その41.敵はなお、笑い続ける
――フェーズ2――
――ターン1 フォア――
カイト:6 クウゴ:10
麻莉亜は戦場からいなくなった。
危険通知なんてもんが来てたんだから、麻莉亜の体も相当負荷がかかっていたんだろう。
でも、ようやく目を覚ましてくれたわけだし、こうして俺の元にやってくることができたくらいだ。
今は麻莉亜の心配をするよりも自分の身を心配したい。
ここで負けたら全てがパアだ。
麻莉亜もさぞかし悲しむことだろう。
ここで俺が勝つことが、麻莉亜の何よりもの薬になると信じて俺は気を引き締めた。
相手の様子を見てみる。
今の結果が響いたのか相手からは明らかな動揺の色が伺えた。
黒波が久志川を責めるような感じで、また口論のようなことが起こっている。
たが、それを楽しく眺めている余裕が俺にはない。
今はフォアで、相手が手を選択する場面だ。
今なら俺の持ち時間が減ることはない。
今のうちに筋を出来る限り読んでいかなければならない。
とりあえず今ある状況を確認。
=====
カイト:6
剣9、拳9、弓12
強撃、クライシス、博打、弓見切り、(小盾)
クウゴ:10
剣21、拳11、マイティ9
交換、(C封じ)、(クライシス)
=====
相手がフェーズ1ターン1フォアで使った交換が復活している。
それを見越して早目に使ったのだとすれば、大したものだ。
これがなければ相当有利に進められるはずだったんだが。
ただ、想像していた局面ではあっても、この状態になって改めて冷静に考えてみると、俺の方がかなり有利な状況に感じられた。
相手はC封じとクライシスを使って、当面復活しない。
対して俺はまだ切り札クライシスを残している。
加えて相手の構えからだ。
麻莉亜も言っていたが、十分に勝機が見えてきた感じだ。
今回の相手の手を予想してみる。
相手が剣を出してきたら……。
拳だったら……。
マイティだったら……。
交換をつけていたら、つけていなかったら……。
色々考えていたのだが、相手が剣だったらこっちの勝ちが確定するというところは読めた。
相手が剣を出してきたら、こっちは弓とクライシスをつければ、例え相手が交換を付けていたとしても俺の勝ちだ。
そんな俺でも分かる手を相手が出して来るとは思えないが。
そんな感じで色々手を読んでいるうちに、相手は割りと早い段階で手を決めていた。
こっちに考える隙を与えないという作戦のつもりだろうか。
相手の手は拳だ。
それに交換がついているかどうかは分からない。
相手からは若干不穏な空気が漂っているのが分かる。
さっきまで余裕で俺を挑発してきたというのに、相手の表情からは笑みは消えていた。
それどころか、久志川はかなり険しい表情をしているのがここからでも分かる。
その様子から出した手に自信がないことが伺えた。
拳がきた時はこっちも拳がいいかなと考えていたところだ。
こっちも拳を出せば、相手が交換を使っていようが使っていまいが、このターンはダメージ2貰うだけで終わる。
問題は次のリアだ。
俺は自分の持ち時間5分をフルに使って、次のリアの展開を予測していった。
「勝てる……かもしれない」
麻莉亜の言っていた『勝機がある』という言葉が、ようやく理解できてきた。
ここで拳で対抗しても、次のリアで俺が死ぬことはない。
この回でクライシスを温存できるというのが本当に大きい。
それどころか、相手が今回で交換を使ってくれれば、それで勝利確定だ。
ということは、恐らく付けていないのだろうが。
俺は残り5秒になるまで時間を使い、できるところまで次の展開を予想した。
結局確かな勝ち筋を見つけることはできなかったが、時間になったので俺は拳を選択した。
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カイト
HP:6→4
拳:9
【なし】
引き分け:ダメージ2
クウゴ
HP:10
