↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪人  作者: 天内翔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/26

簡易的な取り調べ

佐伯茂は、Cチームだったため、爆発のあった現場に向かう。

 それは、それは酷い有様だった。柱は焼けただれ、あちこちが崩れそうになっている。時間差で爆発がところどころ起きていた。

 爆発に巻き込まれると危険なため、消火活動はしばらくできないとのことだった。

 相手の狙いはなんだろうか。相手は、美術館での窃盗を予告する動画をネット上に投稿していた。しかし、今回、直前で、違う予告を出した。これが似通った内容ならわかるが、全く類似点がないように思える。

 となると、もとからこっちの刑務所の爆破が目的で、駆けつけるのを遅れさせるためではないか。美術館の方はカモフラージュでしかなかったのかもしれない。海外での四件の窃盗は、四件やったのだから今回もやるだろうという思考に陥らせるためだとしたら、この行動には辻褄が合いそうだ。

 そんなことを思索していると、堂本警部が刑務官たちの簡易的な取り調べをしてほしいと命令してきた。俺は、ただこの惨状を見ているだけではいたたまれなかったので、仕事をもらえて正直嬉しかった。

 俺は、刑務官たちの集まっている場所に小走りに向かう。

 刑務官たちの姿を確認すると、「捜査一課強行犯係の佐伯茂です」と自己紹介をして、早速取り調べを始めることにした。

「この事件について簡易的な取り調べをしたいと思います。本当は、一人ずつ綿密に取り調べをしたいのですが、時間が時間ですので、集団で行いたいと思います。また、後日取り調べをする可能性があるためご理解とご協力をお願いいたします。なにか少しでも気がついたり、見たり、疑問に思ったことがあればなんでも仰ってください」

 とメモ帳とペンを持ち、刑務官たちに訊いた。

 一人が手を挙げる。

 どうぞと即座に許可をする。

「火の手が上がる前、急に眠くなったんです。まるで、薬品でも使っているかのようでした」

 とその状況でも思い浮かべているのか少し上を向きながら言う。

「他の人も急に眠くなりましたか?」

 他の人達は、「そうです」とか、「起きたらこの広場にいました」と一同、似たようなニュアンスのことを言っている。状況的に催眠ガス的な、協力な睡眠を作用させるようなものが使われたのは確実だろう。

「他になにか気づいたことはありますか?」

「気を失う前、ガスマスクをつけた怪しい連中を見たんです」

 ガスマスクをつけているということはその事件が起きることを知っていた。つまりその集団が事件の首謀者か。もしくは闇バイトなどで人を募ってやらせたのか。多くの可能性があるな。

「それは、どのくらいの人数でしたか?」

 眠らせたのならばそんなに大勢ではなくてもこの計画は遂行できるはずだ。しかし、こんなに手の込んだことを計画するのは相当難しいはず。大勢が関わっていてもおかしくない。また、刑務官の中に、迅速に眠らせるために協力したものがいるか。  

 もしくは、刑務官の格好をして事前に下見をしてこんなことをしたのか二通りの可能性が高いと感じた。

「十人や二十人とかではなくて百人近かったと思います」

 とすると、さっきの考えにより説得力が生まれる。

「ガスマスク以外になにか特徴はありましたか?」

 ガスマスク以外の特徴があれば、その連中の正体を少しでも掴むことができるかもしれない。そんなに目立った特徴があるとは思えないが、ダメ押しで訊いてみる。

「自衛隊が着ているような特殊な服装で、拳銃などの武器を携行していました」

 それが本当だとすると、さっきの考えの一つである大きな組織の介入があったという説に対する説得力が高まる。拳銃を持っていることから元自衛官や、元警察官などが多く所属している可能性も十分ある。これは思ったよりも面倒な事件になりそうだなと俺は心のなかでため息をついた。

 また眠れないのかと思うと、とても家のベッドが恋しく感じられた。

「ご協力ありがとうございました。またなにかこちらから気になることがあれば後日、取り調べを行わせていただくと思います。そうでなくても気になったことがあれば、お気軽に近くの交番によってください」

 と言い残し、その場をあとにした。

 堂本警部がいるのが見えたので、知り得たことを報告する。

「この事件には巨大な組織が介入している可能性が高いと思います」

 メモ帳を見て、自分の考えをまとめながら言う。

「その根拠は何だ?」

と俺の目を真っ直ぐ見ながら訊く。

「ガスマスクをつけた自衛隊風の格好で武器を携行した複数人を目撃したと刑務官たちは言っていました。それに、急に眠くなったと言っていたので、独自に睡眠ガスを作った可能性があります。独自となると、安全性は保証できないため健康被害があるか一応確認しておく必要があると思います」

 ただし、そんなに強力な睡眠ガスは地球上どこを探しても正直ないはずだ。漫画やドラマではよく使われているが、あんなふうに広範囲で多くの人を眠らせることのできるものは今のところないはずである。

「有益な情報をありがとう。これ以上今日は進展が無さそうだから、俺は、美術館に戻る。お前も一緒に来るか?」

 たぶん警部は俺が来るとわかっていて訊いてきたのだろう。

 もちろん俺はこう返事をした。

「はい。行かせてください」

「つい最近まで激務に追われていた刑事にはとても見えないな」

 と自嘲気味に警部は言った。


⚠︎本作はカクヨムでも投稿しています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。