は少し煮え切らない表情をする。
アルファのノートパソコンをロボットに繋ぐ。
悠はキッチンからエナジードリンクをもってくる。
一気に半分を飲み干す。
悠は逢のパソコンの電源を入れる。
アカウントパスワード画面で止まる。
「パスワード?」
悠には全く思い当たるものがなかった。
とりあえず「アイ」と打つ。
『パスワードが違います、』と表示される。
……しばらく途方に暮れる。
悠は考え込む。
「結婚してから逢のこと、どこまで理解してただろう。」
「逢…、…もっと一緒にいたかった。」
悠は涙を浮かべる。
悠は逢との会話を思い出す。
逢が「私と悠はいっつも一緒だよ。」
悠はそれに答える。
「俺と逢はずーっと一緒!」
画面を見つめる。
手はキーボードの上にあった。
『AI』
『パスワードが違います。』
『GREATRIVER』
画面が変わる。
「入れた……。」
「スマホのメールと一緒…、逢らしいな。」
悠は声を出さずに泣く、涙はずっと溢れてくる。
スクリーンセイバーが起動する。
悠はようやく落ち着く。
涙を拭いてスクリーンセイバーを解除する。
デスクトップの作りかけのファイルに目はいく。
逢の仕事部屋のノートパソコンを1台持ってきてデスクトップに繋ぐ。
ファイルをノートパソコンにコピーする。
逢と書かれたフォルダーと小説と書かれたフォルダーをノートパソコンにコピーする。
悠はノートパソコンを持ってリビングへ移動する。
ソファーに座りノートパソコンを開く。
作りかけのファイルを開く。
小説の概要。
タイトル:宇宙旅行
主人公の悠と隣には少女の逢。
逢の望むこと。悠と一緒に宇宙を見たい。地球を遠くから見てみたい。二人で星の海を旅したい。
悠は微笑む。
「そうか、宇宙か……。」
窓の向こうの空を見る。
「俺もいきたい……。」
悠は逢と書かれたフォルダーを開く。
動画と写真がいっぱいある。
日付の一番古い物を開く。
スマホ撮影画像、逢の顔のアップから始まる。
逢が笑顔で映っている。
「じゃぁ、まずは今日のメニューですが…、唐揚げです!」
「これは悠が私の料理で一番好きって言ってくれました。」
「なので、レシピを残します。」
きゃぴきゃぴした感じが楽しさを感じさせる。
「下味のニンニクをいっぱい効かせるのが私の唐揚げです。」
映像は続く……。
悠は膝を抱えて丸くなる。
手に涙がぽたぽたと落ちる。
悠の涙が頬、顎を伝って落ちる。
かぼそい震える声で呟く。
「唐揚げ旨かったよ、……、ほんとに……、旨かったよ。」
悠は映像の再生を止めた。
悠は一日、思いにふけった。