拳:11
【なし】
引き分け
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――ターン1 リア――
カイト:4 クウゴ:10
HPは残り4になってしまったが、俺は冷静でいることができた。
というのも、相手が相当焦っているのがこっちから見ても分かったからだ。
この回の展開はおおよそ読めている。
この回で負けることがないのも分かっているんだ。
=====
カイト:4
拳9、弓12、弓12
強撃、クライシス、博打、弓見切り、(小盾)
クウゴ:10
剣21、拳11、マイティ9
交換、(C封じ)、(クライシス)
=====
俺はこの回で弓とクライシスを出せば負けることはない。
というか、その場合相手が交換を添えてこなければ俺の勝ちは確定だ。
問題はその次のエクストラ。
今はこの持ち時間を十分に使ってエクストラの展開を予測していこうと思う。
色々予測をしていたのだが、そうしているうちに相手の状況が激変した。
突然黒波が怒鳴ったかと思ったら、久志川の胸ぐらを掴みあげていた。
何を言い合っているかは聞こえてこない。
でも、相当な剣幕で黒波がキレているのがよく分かる。
そんなの見ている場合じゃない。
俺は1秒でも無駄にしない為に、今はエクストラの展開を考えるべきだ。
そう思って予測していたのだが……。
「勝った……?」
そこに一筋の光が見えた。
もしかして、ここで弓クライシスを出せば、俺が負けるパターンがなくなる……というか、勝ち確定なんじゃないのか!?
もう一度よく考えてみる。
ここで俺が弓クライシスを出したら、相手はいずれかの手に交換を付けて出すしかない。
それ以外だと俺の勝ちだ。
交換をつけた場合は、俺の手が勝っていずれの場合も相手のHPは1残る。
そうなったら次のエクストラはどうなるのか。
俺にはマイティの手が戻ってくるんだ。
相手はSSも使い切った。
マイティを出せば負けることはない。
俺のマイティに対して、相手はマイティ以外を出せば俺の勝ちが決まる。
相手もマイティを出すしかないんだ。
そうなると双方ともマイティの攻撃力が9なので、エクストラの結果は完全ドロー。
次はフォアになって相手の構えだ。
フォアで俺に戻ってくる手は拳となり、剣拳弓が揃う。
相手が何を出しても手で勝てる。
相手は全てのSSを使いきっている為、相手の手に勝てる手を出せば俺の勝ちが決まる。
――――この勝負、俺の勝ちだ。
それを悟った瞬間、相手のやり取りの意味が真に理解できた。
久志川も恐らく100パーセントの負けを悟ったのだろう。
あれだけでかい口を叩いておいて負けるんだ。
負ければ死。
死ぬのは黒波。
黒波が怒るのも無理は無い。
というか、怒るというレベルで済む問題じゃない。
俺は勝利を確信すると、落ち着いて弓とクライシスを選択し、確認を押した。
「そっちの番だぞ。選べよ」
「!!!」
俺がそう言うと、二人共こっちを振り向く。
黒波は物凄い顔してこっちを睨みつけており、久志川の方はボロボロ涙を流していた。
「…………」
「くっ……」
黒波はしばらく俺を睨み続けるが、悔しそうにしているだけで何も言葉を発しなかった。
そして不意に俺から視線を外したかと思えば、傍で土下座を始めた久志川を殴り始めた。
ざまあ見ろとあざ笑ってやりたい所なのだが、そんな気分にはなれない。
とにかく今は、死なずに済んだこと、小夏達に被害がこれ以上及ばないで済んだこと、黒波の勢いを止められたこと、絶対に負けられない戦いに勝てたことに安堵していた。
それに……俺が勝ってもこいつは死んでしまうということを考えると、へらへら笑うこともできない。
こいつはひどい奴だし、1回痛い目見ないといけない存在だが、それでも蓮華の兄であり、人間なんだ。
エボルを倒すという共通の目的を持った、俺達の仲間だったはずなんだ。
「黒波……俺はお前を憎んではいない」
