↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪人  作者: 天内翔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/24

病院での生活

次に目を覚ましたのは病室のベッドの上だった。

 医者とナースが何か作業しているようだ。

 佐伯茂が意識を取り戻したことに気づいた医者がこっちを向いて言った。

「ああ、やっと気づきましたか。あなたの意識が戻るまでおよそ三日ほどかかりましたよ。さっそくですがあなたの容態について簡単にご説明しますね。肋骨が二本、鎖骨が一本折れていて、他には打撲や擦り傷、軽いやけどなども見受けられます。二週間ほどの入院を要しますが、大丈夫ですか?」

 と心配するような優しい笑顔とともに訊かれた。

 俺は、そうかそんな長い間気を失っていたんだなと説明を聞いて納得した。

 さすがにこの体の状態では、生活にとても支障をきたすと思い、こう返答する。

「はい。さすがにこの状態では、仕事をするどころか、まともに外を出歩くこともできないでしょうし。お願いします」

「二週間様子を見て、まだ大丈夫でないとこちらが判断をした場合、二週間以上入院して貰う可能性もあることをご容赦ください」   

 その話を聞き、俺は、そんなに長い期間も何もせずにはいられないが、現時点ではなにもできないことにもどかしさを感じた。

 とりあえず俺は、今疑問に思っていることを順に訊いていこうと決めた。

「そういえば俺の持っていた持ち物ってどうなりましたか?」

「持ち物ですか? 例えばどんなものをお持ちでしたか?」

 そう訊かれてポケットの中に何が入っていたか思い出して一つずつ言っていった。

「たしか俺が持っていたのが、無線機と、スマホと、電子タバと、家と自転車の鍵、それとPASMOだったと思います」

「残念ながら、詳しくは存じ上げませんが、殆どが使いものにならないと思います」

 俺は、それを聞いて絶望した。

 とりあえずもう一つ訊いておくべきことを訊くことにした。

「被害状況はどうなっていますか?」

 質問しながら、自分達の間抜けさと黒猫のロボットを送ってきたやつに対する憤りを思い出していた。

「そうですね。私の口からお伝えするのが最善かわかりませんが、言っておいたほうがいいでしょう。テレビで報道されている現在の被害状況は死傷者多数で、確認できているだけで、死者四人、負傷者三十二人です。詳しくは、直接上司の方々に訊いた方がいいと思いますよ」

 と丁寧に返してくれた。

「教えていただきありがとうございます」

 俺は医者がこんなに丁寧に対応してくれるとは思っていなかったので、しっかりお礼を言った。

「いえいえとんでもない。そういえばもうすぐ警察の方々がいらっしゃると思いますよ。なんでもあなたの同僚であなたのことを心配して昨日も一昨日もお見舞いにいらっしゃっていましたよ。そこにある果物やお菓子類は同僚の方々が持ってきていました。きっと目を覚ましている様子を見たら喜ぶと思いますよ」

 とにこやかに言った。医者でなくとも、こんなに人と接していて、丁寧で、気遣いができる人はあんまりいないのではないかと思う。

 そしてなにより同僚たちが気を遣ってくれたのは、正直とても嬉しかった。

「そうですか…」

 とだけ返事をして、そのあとなんというべきかわからなかった。

「それではお大事に」

 と言い、医者は去って行く。

 俺は、折れた肋骨の部分を擦って、上体を起こした。病室に備え付けられたテレビを観るためリモコンに向かって手を伸ばす。

 俺は、いつも観ているニュース番組をつけた。ちょうど俺の巻き込まれた事件について報道されていた。

「現場の状況を佐々木アナお願いします」

「はい。こちらは事件のあった東京都台東区上野公園の国立西洋美術館前です。今でも建物が焼け焦げている様子と、爆発によって飛び散った建物の破片があちこちに飛び散っている様子が散見できます。事件があったのは三日前の七月七日午後十一時未明で、警察の取り調べで、今ネット上で話題になっている仮面の人物と、同日に起こった刑務所爆破事件との関連が示唆されています。今後の動向に注目が集まっています。現場からは以上です」

 俺はそこでテレビを消した。

 ここから二週間動けないことを考えると本当に気が重くて、肋骨が痛くて、口の中が乾燥してとにかく最悪だった。

 とりあえず睡眠をなるべくとって回復を早めようと本格的に寝ようとするが、三日寝ていたからなのか、全く寝付けなかった。

 同僚たちが持ってきてくれたお見舞の品の中にバナナがあったので、それをムシャムシャと食べながら、俺は事件のことを整理しようと思った。

 決して安楽椅子探偵を自称する訳では無いが、少ない手がかりから少しでも事件解決の糸口を見つける努力をしよう。

 事件の発端は、バチカン美術館で窃盗が成功したことだ。そのあとは三つの美術館での窃盗に成功している。しかし、今回は美術館での窃盗の前に刑務所を爆破している。前の四件と決定的に違う狙いがあるに違いない。

 あの黒猫の見た目をしたロボットは、数体を除いてあまりコストのかからない。いわゆるガラクタだろう。しかし、数体は変形したり、絵画を運ぶことができるようになっていた。このことからわかるのは、あのロボットを作れる技術を持つものが直接事件に関わっているか、ロボットを作れる技術を持つ人を拉致したり、脅かしたりして作らせているか、入手経路はわからないがどこからか購入したのか主にこれら三つの可能性が高いだろう。

 他に考えるべきことは、刑務所爆破事件のことである。最初に考えるべきことは刑務所を爆破した目的である。可能性をとりあえず列挙することにした。

 一つ目は、刑務所内にいる囚人を逃がすため。爆発の混乱に乗じて、数人だけでも逃がすことができたはずだ。

 二つ目は、犯罪者を憎んでいる遺族などのテロの可能性。その証拠に、一回全員眠らせて、刑務官を別の場所に移したうえで爆発をさせている。三つ目は、爆弾の威力を試してみた可能性。刑務所には刑務官と囚人ぐらいしかいないため、これなら良心があまり傷まず、人間で試すことができる。しかし、三つ目の可能性は限りなく低そうだ。

 なぜなら、爆発を試すなら他の場所がいくらでもあるし、何よりガスマスクの連中を見た刑務官が多かったため、これをするには割に合わなすぎると感じたからだ。あと、考えるべきことは……といろいろなことを考えていたらもう夕方になっていた。

 結局その日は同僚が結局最後まで来なかった。

 残業でもあるのか? という考えが頭の隅をよぎる。

 眠気に襲われ始めたため、その日はもう眠ることにした。



 十日が経ち、ようやく退院できることになった。

 佐伯茂は昔から傷が治るのが人より早かったり、病気にもあまりかからなかった。  

 そのため医者の見込みよりも早く退院することができた。

 入院している間、同僚が来たり、事件のことを考えたりぐらいしか病院内での出来事はなかった。


⚠︎本作は、カクヨムでも投稿しています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。