対策
佐伯茂は、昨日の捜査会議で言っていた窃盗の予告の件で美術館を訪れていた。
犯行予告がされていた日まであと四日あった。しかし、四日というのも意外と短いもので、特に対策などをせずに、警備をするのと比べたら全然マシだが、大規模な対策は、あまりできない。できることといえば、一般客の入場規制を早めに行ったり、金属探知機で怪しい物を持っていないか調べたりなどぐらいだった。
今日は、警備の配置の確認をするようだ。国立西洋美術館の館内フロアマップを警部が広げて説明をしだした。
「この国立西洋美術館は、B2、B1、1、2Fの計4階からなっている。警備は、十チームに分かれて行うことにする。1Fにつき、基本は、二チームで行うが、やはり、1Fから入ってくる可能性が高いことから、1Fは、計四チームで行うことになった。チームごとに、普段関わらない連中も多いだろう。だが、できるだけ面倒事が起きないように捜査員全体で協力していこう。また、連絡にはこの無線機を使用してほしい。少しでも気になることがあれば連絡してくれ」
と威厳のある物言いで捜査員全体の士気を高めた。
刑事の一人が手を挙げる。
「警部。どういったことに気をつけに警備に当たればよろしいでしょうか? 具体的な対策を教えてください」
と警部に対して敬意のこもった声で尋ねる。
「そうだな。気をつけておくべきことは、何より、美術館内にある装飾品を触らせないこと。つまり、美術館に無関係な人を何人たりとも入れさせなければ、そもそも盗まれることもない。だから、特にドアや窓付近には当然注意を向けておくべきだろう。他に注意しておくべきことは、周りの人間が本当に正しいのか確かめること。なぜなら、海外の事例で警察官に化けて、堂々と盗まれてしまった事例があるからだ。犯行時刻が近づいてきたら、本当にその人自身なのかを氏名、誕生日、年齢を訊き、お互い確認してほしい。正直一人ひとり重点的に確認する時間は取れなそうだからな」
対策としては完璧とはいかなくとも、犯罪を防止することは十分可能だろう。
他の刑事が手を挙げる。そして次にこういう質問をしていた。
「なにか相手が武装をしてくる可能性はありませんか? これだけ厳重な警備をしておいて、盗まれるというのは、少々考えられません。機動隊の派遣などはできないんですか?」
それを訊き、警部は即座に返答をする。
「無理だな。いくら大規模な事件が起こる可能性があるといっても、これがデマの可能性がある。そんな不確実性のある事柄に、機動隊を動かすという大がかりなことはできないな」
と少し残念そうな口調で言った。質問した刑事はあまり納得したような態度ではなかったが、渋々引き下がったようだ。
他には特に質問することは無かったのか、これ以降手を挙げる刑事はいなかった。そして警部はこう締めくくった。
「各自直ちに持ち場についてほしい。もう一度言うがなにか少しでも気になる点があれば、即座に、この無線機で連絡を取り合おう」
そうして各自持ち場に着くため、散り散りになっていった。
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