ポケットに入っていた物
目覚めは意外と清々しかった。鳥の鳴き声がそこら中に響いている。
軽い朝ごはんを食べて仏壇にいつも通り、いってきますと言い、俺は職場に出勤しようとしている途中、ふとポケットになにか入っていることがわかった。それも両ポケットに。
なぜいままで気づかなかったのだろうと不思議に思っていると、接着されていたことがわかった。だから、動いても落ちなかったのか。そんな事を考えながら、接着部分を丁寧に取り外し、ポケットから出すとチェスの駒みたいで、キングとポーンの駒のようだ。ただ不思議なことにキングの駒の十字架の部分がUSBメモリの形になっていた。一旦、職場に行くのはやめて、USBメモリの中身を確認することにした。こういうときにはまっさきに上司に報告するべきだと思うが、好奇心を止めることはできなかった。
USBメモリの中には動画が一つあった。それをクリックする。すると、再生され驚きが脳内を駆け巡る。動画に写っている人物は現防衛大臣である猪渕恵美子だった。なぜそんな人がこの動画に映っているのだろうか。そんな事を考える暇もなく動画は再生される。
「これをあなたが観ているということはこの世界から私はもうすぐいなくなるでしょう。私は、現在でこそ猪渕恵美子と名乗っていますが、私の本当の名前は佐伯美智代、あなたの叔母です。きっとこのことを聞いたらあなたはさぞかし驚くのでしょう。時間がないので本題に入ります。私がなぜ生きているのか? 私がなぜ今防衛大臣として働いているのか? などさまざまな疑問があると思うけれど私の話を聞けば、すぐそれらの謎は氷解すると思います」
そう前置きをして、動画内で俺の叔母と名乗る人物が語った内容は、とにかく凄いものだった。凄いという表現では生ぬるいほど予想打にしない事が起こっているということがわかった。叔母は最後にこう締めくくる。
「いろいろこれから大変なことに巻き込まれると思うけれど、私はあえて、多くのヒントを与えない。今でも一つ許していないことがあるの。それは、私のことを無職だ、愚かだと馬鹿にしていたこと。直接面と向かって言ったことは無かったけれど、一度、冗談かもしれないけれど言っているのを聞いてしまった。だからこれは最後のいじわるだと思って許してください。あと、この動画を観たあと、このUSBメモリは焼却処分してください。この動画を持っていたことがばれたらきっとあなたは不利な立場に陥ることになる。そして、この動画の存在は誰にも言ってはいけません。私がもうこの世界の住民ではないことも。それがあなたが悪と戦う上での一助となることを願っています」
とそこで動画が終了した。
確かにこの動画を持っていることがばれたらいろいろとまずいことになりそうだ。一通り頭に一回で叩き込むことができたから、ご忠告通り焼却処分をするとしよう。そうして、俺は庭で火を起こし、そこにチェスの駒のようなUSBメモリを投げ込んだ。
片方はわかったが、もう一方はどうやって使うのだろうか。そう考えていると、ポーンの下に、ボタンがあるのが確認できた。ボタンを押すと、仮面のいや、叔母と名乗る人物との会話の一部始終が録音されていた。
これも叔母と名乗る人物の言う一助なのだろうか。そんなことを考えるが、相手がどれほど強大な敵なのか正直想像ができなかった。
⚠︎本作はカクヨムでも投稿しています