「…………」
俺がそう言うと、黒波は久志川への暴行を止め、俺の方を向いた。
「いや、蓮華への暴力、篠辺野への脅し、その他もろもろ憎むべきところはたくさんある。でも、お前はお前なりにエボルを倒そうとしてた。やり方は間違っていたけれども、目的は俺達と同じだったんだ。お前が七原を憎むのは分かる。俺を倒したいと思ったのも分かる。でも、今はそんな時じゃないんだ。お前の敵は俺じゃない、エボルだ。みんなで協力して蓄えたレベルを、エボル討伐の為に使うべきだったんだ。そうだろ、久志川」
「…………」
久志川は涙でぐちゃぐちゃになった顔を俺の方に向けてくる。
それでも久志川は俺の問いに頷かなかった。
「くっくっく。自分が優勢と分かるやいなや、説教か……。ふざけた真似を」
黒波はにやっと笑うと、そう言って傍で泣きながら土下座を続ける久志川を蹴り飛ばした。
このゲームのVR体は五感の接着を控えめに設定されているようなので、痛みはそれほど感じないはずだが、それでも結構痛そうだ。
黒波は久志川を蹴飛ばすと、少しだけ俺の方に近づいて向かい合う形を取る。
「くっくっく。貴様は勘違いしているようだな。最も、俺もそう公言していたので勘違いするのも無理はないか」
「……どういうことだ?」
「俺は最初からエボルを倒すことなんざ興味ねぇさ。お前をぶちのめすことにしか興味なかった。このチームを作ったのも、全部貴様を倒す為だ。最も、このことは誰にも話してないがな」
「何だと……」
黒波はこんな状況だというのに少し笑みを浮かべつつ、俺にそう言ってくる。
「誰がエボルなんて倒すか。このゲームでエボルを倒せると本気で思っているとしたら、そいつはただの馬鹿だ。自分を殺す為のゲームを提供する馬鹿がどこにいる。このゲームでエボルを倒すことなんて不可能なんだよ」
「それはやってみないと分からない。このゲームで不正をすればすぐに分かる。相手がとんでもないステータスを持っていたとしても、それは挑戦すれば分かること」
「挑戦した者は死ぬ。エボルがどんな不正を使っていようが、それを知っても誰かに伝える前に死ねば他の人間が不正を知る由はない。違うか?」
「違うな。エボルはオンラインで戦うことが想定されている。死ぬにしても負けてから死ぬまで若干の時間差があった。エボルと対戦して負けたとしても、不正があればその旨を伝えるチャンスはわずかだがある。アシストだっている。もし挑戦者が死んでも、その戦いを見ていたアシストは死なない。不正があればいくらでも暴ける」
まぁ、麻莉亜がその件について話してくれたことをそのまま言ってるだけなんだけども。
麻莉亜は誰かがエボルと戦えば時期に分かってくると言っていたから、俺もそれに納得してエボルを倒す目標を掲げたんだ。
「くっくっく。そうか、そう思うなら挑戦してみればいい」
「俺はエボルに挑戦する。負けるのも覚悟の上だ。それでも、人類に希望を見出す為に挑戦する義務が俺にはある」
「良い心がけだ。だが、俺はそんなことはどうだっていい。貴様を葬り去れればそんなことは関係のない」
「エボルを倒すことに協力しないということか!? 人類全体で協力しないといけない状況だというのに、人類同士で潰し合うことを優先させるのか!? お前がエボルを倒すことを目標にしないのであれば、いずれエボルに殺されるかもしれないんだぞ!?」
「エボルは能力のある者を殺そうとはしていない。力さえあればのし上がれる社会になっている。それに順応していけばいいだけの話だ。前の世の中より分かりやすくて良い世界じゃないか。俺はその世界に生き、のし上がっていく。今まで立尾を馬鹿にした奴らを見返してやる。そういう能なし共を跪かせてやる!!」
そう言う黒波は状況を理解していないのか、まだ余裕のある態度だ。
言ってる内容もまるで『ここで死ぬ』というのを受け入れていない。
