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罪人  作者: 天内翔


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提案

次の日、佐伯茂は思いついたことがあったため、警部に相談して警視総監に会わせてもらった。警視総監であれば、短時間で実行可能だと思ったからだ。再び同じ方法で入室して、こう切り出した。

「実は頼みたいことがあるのですが」

 警視総監はこちらを値踏みしているような視線を向けてくる。

「俺にできる範囲であればやりたいが頼みとは何だ?」

警視総監らしい威厳のある言い方だった。

「つい先日アップロードされた動画についてです。拝見してどう感じられましたか?」

 単純に警視総監の意見を聞きたいという意図もあった。

「相手の狙いがはっきりしなすぎて、最近はただの愉快犯ではないかと疑ってしまうときもある。しかし、違うんだろう?」

 本当はそうであってほしいという口調だった。確かにそうだったら非常に単純明快だろう。責任の重い警視総監の立場としては非常に遺憾なことであろう。俺は自信をもってこう答えた。

「はい。相手の狙いは必ずあります。はっきりしませんが、まだ計画は続いていくと思われます。ところで、金を盗む方法についてはどうお考えになっていますか?」

 俺はいくつか考えていたアイディアを頭のなかで反芻していた。

「公開処刑と題して、仮面の集団が、広場に来たとき、複数のトラック並びに、大人数の仲間がいたから可能な限り直接盗むのかと思ったが、その顔を見る限り、違うと思っているようだな」

 よっぽど警視総監が言っているとき、不服そうな態度が顔に現れていたのか、そんな事を言ってきた。

「はい。俺は、銀行にサイバー攻撃を行い、システムをダウンさせて、全国の銀行に身代金を要求するつもりだろうと思います。そこで提案なのですが、遠藤善治がお世話になったあの人を連れてきてもらうことは可能でしょうか?」

 あの人というニュアンスだけで伝わるか正直微妙だったが、得心のいったような表情をしたため胸を撫で下ろした。

「あの人が素直に頷くとは思えないが、可能な限り説得してみよう。しかし、お前があの人を連れてくる目的はなんだ?捜査協力を頼み込むなら別に警察内じゃなくても構わないだろう?」

 と当然のことを訊いてきた。それに対する答えはもう準備している。

「実は遠藤善治にも捜査協力をしてもらおうと思いまして」

 少し警視総監の眉がピクッと動いたような気がしたが、すぐもとに戻った。

「正気か? と言いたい気持ちもやまやまだが、なんとなくお前の狙いがわかった。ところでその件とは別に話しておきたいことがあるんだが、いいか?」

 と訊かれ、はいと俺は、答えながら、なにか変わったことでもあったのだろうかと疑問に思った。

「堂本さんとその家族は、お前の知っての通り失踪してしまった。実は伝えたいのは、そのことに関連するかもしれないことなんだが、堂本さんを加えて同時期に六人失踪している」

「それって、どういう意味ですか?」

 具体的な人数が知らされていなかったため、そんなに失踪していたのかと驚愕した。

「言葉通り受け取ってもらって構わない。もしかしたら、堂本さんやその他五人は、誰かに拉致されたかもしれない。それも同じ人物に」

 この含みを持った言い方をするということは警視総監も仮面の男がなにか企んでいると考えているのだろう。

「もしかしたら、あの仮面の集団が拉致したのかもしれませんね」

 と俺が少し冗談め かして言うと、そうかもしれないなと言いながら警視総監は頭を掻いた。

「いろいろ多忙な身の上だと思うが、捜査を引き続き頑張ってくれ」

 と言われ、俺は警視総監室を出た。今更になって思ったが、最近羨望や嫉妬の目で自分は見られていると感じた。結構な頻度で警察のトップと一刑事の自分がしょっちゅうこうやって捜査に関する話しをしているのだから。そんなどうでもいいことを考えるのも大事だなと今更ながらに思った。


⚠︎本作はカクヨムでも投稿しています

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