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罪人  作者: 天内翔


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黒猫襲来

美術館に着き、七月八日まで残り二時間を切る。

 堂本警部は、張り込みをしている刑事たちになにか変わったことはないかと尋ねたが、刑事たちは特に異常はありませんとロボットのように繰り返すばかりだ。

 それから、特にやることがなかったため、小一時間俺は、美術館内を散策することにした。その間、特に変わったことは何もなかった。もう大丈夫そうだなと一呼吸ついた瞬間、窓からロボットの黒猫がたくさんこちらに向かって走っているのが見えた。

 入口を張っていた刑事たちは状況をうまく飲み込むことができてなかったのか、オロオロと立ち尽くしているのが目に飛び込む。

 俺はその時、二階にいたため、階段を一段とばしで降りる。ロボットの黒猫たちが、美術館の中にたくさん入ってくる。

 堂本警部の姿が見えない。一体何をしているのだろうか。とにかくこれ以上入ってきたらもう歯止めが効かなくなる。

 俺は無線機を通して指示をする。

「これ以上そのロボットを通すな」

 とそれが引き金となり、状況の理解は、できていないようだが自分たちが何をすべきかを理解したようだった。

 刑事たちが入口の近くに立ち、ロボットがこれ以上はいらないように食い止めている。それでも随分と多くのロボットの侵入を許してしまった。そのロボットたちがある方向に向かって走っていっているのがわかり、すぐその後を追う。

 ロボットたちは二階に登ったようだ。二階を警備している刑事たちも右往左往しているのが確認できた。

「このロボットたちは、おそらく美術品を盗もうとしている。これだけ多くのロボットを送れるということは、それだけの技術力と資金力があるはずだ。このロボットたちを送って何をするかわからないが、美術品には近づけないほうがいい」

 と俺は再び無線で連絡した。二階の刑事たちも理解したのか、階段の下に向かってロボットをボトボトと落とし始める。

 すると、階段の下に落ちたロボットが急に爆発した。

 安全を確保するため、刑事たちに注意喚起をする。

「ロボットから離れたほうがいい。もしかしてカメラやマイクがロボットに搭載されていて、状況を見て、遠隔でいつでも爆発できるような仕掛けをしているかもしれない」

 と言うと、刑事たちは仕方なく、ロボットから離れるしかなかった。いくら大義名分があったとしても、刑事だって、人間だ。死ぬのが怖いのだろう。俺だって怖い。

 ただ呆然とロボットたちが、絵画を持っていくのを見ていくことしかできない自分にとても腹がたった。

 黒猫たちが持ち去ろうとしているのは二階の十四〜十八世紀の絵画のコーナーのものだった。

 数体のロボットが窓に向かって突進して、自爆している。それにより窓ガラスが割れる。ロボットが変形して、プロペラが現れる。そして絵画をいとも簡単に運びだしていってしまった。結構スピードが出ているため、ヘリコプターで追跡するのを要請したりしても、もう手遅れだろう。

 飛んでいったロボットの持っている絵画を取り返すことができるとしたら拳銃を発砲するしかない。が、そんなことしたら爆弾が爆発する恐れがある。と俺は悔しくて唇を強く噛んだ。

 数体のロボットたちが、絵画を運んでいったあと、ロボットたちの動きが次第に止まり始める。元の場所に帰らないのかと俺は残念に思う。ロボットが元の場所に戻っているのを追跡したら、なにか少しでも手がかりを見つけられて、呆然と見ているしかなかったさっきの状態を多少挽回できるかと思ったのだが……。

 まあそんな簡単にボロを出すような相手だったら、すぐ捕まえることができるのに……。

 そんな後悔を胸に抱きながら動かなくなったロボットたちをよく見ると、配線が見えていたり、汚れていたりと思ったよりもコストはかかっていないように見える。

 刑事たちを人質にして、こんなことをするなんて卑怯だと心の奥底では憤っていた。

 気持ちを落ち着かせるため上の人達にはどうやって警部は説明するのだろうかと考えていると、一体の黒猫のロボットが爆発するのを皮切りに、連鎖的にまるで嘲笑うかのように、どんどん爆発し始める。

 刑事たちは、ロボットの動きが停止してもう何も起こらないと油断していたのか大勢が美術館内に残っていた。

 爆発が広まっていることを刑事たちは確認すると一斉に建物の外に向かって走り出した。

 俺も、「逃げろー」と叫びながら、割れた窓ガラスから外にある木に向かって飛び降りる。

 爆風によって体が吹き飛ばされ、飛んできたガラス片が頬をかすめる。しかも爆風の影響で脇腹を木に思い切りぶつけてしまった。幸い、意識が飛ぶことは無かったが、全身に激痛がはしっていた。

 すると、なかに入ることのできなかった黒猫のロボットたちが、近づいてくる。マイクのようなものでもあるのか、喋りかけてきた。

「大失態だね。刑事さん。この失態はどう責任を取るのだい? とても興味があるよ。これはまだほんの序の口だよ」

 と黒猫の姿で喋っているので子供時代に観たアニメを思い出した。

 喋りかけてきた黒猫は、それだけ話して、それでは爆発します。七、六、五、四……とカウントダウンをし始めた。

 俺は、木にぶつけた脇腹を抑えて全力で走る。走る。だがその努力も虚しく、後ろでバーンと大きな音が聞こえて、爆風によって再び吹き飛ばされた。

 受け身をうまく取ることができず、地面に頭を打つ。

 そこで俺の意識が途切れた。


⚠︎カクヨムでも投稿しています

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