第22話:響け、再生の歌
光の歌声『光の足跡』が会場を支配し、静寂の後に嵐のような喝采が巻き起こった。
YouTubeの同時接続数は20万を超え、クラウドファンディングのカウンターが激しく回る。
その時、生配信の画面に**「100万円」**の支援とメッセージが届いた。
成瀬がその内容を読み上げる。
『光……。お母さんから奪った金に、配信で稼いだ分を合わせた。これしかなくて、本当にすまない。……お前の歌を、世界に聴かせてやってくれ』
それは、父親からの謝罪だった。全額には程遠いが、今の彼が差し出せる全て。光はその金額の重さに、声を詰まらせた。
そこへ、ピアノから立ち上がった一条医師が、会場の招待客たちを見渡して凛と告げた。
「皆さん。今、この場に私の恩師であり、世界最高の眼科執刀医と呼ばれているハミルトン教授がオンラインで繋がっています。彼は光さんの歌声に感銘を受け、自ら執刀を申し出てくれました。……ただし、海外からの招聘と特殊な手術には、あと少し、資金が足りません」
一条は、会場に並ぶ政財界の重鎮たちに不敵な笑みを向けた。
「世界一の歌声と、世界一の医者。この二つを繋ぐのは、今ここにいる皆さんの『閃き』ではないかしら? ……成瀬の次の新作に、あなたの名前を出す権利をオークションにかけてもいいわよ?」
一条の強引かつ鮮やかな煽りに、会場のセレブたちが動いた。
「面白い。その歌声の未来に、私も投資しよう」
「私の会社からも追加で支援させてもらう」
父親が届けた100万円という「火種」が、一条の戦略によって巨大な支援の渦へと変わっていく。
カウンターがついに、海外での手術費用を含む目標額に到達した。
「……やったわ、光さん」
一条が光の手を強く握りしめた。
俺は、光の足元で彼女を見上げた。
世界中の善意と、一条の機転、成瀬の物語、そして父親の僅かな贖罪。全てが重なり、光の手術が現実のものとなった。
だが、俺の喉はもう、鳴らすことしかできない。
(……よかったな、光。もうすぐ、お前の世界に完全な光が戻る)
第23話:予告
光、ハミルトン教授による手術のために渡航が決定する。
しかし、喜びも束の間、光は残酷な現実を突きつけられる。
「……ヒゲとキラを置いて海外になんて、私、絶対に行かない!」
愛する猫たちとの離別を拒み、手術を拒絶する光。
その悲痛な叫びを聞きながら、言葉を失ったヒゲは、ある「最後の戦略」を決意する。
次回、「光の向こう側」。




