五、
桜から返された手紙を受け取ると、勇樹はそれを再び封筒に戻した。
「勇樹くん、これからどうするの?」
「どうもこうも、まずは古い文献を当たってみないことには何とも言えないな……」
なぜそう思うのかは分からないが、おそらく、古の文献ならば旧支配者について何か記されているかもしれない。
本来ならばシルフに聞いた方が正確であり、時間もかからないのだろうが、旧支配者という言葉を聞いただけで異常なまでのおびえようだった。その様子から考えて、あまり聞かれたくないことなのかもしれない。いや、下手に聞きだそうとすれば、彼女の機嫌を損ねかねない。
勇樹自身、それだけは避けたい。
「……私も、私なりに調べてみる」
「桜?」
「大丈夫……無理はしないから」
そう言って、桜は勇樹の部屋から出ていった。
勇樹はその背中を見送り、首にさげているお守り袋に目を落とした。
――シルフ、お前に聞けば、すぐに答えが見つかるのか?
それとも、お前は答えを持っていないだろうか。
答えの出るはずのない疑問を、頭の中で繰り返しながら、勇樹は部屋を後にした。
その頃、宮の近くにある古びた教会に、黒いローブをまとった人影が入っていった。体格や身長からして男だろう。
ローブの男は教会に入ると、そっとフードを外し、礼拝堂を過ぎ去り、そのまま祭壇まで進んでいった。そして、祭壇を動かし、その下に隠された階段を下りていった。
階段が終わると、石造りの部屋が広がっていた。その床には白い線で描かれた魔法陣があり、その魔法陣の奥には鉄格子のはめられた部屋が存在していた。
その中は、両手足を縛られた、勇樹や桜と同じ年齢くらいの男女たちが横に倒されていた。
彼らが着用している服を見れば、それが宮の生徒たちであることがわかる。そして、よく見れば、彼らは全員、桜と同じ、見習い召喚士たちだということもわかる。
「……あと、一人……」
男は鉄格子から部屋をのぞき、生徒の人数を数える。そして、ぽつりと、必要な人数までの残りをつぶやいた。
――我が主、大いなる支配者よ。今しばらくお待ちください……必ず、精霊を呼び出す力を持つ者たちを贄に、あなたをこの世界に……
男は不敵な笑みを浮かべ、その部屋を立ち去った。
心のうちで、これから呼び出そうとしている、いまわしくも大いなる存在を呼びながら。
その頃、桜は職員室に向かっていた。
ここ最近、行動のおかしい教官がいる。半ば直感でしかないが、それでも、精霊召喚の遅延について何度か相談していたが、なぜかまったく動いてくれていなかったことから考えて、おそらく、何かしら関与している可能性がある。あまり的中してほしくない予感ではあるが。
「……失礼します」
桜が職員室に入り、目的の教官の机へと向かう。
だが、そこには、用事がある生徒はここにくるように、と記されたメモが残されているだけだった。
――……行くしか、ないかな
桜はそのメモに記された場所に向かうため、職員室を出た。




