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罪人  作者: 天内翔


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刑務所爆破

七月七日刑務所内。「今日もお疲れ様」と同僚に挨拶する。森田平蔵は、刑務官としての今日の仕事を終えた。この仕事を始めて、だいぶ経つが、ここにはいろいろな受刑者がいた。やはり怖い受刑者は、たくさんいた。例えば、入れ墨を体中に入れているヤクザだとか、明らかに他の普通の人とは違う雰囲気をまとった連続殺人犯とか。いろいろな人間を俺は見てきた。それぞれがそれぞれの物語を持っていた。

 ただその一方、罪の意識に苛まれている受刑者もいた。出所後まともに生きているかわからないが、少し前科があるだけでまともな仕事にすらつけないのは、少し可哀想な気がしていた。ただ、結局罪を犯したのはその人自身なので、とやかく言う気は毛頭ないが。

 たまに、冤罪で捕まった人がいる。そのまま間違ったまま死刑が執行されてしまい、あとになって気づいたという大ニュースもあった。やはり司法は完全ではないと深く感じたのを今も覚えている。そんなことを考えながら、食堂のメニューは何を食べようかと迷っていた。

 すると、いきなり警報機が鳴り始めた。急に何だ? 脱獄か? と考えていると急に眠くなり始めていた。あれ? なんで眠くなって? と考える暇もなく、俺は地面に向かって倒れた。

 視界の端に、チラッとガスマスクと防護服を着用した異様な集団が歩いているのが見えた。

 受刑者たちが「やった‼ 脱獄できるのか!?」とか、「シャバの空気を吸える」と喜んでいる声がうっすらと聞こえてくる。

 そこで俺の意識は途切れた。

 それと同じ頃、国立西洋美術館内では、刑事たちがソワソワし始めていた。犯行は、七月七日の夜で、あと四時間で、七月八日になりそうになっていた。もしかして、本当にいたずらだったのではないかという考えが頭をよぎったが、すぐその考えを変えざるを得なくなった。

 突然一人の刑事が大慌てでスマホを持ち、現場の総監督をしていた堂本警部のもとに走り込んできた。

 そしてこう言った。「警部、この動画を観てください」と。

 堂本警部だけでなくその場にいた刑事たちもその刑事の慌てようを見て集まってきた。あらかた人が集まったことを確認すると動画が再生された。

「突然だけど、僕は、日本の文化がたぶん世界で一番好きなんだろうね。特に七夕は自分の願い事を紙に書く。そして心のなかでで願うように、願うようにと強く思う。今まで生きてきた人生経験から考えて僕は何かについて思うことはとても大切だと思うんだ。そこで今日はちょうど七月七日だ。僕の願い事を書いてみた。

 府中刑務所のみんながだつごくできますように。さあ、警察官諸君ゲームを始めよう」

 そこで動画が終了していた。周りの刑事たちが一斉にざわつき始めた。

 そこで警部が刑事たちに静粛にと厳粛な声で場の混乱を抑えようとする。

「まだこれが本物と決まったわけではない。もし本物だったとしても犯行予告をしてからまだそんなに時間は経っていない。だから慌てるな」

 と冷静な指示を警部が出す。

 するとすぐに警部のスマホが鳴り始めた。

 すぐに警部は電話に出る。

「はい。え、今なんとおっしゃいましたか? え、本当に刑務所が爆破されたのですか。はい、こちらの警備を一部打ち切り、すぐ現場に駆けつけます」

 と早口でまくし立てた。

 通話を切ったあと、すぐに警部は指示を飛ばす。

「これから指示を出す。今から言うチームは俺とともに来てほしい。A、C、E、I、Kチームは爆発のあった府中刑務所に向かうぞ。その他のチームは念の為、まだ窃盗をしにこないとも限らない。引き続き警備に当たってくれ」

 と無線を使い、指示をした。

 一同は、すぐにパトカーに乗る準備をし始めた。



 森田平蔵は、さっき急に眠くなったことを思い出した。そして、異様なガスマスクをつけた集団の存在も思い出す。

 刑務所はどうなったのだろうかとあたりを見回すと、そこは刑務所ではなかった。刑務所近くにある広場である。

 俺のほかにも、多くの人が横たわっていた。そこには見知った同僚たちの姿があった。親しい同僚の肩を揺すって起こす。

 まだ寝ぼけているのか「起床時間じゃないだろ?」 とか言っている。

 俺は、疑問を口にする。

「今一体何が起こっているんだ? なぜ刑務所から少し離れているこの広場に移されているんだ?」

 と俺が訊くと、ようやく眠気が覚めてきて、状況を理解し始めたのか疑問符を同僚も口にする。

「確かに俺達はいつも通り見回り作業と点検作業を終わらせて……、とそこで記憶が途切れているな」

「そうだよ。俺は、眠る前、ガスマスクをしている奇妙な連中が刑務所内に入って来るのを見たんだ」

「それはやばいじゃないか。数十年に一度レベルの大脱獄じゃないか? しかも日本で」

 と目を輝かせている。

「何不謹慎なこと言っているんだ!! もし、脱獄したら、世間から大バッシングを食らうのは俺達だぞ」

 と少し怒ったような口調で抗議する。

「とりあえず刑務所に戻って状況を確認するか」

 と同僚が立ち上がろうとした瞬間、他の同僚たちが、「おい、あれを見ろ」と言っていた。

 その場所を見ると、黒煙が立ち上っていた。それは刑務所の方向からだった。

 なにか言葉に出来ないような感情が俺の心に渦巻き、俺は、刑務所に向かって走る。他の同僚たちの制止も聞かず。刑務所の方へと走る。全力疾走で走ったためか、息をぜぇぜぇと切らす。

 刑務所の方を見ると、ひどく燃えているのが確認できた。

 しかし、脱出しようとする人影はなぜかない。

 「はっ、」と思い出した。おそらく、眠くなったのは催眠ガスを使ったからだろう。    すると、刑務官だけでなく受刑者も眠ってしまったはず。とすると、中で、受刑者たちは、焼死しているのではないかと思った。ここの収容定員はたしか二千八百人程度で、その半数以上の受刑者を収容しているはずだ。あのガスはおそらくとても強力だから今炎のなかに取り残されているだろう。

 よく見ると、ただ燃えているだけでなく大規模な爆発が所々、起こっていた。時間差で爆発するように爆弾を仕掛けているのだろう。このことから考えるに犯罪者を毛嫌いする連中のしそうなことだ。

 そう考え事しているとき、後ろから追ってきた同僚が危ないと手を引いてきた。そのすぐあと俺がいたところに燃えた柱が落ちていた。

「ここは危険だ。今すぐ避難しよう」

 と同僚に促され、できるだけ全力で走って刑務所から離れていった。


⚠︎本作は、カクヨムでも投稿しています

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