「……だが、お前はここで死ぬ。お前も蓮華の兄だ。殺してやりたいとは思ってないが、死んじまう」
「……蓮華か。貴様は蓮華と付き合いがあるようだったな。だからあいつは出来損ないだというのだ」
「蓮華はお前が思っているよりずっと良い奴だ。死ぬ前に殴ったことを詫びろよ」
「黙れ!! 貴様に何が分かる!! 立尾の誇りも持たないどころか、あろうことか七原の連中と仲良くしているようなゴミは立尾に必要ない!!」
「…………」
「俺は死なない。まだ決着はついてないぞ七原。俺は必ず貴様を地獄へ葬り去ってやる、必ずだ!」
「…………」
そう言うと、黒波はIPの前へと戻っていった。
そして地面に寝転がる久志川を無視して操作を始める。
負け確定の状況が理解できていないのか、それとも最後の悪あがきでもしようというのか。
まだ諦めずに俺に立ち向かってきた。
その根性だけは見習いたいところだ。
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カイト
HP:4
弓→交換→拳:9
【クライシス】
勝ち
クウゴ
HP:10→1
拳→交換→弓:9
【交換】
負け:ダメージ9
==========
――ターン1 エクストラ――
カイト:4 クウゴ:1
黒波が何を考えているか分からないが、順調に俺の想定した通りの勝ち筋を行く結果となっている。
それでも黒波の態度からはある種の余裕すら伺えるのだが、それは一体……。
「ふふっ……。そうだったのか……俺達は利用されていただけだったのか……」
不意に倒れていた久志川がゾンビのように立ち上がった。
「俺は利用されていただけなんだ! こいつに!! 俺は何も悪いことしちゃいない!! そうだろ!? 七原!?」
「…………」
久志川はボロボロ涙を流しながらも、俺にそう訴えてきた。
黒波はその久志川をちらっと横目で見るだけで、その言葉に特にリアクションを起こしていない。
久志川は俺の方に向かって駈け出してくるのだが、丁度中央辺りで突然何かに当たったようにバタンと倒れた。
恐らく真ん中に擬戦体以外は通れない見えない壁のようなものがあるのだろう。
「俺は七原の味方だ! 今まであいつに騙されていただけなんだ! 俺がお前のアシストをやってやる! 俺が付けば無敵だぞ!! 負ける要素なんてものはなくなる! エボルだって倒せるさ!」
「……お前がついた黒波は、今風前の灯だぞ」
「ぐっ…………」
「久志川、お前、本当にエボルを倒すために黒波に協力したのか? 篠辺野から聞いたぞ。黒波とお前と阿古沢は派手に遊んでるってな」
「そ、そんなことはない! 俺は本当にエボルを倒すためにチームに入ったんだよ!! 信じてくれ!!」
そう言う久志川は、極力黒波から距離を取るように、見えない壁にベッタリと張り付いている。
散々人を馬鹿にするようなことをほざいておいて、今になってはこれだ。
よくそんな口が利けるなと感心すらする程の、清々しいまでの卑怯者だ。
この勝負に負けても久志川は死ぬことはない。
別に俺に取り入る意味は無いんだ。
でも、それを今話して黒波の元から逃げようとしているというのは恐らく、自分にやましいことがあるという自覚があるからだろう。
今まではやましいことをしても黒波が守ってくれていた。
でもその黒波はここで消え失せる。
そうなると、今までやってきた悪行の罪はこいつに降り掛かってくる。
だから全てを黒波に押し付けて、自分はクリーンだと俺に証明させようとしているんだろう。
「まずはお前が迷惑掛けた人全員に頭を下げて詫びろよ。俺はいい。教師、篠辺野、他多数。いるんだろ? 俺はお前の味方をするつもりはない。自分でやったことは自分でケリをつけろ」
何ともまぁ、俺もこんなことよく言ったと思うわ。
俺もいっつも麻莉亜に尻拭いさせていたのにな。
「お……俺は本当に何もしちゃいないんだ!! 俺はただ純粋にエボルを倒そうと目指して……」
「だったら今俺に何を訴えてんだ? それなら胸を張ってみんなに一緒にエボルを倒そうと言えばいい」
「そ……それは……」
この久志川の態度こそ、俺が正しかったことの証明だ。
こいつはそれを言ってもみんなが受け入れてくれないと思っているからこうしている。
俺がそう突き放すと、久志川はしばらく黙り込んだ後、急に薄気味悪く笑い始めた。
「……ふふふ。はははは。1回勝ったくらいで調子のるなよ……。お前を倒すことなんていくらだって出来る。黒波が消えれば、チームのリーダーはこの俺だ。俺がもう一度みんなから経験値を集めれば、お前なんて楽勝で倒せる」
「そうか。その時は通常戦で頼む。黒波が消え、立尾の看板が消えてもなお、お前の元に人が残ればいいな」
「…………」
俺がそう言うと、久志川は悔しそうな顔をしてそこに留まり、以降口を挟んでこなくなった。
これでこいつの居場所はなくなった。
篠辺野に汚い手で触れたその罪、思う存分味わえクソ野郎。
俺はそのままもう一度だけ自分の勝ち筋を確認して、手を決めた。
黒波はこんな状態になっても、取り乱すことなく手を選択している様子だ。
それが俺には何とも不気味に見えた。
==========
カイト
HP:4
マイティ:9
【なし】
引き分け
クウゴ
HP:1
マイティ:9
【なし】
引き分け
==========
――ターン1 フォア――
カイト:4 クウゴ:1
=====
カイト:4
剣9、拳9、弓12
(小盾)、(クライシス)
クウゴ:1
拳11、弓9、弓9
(交換)、(C封じ)、(クライシス)
=====
これで勝負が決まる。
相手からの構えとなるフォア。
相手が何を出そうが、それに勝つ手を出せば俺の勝ち。
既に俺の勝ちは確定している。
それでも黒波は臆することなく、まだまだ時間も残っているというのにすぐに手を選択してきた。
相手の擬戦体は弓の構えを取る。
これで俺が拳を出せば勝ち。
だが、この黒波の落ち着き様はなんだ?
俺に見落としがないかもう一度確認してみる。
相手は全てのSSを使い切り、もう反撃の手段が一切ない。
どう考えたって俺の勝ちのはずだ。
「くっくっく……。さぁ、どうした? 早く手を選択しろ。俺を殺したいんだろ?」
「…………」
久志川にも逃げられ、黒波は既に死も決まっている。
尾ノ崎の時は時間いっぱい土下座をしていたが、それが普通の反応だ。
今の黒波は……普通じゃない。
「死ぬのが怖くないのか……?」
「俺は貴様を倒すまでは死なねぇさ。どんなことがあっても生き延び、必ずお前を殺してやる」
「…………」
分からない。
何で黒波はこんなにも余裕なのだろうか。
死を目前にして狂ったか?
それとも、このゲームのルールを理解していないのか?
いや、そんなはずはないよな。
久志川だって黒波は死ぬ前提で話をしていたし。
「…………」
「さぁ、どうした? 早く手を選択しろ」
何か罠が仕掛けられているのか?
いや、そんなことあるはずがない。
「…………すまんっ! 蓮華!!」
考えても答えは見つからない。
実際に黒波に勝てば分かることだ。
俺は蓮華に詫びを入れて、拳の選択を決定した。
相手の擬戦体が弓を構えているのに対し、俺の擬戦体は拳を構える。
勝負開始の合図が合った後、相手の擬戦体は狙いを定めて弓を構えた。
しかし、その隙をついて俺の擬戦体が物凄い勢いで相手に飛びかかっていく。
そのまま相手が弓を射る前にこっちの拳が相手にヒット!
痛そうな打撃音と共に、相手の擬戦体はふっ飛ばされて尻もちをついた。
そして相手の擬戦体は頭上に-9の数字を表示させ、消滅のエフェクト音と共に消えていった。
『勝者 カイト!』
「…………」
「…………」
俺も黒波も無言のまま、俺の勝利という結果をもって勝負は終わる。
黒波は最後の最後までドンと構えたまま、その態度を崩さなかった。
【Next】
→海人、恋をしていた




